愛しい日々をあなたに 〜魔法省特務課の事件簿〜 いつか咲き綻ぶ花となる
菫とレガルドの第一子は女児であった。
母親譲りの焦茶の髪に父親譲りの青い瞳。
レガルドが「おっふ」というくらい、父親によく似た可愛い女の子だ。
でも口元は母親の菫によく似たレガルド曰くさくらんぼの唇なのだ。
生まれ落ちた時から、いやこの世に生を受けた瞬間に両親からの惜しみない愛情を約束された幸せな赤ん坊。
レガルドは生まれた娘に“蕾”と名付けた。
いずれ美しくそして幸せに咲き綻ぶ花となれるよう、
そんな願いを込めて。
「蕾ちゃ~~ん♡もうホントに食べちゃいたいくらい可愛いわね~♡」
「シンディさん、ちょっと私にも抱かせて下さいよ」
蕾が生後二ヶ月を過ぎた頃、菫は久しぶりに魔法省を訪れて特務課の皆に愛娘のお披露目をしていた。
シンディとミーガンの女性陣は可愛い蕾を競い合って抱っこしている。
そんな二人に桐生が、
「ちょっとお嬢さん方、姫が困っておられるじゃねぇですか。姫はね、この主水之介の事をいたくお気に召しておられるのですよ。だから姫をこちらにお渡しください」
そう言って手を広げた。
それに対してシンディが、
「いつも抱いてるならいいじゃない!せっかく蕾ちゃんが会いに来てくれたんだから抱っこしたいのよ!」
と、蕾を離そうとはしなかった。
後ろでミーガンが「ずるいずるい」と言っている。
広げた手を所在なさげにしている桐生に、レガルドがジト目で睨め付けた。
「主水之介、お前は蕾に触れる事は禁止だ」
「なんでですかっ」
「鼻の下を伸ばした助平面で蕾を抱くのが気に入らないんだよ」
「鼻の下なんて伸ばしちゃいませんよ。菫様と一緒の時の若じゃあるまいし」
「俺がいつ鼻の下を伸ばしたんだよっ」
「無自覚ですか?もうずーっと昔からですよ。子どもの頃から若は菫様の前では締まりない助平面してました」
「してねぇわ。いつだって凛々しい顔をしていたわ」
「あ~李亥家の家臣団に聞かせてやりてぇー」
「上等だオラ」
相変わらず仲良く歪み合う元主従に、今日は聖母像に変身しているコーディが言う。
「まぁまぁ二人とも。どっちも助平面という事でいいじゃないですかっ」
「「よくねぇわ」っすよ」
「ふふふ」
そんな皆の賑やかなやり取りを菫は楽しそうに眺めていた。
可愛い娘との静かな暮らしもかけがえのないものだが、こうやってたまには皆とワイワイするのもやっぱり楽しい、と菫は思った。
そんな菫にウォーレンが言う。
「李亥家の血を引く、東和だったら姫君と呼ばれる女の子だよね。将来はやっぱり東和の名家のボンボンと縁付かせるの?」
「いえ?そういう話は…「蕾はどこにも嫁に出さんぞ!名のある家だろうがこっちの貴族だろうが絶対に蕾はやらんっ!!」……という事らしいです」
菫が答える前に横槍を入れて嫁に出さん宣言をしたレガルドを見て、菫は肩を竦めた。
「典型的な娘大好きなバカ親だね」
「ふふ」
その時、唐突に蕾が泣き出した。
抱いていたフランキーが大きな体であたふたしている。
「ス、スミレさんっ……ど、どうしたんだろうっ?急に泣き出したんだっ……」
菫はフランキーの元へ行き、蕾を受け取った。
「あらあら。おむつとおっぱい、両方ね。シンディさん、オムツを替えられる場所はあるかしら?授乳もしたいの」
菫がそう言うとシンディが「ああそれなら……」
と言いかけるも、それをレガルドが遮った。
「それなら家に帰ろう、菫」
「え?でもまだ来たばかりだわ。もう少し居たいもの」
レガルドは蕾を抱く菫の肩を優しく抱く。
「ダメだ菫。可愛い蕾のおちりをこんな野獣共が居る所で晒すわけにはいかない。菫のおっぱいもまた然りだ」
「授乳は別室でするわ?」
「ダメだ。結界の張られた部屋でないと」
「若、あんたどんだけバカなんだ」という桐生のツッコミをスルーしてレガルドはウォーレンに言った。
「んじゃ、ちょっくら妻子(ドヤァ)を送って来ますから」
ウォーレンが一応上官らしい事を口にする。
「まだ勤務時間中だからね?すぐに戻って来てよ?」
その言葉に対し、レガルドはイイ笑顔を返しておいた。
「え?何?そのスマイル。ねぇホントにすぐ戻っておいでよ?」
不安そうにするウォーレンを他所に、レガルドは菫と蕾を連れて転移魔法で帰って行った。
結局この後レガルドは蕾のおむつを嬉々として替えてから魔法省に戻って来たのであった。
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大してオチもないお話になってしまいました☆
次回から少し時間が進みます。
いよいよミルルが入省してくる……?




