エピソード1 ”なくした携帯”
本作品は完全オリジナルSF小説です。
プロローグで主人公の女性が見た巨大物体は何だったのか?
本編スタートです。
(可能な限り、週1回日曜更新を行います。)
20歳くらいの女の子がバッとベッドから飛び起きた。
「なんだったの、今の。。。夢?っていうか、なんでベッド?いつの間に。。。」
窓の外から蝉の鳴き声が聞こえる。
女の子がいつも携帯を置いている場所を見た。
だが、そこに携帯がないことに気づいた。
周囲を見渡す。
その時、下の階から母親の声がした。
「絵里ちゃん!!起きなさいよ。今日、大学授業ないの?」
絵里が時計を見て驚く。
「やっば!!」
階段を慌てて降りる絵里。
女の子に食卓に座って朝食を摂っている父親が挨拶する。
「おはよ。」
「あっ、パパ。おはよ。」
キッチンから食事を持って食卓の方に母親が歩いてきた。
「あんた、また服着て寝たの?っていうか、昨日いつの間に帰ってきてたの?」
絵里が頭を掻きながら答える。
「うーん、私も分かんないんだけど。あっ、そうだ。私の携帯知らない?」
「えっ?またなくしたの?」
困った顔の母親。
それとは対照的に父親は慌てることなく携帯で通話履歴から”絵里”を探して、掛けてみる。
父親が絵里に目で合図を送った。
絵里が2階に駆け上がる。
が、しばらくして降りてくる。
「うーん、上にはなさそう。」
母親が面倒くさそうにアプリを立ち上げる。
絵里に画面を向ける。
「最後はここっぽいけど。。。」
千曲川(長野県長野市の川)という川沿いの土手にマークがあり、バッテリー残量”0%”と表示されていた。
「えっ?こんなとこ?全然記憶にないんだけど。」
絵里が昨日夕方あたりの記憶を探るように斜め上を見ていた。
父親は、二人のやりとりを慣れたことのように気にせず、テレビのニュースを見ていた。
女性アナウンサーが笑顔であるニュースを伝えていた。
「太陽系外縁、オールトの雲から飛来中の10個の隕石があと15日で地球最接近となります。これまでに見たこともないほどの壮大な天体ショーとなるでしょう。」
男性アナウンサーがそれに答える。
「まさか地球に衝突、、、なんてことはないですよね?」
女性アナウンサーが答える。
「はい。ご安心ください。常に軌道計算がされており、地球衝突の確率は0.002%。万に一もありません。」
「そうですか。では、安心して天体ショーが見られそうですね。」
母親が目玉焼きとソーセージ、生野菜が添えられたお皿をテーブルに置いて、絵里に言った。
「はい。もう食べて、学校行かないとなんでしょ?後で携帯探しに行きなさいよ。」
絵里がテレビに表示されている時間を見て言った。
「あー、もう行かないと。食べれない。ママ、ゴメン。」
父親が言う。
「朝食べないと。力が出ないよ。」
「うん。でも、もう時間ないから。」
「じゃあ、これ。」
父親が鞄からサッと何かを取り出し、絵里に渡した。
”カロリーメイト”と書かれた袋を受け取り、玄関に移動した。
「パパ、あんがと。行ってきまーす。」
戸建て住宅の小さい庭を通り、自宅駐車場の端に停めている原付バイクに絵里が移動する。
絵里が原付バイクで信州大学教育学部に行った。
絵里は普段と変わらず、友人に会い、授業を受け、夕方になった。
絵里が大学を後にしようとした。
「エリー!今から遊びに行かない?」
友達3人から誘いがかかった。
「ゴメン!!ちょっと携帯探さないとだから。」
「あっ、そっか。朝言ってたね。」
みんなが顔を見合わせる。
「一緒に行って探そっか?」
絵里がニコッと笑って言った。
「いや、いいよいいよ。あんがと。気持ちだけで。」
「そう?じゃあ、今日ダメだったら明日は一緒にいくね。」
「うん。ありがと。そうさせて。」
「じゃあねー。」
「じゃあねー。」
絵里が千曲川河川敷に来ていた。
夏の夕方、青かった空がオレンジ色に変わる頃。
汗だくの絵里が草を掻き分けた。
草の隙間から見覚えのある”ケロロ軍曹”のワッペンが見えた。
携帯とケースの間に挟まされいる絵里の大好きなキャラを見て、はっきりと認識した。
「あった!!」
