愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜 閑話 お姫様ともんどのすけ
「李亥蕾様のお迎えに参上仕った」
アパートの近くの王立幼児園に通っている蕾のお迎えの為に桐生主水之介が園の玄関に現れた時、周囲から「ざわっ…」という声がした。
魔法省のローブに包まれた185センチの痩躯。
硬質で怜悧そうな黒髪に黒い瞳の男が突如明るくほんわかした雰囲気の幼児園に現れたのだ。
レガルドがお迎えに来た時もある意味いつも周囲が「ざわっ…」となるが、主水之介が現れた事による「ざわっ…」は明らかにレガルドの「ざわっ…」とは違っていた。
ーーこ、こんな怖そうな男が幼児園になんの用なのかしら?
ーー魔法省のローブを着ているところを見ると罪人ではなさそうだけど……。
ーーえ?誘拐犯じゃないよな?
ーーえ?ツボミちゃんのお迎え……?
明らかにこの場では異質な桐生主水之介の存在。
我が子のお迎えに来ている他の母親たちに様々な憶測を呼んでいる。
その時、鈴を転がすような愛らしい声が響いた。
「もんどのすけっ」
「お姫様っ!!」
自分目掛けて駆けて来る蕾を、桐生主水之介はしゃがみ込み両手を広げて出迎える。
蕾はその腕の中に飛び込み、二人はヒシと抱き合った。
蕾が五歳になった今でも、二人は会う度にこの感動の再会を繰り広げているのだった。
「お姫様、不肖、桐生主水之介がお迎えに上がりましたよ」
「ありがとうもんどのすけ。でもかあさまは?かあさまはどうしたの?」
「菫様は今日は悪阻が酷く安静にされております。古い若はどうしても仕事で抜けられず、この主水之介が参った次第にございますよ」
「そうなのね、ごくろうさま」
「いいえ。お姫様の為ならばこの主水之介、たとえ火の中水の中草の中森の中、ですよ」
「ふふふ、もんどのすけったら」
「お姫様は近頃頓みに菫様に話し方が似てこられましたなぁ」
「かあさまに?ホント?」
「誠に良うございました。お父上に似たらもう憎たらしいだけですからね」
「誰が憎たらしいだと?」
「ゲ、古い若」
「古いって言うなゴラ゛」
幼児園の玄関にて、跪いて蕾とキャッキャウフウフとお喋りをしていた桐生主水之介の頭上から蕾の父親であるレガルドの声が降ってくる。
レガルドは主水之介を見下しながら言う。
「なんでお前がちゅぼみのお迎えに来てんだよ」
「そりゃ忙しい若の代わりに来たに決まってんじゃないですか、ていうかアンタなんで来たんです?任務は?」
「ちゅぼみの為に秒で終わらせてきた」
「またアンタは早く片付ける為に……容赦ねぇですな。今度は犯人のどこを斬り飛ばしたんですか?腕ですか?足ですか?それとも首ですか?」
「そんな事する訳ねぇだろ」
「いやアンタ、過去にやらかしてますからね?菫様の元に駆けつける為に魔術師の腕を切り落としてますからね?」
「ちゅぼみの前で言うなっ。ちゅぼみ、阿呆の主水之介の事は放っといて父さまとお家に帰ろう…ってアレ?ちゅぼみ?」
「え?お姫様?」
うだうだと言い争いをしていた元主従が蕾がいない事に気付く。
慌てふためく二人に、側にいた他の園児の父親が恐る恐る教えてくれた。
「蕾ちゃんなら、お二人がなんだか忙しそうだからと、大の仲良しのリアム君と手を繋いで帰りましたよ?リアム君が蕾ちゃんをエスコートして歩いて行きました」
「「なっ!?何っ!?」」
置いてけぼりを食らった二人の声が重なった。
放っとかれたのは自分たちである。
「蕾っ!」「お姫様っ!」
結局レガルドと主水之介は慌てて蕾の後を追ったのであった。
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なんだこら、山もオチもないぞ!
ごぺんなしゃい゜……。゜(゜´ω`゜)゜。




