エピソード2 ”よみがえる記憶”
燃えさかる街の中で巨大な物体に対峙する夢を見た女子大生、絵里。
朝起きると母親に訪ねられる。
「絵里ちゃん、いつ帰ってきたの?」
大学から帰ってきたはずだが、記憶がない絵里。
さらに携帯も見当たらない。
母親が携帯の通信位置を見て、自宅近所の河川敷が最後の位置だと伝える。
その後、絵里は大学に行き、夕方河川敷で携帯を見つける。だが、充電0%。
仕方なく絵里は、家に帰り、父親、母親と夕食を食べる。
その間、携帯を充電し、充電が100%となった。
絵里は携帯を起動して、撮影した写真を徐に見た。
そこには光る円盤が映っていた。
そして、絵里は昨日の出来事を思い出す。
絵里は大学から少し離れた長野県の山奥で地層を見ていた。
教授が説明する。
「この地層をよく見てみてください。
薄い層が何層にも重なっているでしょう。赤黒い層が何度も繰り返し現れている。
これはミランコビッチサイクルと呼ばれていて、地球が10万年に一度、急速に極温暖期へと移行し、それにより地表が酸化されるため、このような色となっています。
この急速な変化がなぜ起こったのか?それは未だに謎のままです。」
絵里は興味深そうに地層を触った。
教授と他の学生たち、そして絵里は山を降り、麓の駐車場に到着した。
教授がみんなに解散を告げた。
「じゃあ、今日はここで解散にしましょう。
明日は採集した土の成分分析をしていきましょう。」
解散後、絵里は原付バイクに乗って、携帯で自宅までのナビを立ち上げた。
山岳地帯に入り、電波があまりない状態だったためか、バッテリーの減りが激しく、この時にはすでに10%を切っていた。
絵里がカバンの中を探した。
いつも持ち歩いているはずの補助バッテリーがない。
充電していた補助バッテリーを家に置きっぱなしにしていることに気がついた。
「あー、あそこだ。家に忘れてちゃってるな。。。」
絵里は原付バイクに乗り、千曲川沿いを運転していた。
出発した時、茜色だった空が星の輝く漆黒に変わっていた。
それまで何台か自動車に追い抜かれたり、すれ違ったりした後、パッタリと自動車の往来が途絶えた。
携帯のバッテリーは3%となっていた。
「もうちょっとだけ、もってよー。。。」
もうすでに自宅までの道が分かるところまで来ていた。
だが、暗がりの中で誰もいない状況。
その状況が絵里に不安を抱かせていた。
何かと繋がることのできる携帯が絵里の心の拠り所となっていた。
”2%”
絵里の中の不安がさらに大きくなる。
自分の原付バイクのライトのみが道を照らす。
携帯のバッテリーのせいで焦る思いを抱えつつも、細い川沿いの道を踏み外すかと、絵里はバイクの速度を落とした。
絵里がバイクのライトに照らされた道に集中した。
その時!!
突然、道全体が明るく照らされた。
道だけではない。河川敷の生い茂る草もはっきりと照らされていた。
絵里は思わず原付バイクを停め、周囲をキョロキョロと見回す。
なにもない。
絵里が頭上に何かを感じてフッと見上げた。
すると、そこにはある物が浮かんでいた。
直径15mほどの白く光輝く楕円の物体。
「ええっ!!なっ、なっ、なに!これ!!??」
思わず、携帯を上に向け、咄嗟に写真を撮った。
円盤の画像が画面全体に映る。
だが、次の瞬間、携帯の充電がなくなり、シャットダウン処理が走る。
「あっ、ちょっ、、、」
絵里が手を滑らせ、携帯を落としてしまう。
携帯を掴もうと絵里が手を出す。
が、掴もうと突き出した手の指先に携帯が当たり、携帯が遠くに飛んでいく。
絵里は見た。携帯のシャットダウン処理が終わり、画面がブラックアウトするのを。
そして、携帯は草むらの中に落ちていった。
すると、携帯の動きとは反対に絵里の身体が宙に浮かんだ。
「ええ!!浮く!!浮くぅーーっ!?えっ、ちょっ、、、私、美味しくないですってば!!」
咄嗟に絵里がバイクのハンドルを握る。
だが、絵里の身体は強い力で上方に引っ張られる。
絵里の握力が限界に達し、原付バイクから身体が引き剥がされる。
支えを失った原付バイクが倒れる。
絵里は手足をバタバタさせるが、どんどん身体は浮き上がっていく。
「ちょっと、、、これ、なによーーーー!!」
上を見上げると目の前に光輝く楕円の物体が差し迫っていた。
絵里は思わず目を閉じる。
その後すぐに絵里の身体から浮遊感がなくなった。
絵里がゆっくり目を開ける。
絵里は光沢のある部屋の中で3mほどのテーブルの上に寝そべっていた。
心が恐ろしさに震えるが、全く身体が動かないことに気がつく。
必死に叫ぼうとすると声も出すことができない。
いつからいたのか、周囲には銀色に輝く人型の物体が4体いた。
その4体が絵里の右手を指差していた。
絵里は力一杯抵抗しようとするが、やはり全く身体が動かない。
4体の中の1体が指と思われる部位で絵里の右の掌に触れた。
銀色に輝く人型の物体に触られた絵里の右手の部分が銀色に変化した。
痛みはない。ただ何かが身体の中をゾワゾワ動く感触が伝わってきた。
その銀色の領域がみるみる広がっていく。
右手全体に拡がったかと思うと、肘まで上ってくる。
そして、肩。さらに首に、頭まで。
身体中を何かに侵食されていく。
その感覚。その恐怖。
叫ぼうとするが、それでも声が全く出ない。
恐怖が絵里の心を覆い尽くす。
その恐怖に絵里は思わず気を失ってしまった。
食卓から携帯の方に移動した絵里。
絵里は携帯の光る円盤の画像を見て、全てを思い出した。
絵里は身体を震わせはじめた。
そして、目から涙を溢れさせた。
急変する絵里の様子を見ていた父親と母親が驚いて、絵里に声をかける。
「絵里?絵里?大丈夫か?」
「絵里ちゃん、大丈夫?」
絵里が左手の中の携帯画面を両親に向ける。
震える右手を両親の前に出しながら震えた声を出した。
「私、この円盤の中で右手に何かされたみたい。」
光る円盤に連れ去られた記憶を思い出した絵里。
彼女を待ち受ける運命とは。。
そして、他の場所でも同じようなことが。
次回、エピソード3 ”撃墜王という名の愛国者”
乞うご期待!!




