エピソード4 ”隕石軌道変更衛星 Redirector を見守る者たち”
<前回までのあらすじ>
太陽系外縁オールトの雲より飛来する10個の隕石群。
人々は世紀の天体ショーに沸き立っていた。
そんな最中、人知れず、一人の日本人女子大学生が、そしてアメリカ空軍の男がUFOに連れ去られ、そこで何かをされ、生活に戻る事件が起こっていたのだった。
人々は日に日に大きくなる隕石群のしっぽに、日に日に多くなる隕石のニュースに沸き立っていた。
各地で隕石に関する祭りやイベントが執り行われていた。
SNSでは隕石に関する投稿が溢れかえり、望遠鏡をはじめとする天体観測グッズが飛ぶように売れていた。
もちろんそれらは随時行われる軌跡計算により安全が担保されている上でのことだった。
オールトの雲から飛来する10個の隕石群。
その1つに近づく1つの衛星。
衛星からエンジン噴射がなされていた。
アメリカ航空宇宙局。
管制室のオペレーターが声を上げる。
「Redirector、エンジン噴射停止まで、あと5、4、3、2、1、燃焼終了。」
別のオペレーターが状況を説明する。
「隕石との相対速度1.4m/s。想定範囲内。」
衛星が隕石群の1つと距離50mほどの位置に停止していた。
正確には隕石と同じ速度で地球に向かって移動していた。
隕石は太陽光を受けている側では隕石表面からガスが噴出しており、衛星はその逆側に位置していた。
管制室のプロジェクトディレクターが言う。
「機体の表面温度は?」
複数いるオペレーターの一人がディレクターの方を向き答えた。
「表面温度プラス1.4 Saturated(飽和状態)。想定内。」
プロジェクトディレクターが全体に声をあげる。
「OK!では、次のフェイズに移行。隕石設置用サブエンジン点火準備。」
管制官たちが答える。
「はい!」
管制官の一人が声を上げる。
「サブエンジン燃料タンク、圧力、温度正常。」
「噴射偏向ノズルマニュピレータ、稼働正常。」
プロジェクトディレクターが合図する。
「OK。サブエンジン点火10秒前。」
管制官がカウントダウンをはじめる。
「サブエンジン点火カウントダウン開始。10秒前、9、8、7、6、」
管制室の全員が自分の担当するディスプレイ、計器を見つめている。
「5、4、3、2、1、点火!!」
衛星のサブエンジンが青白い炎を吹き出した。
ゆっくりRedirectorが隕石に近づいていく。
「相対距離40m。」
管制官の1人が言う。
「燃焼終了まで、あと5秒、4、3、2、1、燃焼終了。」
「相対距離30m。」
しばらく無音が続く。
「相対距離20m。」
プロジェクトディレクターが管制官の一人を見る。
その時、管制官の1人が声を上げる。
「着陸用エアバック展開準備、OK。」
もう1人が続く。
「固定用アンカー射出準備OK。」
「相対距離15m、、、14、、、13、、、12、、、11、、、10」
10という声と同時にプロジェクトディレクターが呟く。
「上手くいってくれよ!」
管制官。
「固定用アンカー射出確認!!」
衛星から4本のアンカーが隕石に向かって打ち込まれた。
アンカーに付けられたチタニウム合金ワイヤーが衛星に巻き取られる。
「アンカーワイヤー、テンション正常。」
「相対距離8m、、、7、、、6、、、5」
ディレクターがすかさず目を見開く。
管制官の一人が声を上げる。
「エアバッグ展開確認!!」
衛星と隕石の間にエアバッグが拡がる。
拡がるエアバッグが隕石に接する。
衛星の角度を保つため、4本のアンカーワイヤーが巻き取られていく。
「角度大丈夫か?」
「角度2.7度、制御範囲内。」
「エアバッグ収縮速度、正常。」
「相対距離3m、、、、、2、、、、、、、1」
「センターアンカー!!」
「センターアンカー射出。」
衛星と隕石の間のエアバッグが収縮していく。
センターアンカーが隕石に突き刺さる。アンカーが回転し、深く深く進行していく。
近づく距離分アンカーワイヤーが巻き取られる。
「アンカー固定完了。」
「角度0.6度、正常。」
それを聞いて即座にプロジェクトディレクターが言った。
「衛星固定完了。続いて、隕石軌道変更メインエンジン点火準備!!」
「メインエンジン用燃料タンク圧力、温度、正常。」
「噴射偏向ノズルマニュピレータ、稼働、、、マイナス角度調整0.51度、、、正常。」
プロジェクトディレクターが言った。
「いよいよだな。」
プロジェクトディレクターが全員を見回して言った。
「これより、軌道変更プロジェクト最終段階に入る。
では、いくぞ!!メインエンジン点火10秒前。」
「メインエンジン点火、カウントダウン開始。10秒前、9、8、7、6、」
管制室のみんながじっと自分の担当の計器を見ていた。
隕石に垂直逆立ちをしている衛星がメインエンジン点火を今や今やと待っていた。
「5、4、3、2、1、、」
その時、突然サイドカメラの映像に小さい炎が映る。
直後、映り込む大爆発。
そして、破片がカメラに向かって飛来。
サイドカメラに破片が直撃し、映像消失。
一瞬遅れてオペレータが声を上げる。
「メイン燃料タンク!圧力異常!!」
様々な計器の値が底に張り付いた。逆に振りきれるものも多数。
「機体温度、異常!!」
「機体角度25度オーバー!復帰不可能!!」
それぞれの管制官が自分の担当部位の異常を次々と伝えた。
前面ディスプレイには”Emergency”の表示。
カメラからの映像が全てノイズだらけとなり、すぐにブラックアウトしてしまった。
プロジェクトディレクターが言った。
「もう分かった。もう言わなくていい。
サイドカメラオペレーター、何か見えなかったか?
一瞬、炎のようなものが見えた気がしたが。。。」
サイドカメラのオペレーターがディレクターの方に向いて言った。
「はい。何か、、、メイン燃料タンクから燃料が漏れて火花が散ったように見えました。
ただ、あまりに一瞬で私の気のせいなのかもしれませんが。」
「サイドカメラの撮影映像、メインスクリーンに映せるか?」
「はい。」
前方のメインスクリーンにサイドカメラで撮影された動画が映し出される。
しばらくメインエンジンの青白い光が映し出されたかと思うと、メインエンジン用の燃料タンクから火花が飛び散り、一気にタンクが爆発した。
それを見たディレクターがオペレーターに指示する。
「ん?なんだ?爆発の前。。。ちょっとスローでもう一度映せ!!」
「はい。」
オペレーターが1/4スローで再生した。
再びメインエンジンの青白い光が映し出される。
管制室が静まり返っていた。
すると、タンクから白い液体が吹き出したかと思うと、タンク内部から火花が散り、炎があっという間に拡がった。
管制室がどよめいた。
ディレクターが小さくため息をつきながら言った。
「プロジェクトClosed。画像も含めデータを全て解析班に回せ。」
<次回予告>
ドバイのとあるレストラン。
そこでアルバイトをするヒジャブを着けた女性。
ある日、その女性はアルバイト先のレストランで男性客につきまとわれる。
それが恐ろしい事件へと発展するのだった。
次回、”ヒジャブの留学生”
乞うご期待!




