ep.8 訪問して来た女の子
俺は平凡な、Fラン大学の3回生だった。
少し前までは、就職をどうするかで悩んでいた幸せな日々はどこに行ったのだろうか。
数日前、一人暮らしの俺のところに、突然、10代半ばくらいの女の子がやって来た。
ピンポーン!
チャイムが鳴り、扉を開けた先に、ツインテールの可愛らしい少女が立っていた。
少し気になったのは、地雷系ファッションをしていたくらいか。
「ねえ、お兄さん、少しお話したいことがあるのだけど、少しだけあがってもいい?」
(新興宗教の勧誘か?家出女子か?)
普通なら怪しむべきところだが、相手は可愛い女子で、危険も無さそうだし、少し酔っていたこともあり、好奇心で俺は女の子を家に上げてしまった。
家にあがって来た、女の子は言った。
「ありがとう、お兄さん、一人暮らし?
綺麗な部屋だね」
「そ、そう?
とりあえず、ミネラルウォーターくらいしかないけど、どうぞ」
「ありがとう、喉渇いていたんだ」
女の子は嬉しそうに俺の渡したペットボトルに一口付けた。
「ところで話って何?」
「私ね、お兄さんのような頼れそうな人にお願いしたいことがあるの」
「お願い?」
「うん。
私、武庫川高等学園の二年生で薬学科に所属しているのだけど、脂肪を燃焼させて筋肉を付ける漢方薬の開発をしているの。
試薬が出来たから、お兄さんみたいな健康な人に被験者をお願いしているの」
「く、薬の被験者・・・」
「うん、自然にあるモノを調合しているだけだから安全は保証するよ」
(なんか、怖いな・・・)
「いや、さすがにクスリは、ちょっと怖いな・・・」
「だめ?」
「ごめん、ちょっと無理・・・」
「そっか」
女の子は、残念そうにつぶやくと、俺に近づいた。
(キスするくらいの距離だ、女の子のいい香りがする・・・)
「目をつぶって・・・」
(色仕掛けか・・・分かっていても、あらがえない・・・)
突如、女の子は女子とは思えない強い力で、両頬をつまみ俺の口を開けさせると、強引にクスリと水を流し込んだ」
思わず、クスリを呑み込んでしまった。
「な、なにするの?!」
「だって、こうでもしないと手伝ってくれないでしょ」
女の子は悪びれた様子も無く言うと、何か分からない呪文みたいな言葉を唱えた。
特に何も起こらない、俺はあっけにとられていた。
「じゃあ、用は済んだから私は帰るね」
「えっ、ちょっと?」
去り行こうとする女の子の肩を俺は持った。
「何?乱暴するなら警察呼ぶよ」
俺は思わず手を離した、少女は鼻歌を歌いながら出て行った。
その日の晩に異変が起こった、買って来たカラアゲ弁当を食べようと開けたのだけど、全く、食べる気にならない。
(やべえ、すげえ空腹なのに、なんで・・・)
俺は、弁当を口の中に詰め込み、胃に流し込んだ。
「げえーっ、ごほっごほっ・・・」
俺は、弁当を吐き出した、胃が受け付けないのだ。
(腹が減った、ハラが減った、渇く、ノドがカワく・・・)
(怖い、こわい、コワイ、コワイ・・・オレはどうなる?)
俺は、長い間、布団でうずくまり、ウエとカワキに耐えていた。
どのくらい時間が経ったのだろう。
合鍵で人が入って来た、俺のカノジョだった。
「どうしたの、顔真っ青、クマもできている、救急車呼ぶね!」
・・・・・・
しばらくして救急隊員が来て、発見された俺は、彼女をめった刺しにして、腸を咥えた姿だったらしい。
「これが、オレのシル、スベテです」
取り調べをした兵庫県警・特命係の警部・田無幸一は、言った。
「まるで薬物中毒の輩の話だな、井草、こいつがマレフィクス、つまり化け物だと?」
「ああ、そうだと判断する。そして、その女の子は、おそらく魔女だ」
「魔女だと・・・」
「ああ、推測だがな・・・」
「とにかく、日時は分かっている、監視カメラの映像から少女を特定させる」
「ああ、そうしてくれ。
それが無駄だと分かれば、魔女だと推定できる」
「それにしても、ガキの色香に騙されやがって・・・」
やり取りの一部始終を聞いていた、世羅は思った。
(同じ手で来られたら、俺もたぶん、いや絶対にあらがえない・・・)




