エピソード8 ”医は仁術の体現者”
<前回までのあらすじ>
太陽系外縁オールトの雲より飛来する10個の隕石。
人々は世紀の天体ショーに沸き立っていた。
そんな最中、人知れず、一人の日本人女子大学生が、そしてアメリカ空軍の男が、ドバイではヒジャブを着けた女性がUFOに連れ去られ、そこで何かをされ、生活に戻る事件が起こっていた。
また、NASAでは隕石の1つに対して軌道変更試験を実施するも失敗に終わった。
その後、日本では秘密裏に総理大臣など要人が長野の地下防空壕に退避していた。
そして、さらにシドニーでも環境保護団体の女性がUFOに連れ去られ、何事もないかのように生活に戻ったのだった。
イギリス、ロンドン。
郊外の個人内科外科病院。
夜11時。
診療所の事務所でカルテをじっと見つめる男性が1人。
そこに入院病棟巡回から帰ってきた女性看護師がカルテを見つめる先生にコーヒーを出す。
「ああ、ありがとう。」
「ジョシュア先生、また保険外の方のカルテ見てるんですか?」
「あ、うん。すまん。」
「いえ。お金にもならないのに、先生よくやりますね、本当に。
こんなに遅くまでやってる医院、国中探したってどこにもないですよ。
働いたって全部社会保障で持っていかれちゃいますし。
それに移民の人たちは保険にも入ってない。」
ジョシュアが軽い笑みを浮かべながら看護師を見て言った。
「そうだね。でも、彼らも誰かが見てあげないと。。。」
看護師も先生の目を見て言う。
「分かってますよ。
まあ、私は自分の給料さえ出れば何も文句はないですし。
先生は先生のやりたいようにやればいいんじゃないですか?
出来る限り、私もついていきます。」
看護師の視線は尊敬のそれであった。
「でもあんまり無理しすぎないでくださいね。」
看護師の携帯がなった。
看護師が先生からさっと目を逸らし、メッセージを見る。
「あー、もうすぐ隕石が一番大きく見える日みたいですね。
政治家たちも外遊いっぱい行ってるみたいですし、みんなあの隕石キレイに見れる良いところに遊びに行ってるんでしょうね。
私たちから取った税金使って。」
ジョシュア先生が少し身を屈め、窓から夜空を見た。
夜空に隕石が1等星よりも遥かに明るく尾を引いて輝いていた。
「そうだね。隕石、今日もキレイに見えるね。」
ジョシュア先生は隕石を見た後、再びカルテに視線を移した。
看護師がその先生の姿を見つつ、帰り支度を始める。
「あっ、私そろそろ交代時間なんであがりますね。
っていうか、先生ももう帰ってください。明日もあるんですから。」
「ああ、そうだね。」
12時過ぎ、ジョシュアが病院から自宅まで車で帰っていた。
郊外の道路は電灯もあまりなく、ふと見えた星空と尾を引く隕石がやたらとキレイだった。
先程の看護師の言葉を思いだし、ジョシュアはおもむろに車を止めて車から降りた。
何台かすれ違った車ももういない。
見えるのは鮮やかな星々と尾を引く隕石。
「今にも落ちてきそうなくらいキレイだな。」
夜なのに、まだ昼間の熱気のせいか、草が萌える匂いがした。
湿気を含む空気を大きく吸い込み、一瞬息を止めた後、大きく吐く。
ふと癌ステージ4となった移民のカルテが頭をよぎる。
ジョシュアがちょっと自分の足元を見た後、車に再び乗り込もうとした。
その時、薄暗く見えていた車のシルエットがはっきりと見えた。
急に周囲が昼間のように明るく照らされだした。
自分の影がはっきり映る。
ジョシュアはその影と反対側に振り向いた。
すると、そこには真っ白に輝く円盤が浮かんでいた。
ジョシュアは自分が真っ白な光に包まれていくのを感じた。
ジョシュアが居間のソファの上で寝ていた。
居間の机の上に置かれている目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。
音に反応してジョシュアがブワッと上体を起こした。
「あれ?僕はまたソファで寝たのか。。。」
彼にとっては記憶をなくすほど疲れて家に帰ることが良くあったため、全く違和感はない朝だった。
ジョシュアがゆっくり起き上がり、目覚まし時計を止め、シャワー室に向かって歩いていった。
右手がわずかにピクッと動いた。
<次回予告>
眠らない街、ラスベガス。
輝くネオンが明るければ明るいほど闇もまた深い。
空には見えない星々と尾を引く隕石、そしてもう一つの光。
次回、”ラスベガスの光”
次回も乞うご期待!!




