ep.20 わずかな可能性
井草、詩音、世羅の3人は、宝塚にある世羅のオフィスに集まっていた。
井草が言う。
「世羅が狙われたということは、機構の存在を知っているか、世羅が異能者であり、嗅ぎまわっているのを邪魔とみなした何者かによるものと推測される」
詩音が問う。
「世羅くんは、狙われる心当たりは無いの?」
「心当たりは、無いですね・・・
ただ・・・」
「ただ?何かあるの?」
「襲われる前に、紅い瞳の美し過ぎる少女に出会いました」
「少女ですって?」
「いや、だから何ということは無いのですが、紅い瞳とその美し過ぎるというのが、なにか人外めいたものを感じたので」
「世羅くんのただの女性好きか、あるいは・・・」
「異能者の第六感の線もあり得ると?」
「分かりません、ただ、少し調べてみたのですが、少女の名は雨宮夜月、中学1年生で、小林エリア近郊のアパートで独り暮らしをしており、両親はペンシルバニア州で、証券会社で働いているとのことです」
「なるほど、不自然だな・・・」
「その少女は、聖神女学院の生徒のようですので、少しあたってみようと思います」
「そうだな、今は手がかりが欲しい、僅かでも可能性があるのであれば、それもいいだろう。
素性調査であれば詩音が適任だ、手伝ってやってくれ」
「分かりました」
私と文香は、小林駅から南に10分ほどの場所にある幹線道路沿いのラーメン屋でラーメンを食べていた。
私はチャーシュー麺とチャーハンを食べていた。
「夜月は、食べなくても大丈夫なのに、本当によく食べるね」
「そう?まあ、飲食が趣味だから否定はしないけどね」
「そういえば、長年使い魔の研究しているのだけど、今度、新しい子が生まれそうなの」
「そうなの、それで?」
「その子が生まれたら、世界は新しいステージに進んじゃうかも」
「大それたことを言うのね。
どうでもいいけど、一つ言っておくね」
「はいはい、なんでございましょう」
「私の生活圏及び生活に悪影響が出たら、容赦なく狩るよ、あなたも含めて全部」
「怖~い、そうならないように気を付けているんだから、そんな言い方しないでよ~。
友達なんだからさ~」
「友達だから、忠告してあげているのよ」
「夜月は、人間が好きなの?」
「どうして?」
「なんかちょっと肩入れしているような気がするんだよね~」
「好きも嫌いもないけど、人間がいないと退屈しそうだからね。
いないとトマトジュースも飲めなくなってしまうし」
「で、ありますか~」
文香は微笑んだ。
私は、チャーハンをすくって食べる。
(飲食、文化、科学、戦争、人の営みは、けっこう面白みがあるのは確かか)