携帯を取り上げ、埃を払い、その場で電源を入れようとするが入らない。
絵里は河川敷から上がり、原付バイクの座席下から鞄を取り出す。
そこから補助バッテリーを取り出した。
携帯の充電を開始して、ペットボトルの”綾鷹”を振って濁らせたかと思うとグビグビ飲みだした。
ビオレのさらさらパウダーシートで汗だくになった身体を拭く。
携帯の充電を見た。まだ数%。
「まだ電源入んないか。先に家帰るかな。」
絵里はヘルメットを被って、原付バイクに乗った。
「ただいま~!」
絵里の声を聞いた母親が答える。
「おかえり。携帯は?」
「あった、あった。」
リビングに入ってきた絵里は携帯を母親に見せた。
「良かったー。もうなくさないでよ。」
「えへへ、分かってるよ。」
「ちょっと汗だくだからシャワーする。」
「それだったらお風呂沸かして入りなさいな。」
「ううん。暑いし、いいよ、シャワーだけで。」
「あっ、そう?じゃあ、あがったら晩御飯ね。」
「うん。分かったー。」
絵里がシャワーを終わらせ、リビングに戻ってきた。
「あー、スッキリした。」
「じゃあ、晩御飯食べちゃいましょ。」
「うん。」
絵里と母親は食卓につき、”いただきます”をした。
二人は食事をしながら話をしていた。
「昨日さ、研究室で地層調査の実地研修やったのね。
地球ってさ、10万年に一度急激にめっちゃ暑くなってて、実はそれがそろそろなんだって。」
「そうなの?あー、それってもしかして温暖化の影響なのかしらね。」
「えー、そんなわけないよ。それだったらその地層から文明の痕跡が出てこないとおかしいじゃない?」
その時、玄関から声が聞こえた。
「ただいま。」
「あっ、パパ。おかえりー。」
リビングに父親が入ってきて、母親が父親の食事を用意するためにキッチンに向かった。
「パパも食べるでしょ?」
「うん。お願い。」
食事を載せたお膳を持って歩いてくる母親が言った。
「でも、10万年も経ったらさ、文明の痕跡なんて全部なくなっちゃうと思うけど。」
「えっ?何の話?」
父親が興味津々で話に入ってきた。
「え、あー、私がね、昨日、地層調査の実地研修だったんだけどね、10万年に一度地球が急激に暑くなってて、それが温暖化じゃないかってママが。」
「あー、そういうこと。まあ、あり得なくはないはな。」
「でしょ!!」
「えー、パパまで?そんなわけないでしょ。それならその文明はどこいったのよ?」
そんな理系家族的な話がされているところにテレビのニュースが流れた。
「オールトの雲から飛来中の隕石10個のうちの1つを使って、明日NASAの隕石軌道変更実験が実施されます。
これは今後地球に衝突する可能性のある隕石が飛来してきた場合の防衛手段として、開発が進められている技術です。
直径約1kmの隕石に対して、ブースターを搭載した衛星を設置し、、、」
父親は、二人のよもや話をよそに、テレビのニュースに目を奪われていた。
「ねえ?パパ、聞いてる?」
「えっ?ああ、すまん。なんだっけ?」
その時、絵里の後ろで充電中だった携帯が振動した。
さっと携帯を見た絵里が言った。
「充電100パーになった。」
絵里がサッと食卓から離れ、携帯の方に移動した。
「ちょっと絵里ちゃん、食べた後にしなさい。」
「電源入るかだけ。」
携帯のボタンを長押しする。
パッと携帯の画面に表示が映る。
「あー、良かった。死んでない。」
すぐに起動が完了して、指紋で携帯にログインする。
「電源入るかだけって言ったでしょ。」
母親の声をよそに絵里は携帯の画面をじっと見つめていた。
電源OFFの間に入っていた着信履歴やメッセージが表示される。
絵里が立ち上がっているアプリを表示した。
列挙されたアプリの一番手前にカメラのギャラリーが映った。
絵里は徐にそれを画面全体に映した。
画面に写る1枚の写真。
写真の下の方には薄暗く映る河川敷。
そして、写真の上部には光輝く円盤が映っていた。
「ああっっ。。。。」
絵里がそれを見た瞬間、何かを思い出し、絵里の手が震えだしたのだった。
写真を見て何かを思い出した絵里。
何を思い出したのか?
次回、エピソード2 ”よみがえる記憶”
乞うご期待!!




