エピソード6 ”不穏な動き”
<前回までのあらすじ>
太陽系外縁オールトの雲より飛来する10個の隕石。
人々は世紀の天体ショーに沸き立っていた。
そんな最中、人知れず、一人の日本人女子大学生が、そしてアメリカ空軍の男が、ドバイではヒジャブを着けた女性がUFOに連れ去られ、そこで何かをされ、生活に戻る事件が起こっていた。
そして、NASAでは隕石の1つに対してブースター付き衛星を使っての軌道変更試験を実施。
しかし、その試みは失敗に終わってしまったのだった。
絵里は午前の授業を受け、友人たちと一緒に学食でお昼を食べていた。
絵里が携帯の画像をみんなに見せ、興奮しながら話す。
「ほら、これ見てよ!絶対これUFOだよ!!
しかも私、この中に連れていかれたんだよ!!
この右手に銀色の何かを埋め込まれて、、、」
女子の友達が話す。
「絵里。分かった、分かったから。
カレー冷めちゃうよ。食べちゃおうよ。」
信じてなさそうな友人に絵里が不満顔をする。
「もう全然信じてないでしょ!!本当にこの右手に、、、」
すると友人の中のチャラい系男子が話し始める。
「いや。おれは信じているぜ!!」
絵里が目を輝かせた。
「本当?嬉しい!ありがと!!」
その絵里を見ながらチャラい系男子が続けた。
「ということはさ。
お前、もしかして。。。。」
チャラい系男子は少し溜めたあと、言い放った。
「UFOん中でエッチなことされたんじゃ!!」
チャラい系男子が笑いはじめた。
絵里が怒り顔になり、反論する。
「そんなわけないでしょ!!だ、か、ら!!右手だってば!!」
そんなコントのような会話にみんなが釣られて笑いだした。
だが、友人の中の小太りメガネ君が口を挟んだ。
「いや。清水氏の話も案外嘘でもないのかもよ。」
そう言ってタブレットの画面をみんなに向けた。
”隕石に隠れている地球外知的生命が衛星を破壊した!!”
そういう題名の動画が流れていた。
その動画はNASAの発表した”隕石軌道変更プロジェクトの衛星爆発映像”をあるYoutuberが解析したものだった。
その映像の隅がアップされると、そこにチラリと怪しい影が映り込んでいた。
その影が映り込むシーンが何度も繰り返し再生されていた。
小太りメガネ君が話を続ける。
「このうP主はこれが宇宙人の仕業だって言っている。
清水氏はこの宇宙人の仲間に連れ去られたのかも。」
女子が話題に乗っかってきた。
「あー、それ!あたしも見た!
でもそれってなんかフェイクだって書き込みされてたけど。」
小太りメガネ君がメガネを光らせた。
「うん。まあAIで作られた画像じゃないかって噂もあるけど、僕の画像処理で確認したところによると解像度とかも全然境界がないし、これは本物っぽい気がする。」
女子が引き気味に反応する。
「が、画像処理ね。。。」
小太りメガネ君の言葉にチャラい系男子が続けた。
「やっぱ清水!連れ去られてエッチなことされたんだぜ!!」
少し真面目な表情になっていた絵里がまた怒り顔になった。
「そんなわけないでしょ!あんた、黙りなさいよ!!」
「って言うんだよ。失礼だと思わない?」
絵里の自宅近く。長野県長野市松代、青垣公園。
鍛えられた身体に迷彩軍服を着た男子が清水絵里と一緒に歩いていた。
背丈は約160cmの絵里よりもずっと高く180cmを超えていた。
「なんだ!そいつ!!絵里に変なこと言うやつなんか、おれがぶっとばしてやる!!」
絵里が、本気で怒っている男子に対して、半笑いの困り顔になりながら言った。
「いや、まあ大丈夫だよ。冗談だし。
勇は小さい頃からホントまっすぐだよね。
ていうか、なんで勇、ここに帰って来てんの?いつもいるのって横田なんじゃないの?」
勇が答える。
「ああ、なんか今日明日にもここ、松代に要人が来るらしいんだ。
それでこの地域に詳しい自衛隊員として、おれが選ばれたんだ。」
「そっか、勇はまんまここ出身だし、適任だね。
っていうか、要人が来るって言っても自衛隊が出てくるの?
それに、なんで急に連絡くれたの?
あっ、いや、連絡が嫌なわけじゃないんだけど。」
その言葉を聞いて、勇が神妙な面持ちになった。
勇が小さい声で話す。
「今回の召集。ちょっと嫌な予感がしてさ。
要人ってたぶん総理大臣とか、大臣クラスとかって噂だ。
食料もかなりの量が運び込まれているらしい。
その場所が、、松代象山地下壕。」
「えっ?松代象山の地下壕って、確か第2次大戦の時の政府最終決戦用防空壕だったとこだよね?」
「ああ。そこだ。」
勇の神妙な面持ちを打ち消すために絵里が明るく振る舞った。
「あっ!そういうことか!!
もしかして偉い人たち、あの隕石が落ちるって思ってんじゃないの?
確率は万に一もないってのにさ、ビビってんだよ、きっと。」
それでも勇は神妙な面持ちを崩さなかった。
「そうか。まあ、そうだよな。」
すると、勇の携帯が鳴った。
「はい。高橋 勇 空士長です。」
しばらく話を聞いた後、続けた。
「はい。1700(ひとななまるまる)集合、了解しました。」
勇が腕時計を見た。
すでに16時を過ぎていた。
「もう行かなきゃ。あと、、、やっぱり来るの、総理大臣と各省の大臣だ。
何のことか分かったらまた知らせる。
だから、もしものことがあった場合に備えて、逃げる準備をしといてくれ。
何かあったら防空壕の方に来てくれ。
あと、このことは誰にも言わないでくれ。
これ、トップシークレットだからな。」
「うん。分かった。ありがと。勇も気を付けてね。」
「ああ。じゃあな。」
松代象山地下壕に向かって勇が歩いていく。
絵里はそれを見て、少しだけ心配になった。
「まさかね。」
<次回予告>
オーストラリアで開かれる環境保護に関する学会。
壇上に立つ凛々しい一人の女性。
喧々諤々の質疑応答。
そして、その後、その女性もまた。。。
次回、エピソード7 ”珊瑚礁を見守る者”
次回も乞うご期待!!




