ep.19 赤い靴5
明日は、陸上部でレギュラーを決める大事な日だ。
美佳は、授業を終え、最寄りの駅に向かって坂を下っていた。
「痛っ!」
右足の裏に何かが刺さった。
靴を脱いで確認すると、靴下に小さな血がついている。
慌てて靴下を脱いでみると、棘でも刺さったのであろうか、足裏に小さな傷が出来ていた。
「やだっ、明日大切なレギュラー選抜の日なのに・・・」
バンドエイドを貼り、応急処置をする。
「少し痛いけど、この程度、なんてことないな」
翌日の放課後、美佳は、レギュラー選抜の400m走に挑む。
「美佳、正々堂々、頑張ろうね、一緒にレギュラーになりたいね」
「そうだね」
居並ぶライバルたちの中、美佳は思った。
(自分はエースなんだ、誰を蹴落としてでも、絶対にレギュラーを取る)
レースが間もなく始まる、美佳たちは、並び、合図を待つ。
ピストルがなると一斉に選手が飛び出す。
エースの美佳は、先頭に躍り出る。
半ばを過ぎたあたりで、ちくりと足が痛む。
(痛っ!)
続けざまに足裏のあちこちに痛みが走る。
(痛い、痛い、痛い、痛い・・・)
それでも堪えて走るが、痛みは増し、足が引っ掛かり、走れなくなる。
それでも前進しようとする。
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!」
ソックスが血で滲み、シューズも濡れ始める。
さすがに堪えきれず倒れこみ、痛みのあまり涙が溢れだす。
それでも痛みは止まらず血が流れだす。
「痛い、痛い、痛いよ~!」
担当のコーチも驚いた様子で駆け寄る。
血が付いたシューズを脱ぐと、ソックスは真っ赤に染まっていた。
ソックスをゆっくりと脱がせると、足裏に無数の小さな穴があいており、血が垂れ流れていた。
その様子を誰もいなくなった教室から、泉は見ていた。
「あ~痛い、痛い、ふふっ、痛い、痛いよ~ふふふっ」
泉のザクザクに切れた右足裏から、真っ赤な血が滴っていた。
翌朝、美佳は松葉杖をついて、教室に入って来た。
友人たちが、心配そうに声を掛ける。
「大丈夫?痛みは引いた?」
「うん、大丈夫なんだけど、原因が分からなくて・・・」
美佳がそう言った時、同じように松葉杖をついて泉が入って来て、無言のまま、席に着いた。
(同じ足、同じようなケガ?)
美佳は何か、うすら寒い気がした。
それからは、美佳とその友人たちは、泉に関わることが無くなった。
それから少しして、同じクラスで泉にも友人が出来始めた。
それでもちょくちょく私たちと一緒にランチをしたり遊んだりもしている。
ある日の放課後、私と泉は、西北(西宮北口)のショッピングセンターの中にある喫茶店で、チョコフラペチーノを食べていた。
泉が言った。
「そういえば、前から気になっていたのだけど。
夜月って魔女だったりする?」
「私が魔女?ふふふっ」
「えっ、何かおかしかった?」
「だって泉、私が魔女だなんて。
あんな低俗で下品なモノと同じ扱いはしないで、ふふっ」
「て、低俗で下品・・・
魔女って低俗で下品なんだ・・・」
(っていうか、本当にいるのかな?)
「そう下品で低俗」
「じゃあ、夜月って何者なの?」
「私は、聖神女学院中等部の一年生、雨宮夜月、それ以外にある?」
全てを見透かすような紅い瞳で、夜月は微笑んだ。




