ep.16 赤い靴2
私は、お手洗いの洗面場の鏡で髪の乱れを直していた。
(どうして・・・どうして・・・)
奥のトイレから誰かの悲痛な声が聞こえる。
私は構わず、髪の手入れをする。
トイレから人が出て来る。
(あ、あのいじめられてた子、浜野泉だっけ・・・)
私と泉は目が合った。
突然、泉の目から涙が溢れて来た。
「あああ、うわ~ん・・・」
泉は、いきなり見ず知らずの私に抱き着き、泣きじゃくりはじめた。
(こういう時、どうするのがいいのか、よく分からないけど・・・)
私は、そっと抱きしめてあげた。
泉は、さらに泣き出し、号泣しはじめた。
赤の他人にすらすがってしまうほど、泉は限界だったのだ。
泉の号泣がひと段落ついた時、私は言った。
「家はどこなの?」
「えっ?私の家?」
「そう」
「伊丹だけど・・・」
「伊丹でどこか美味しい店ってある?」
「美味しい店?」
「そう、パフェでも、ハンバーガーでも、なんでもいいのだけど」
「阪急伊丹駅の近くに、おっきいハンバーガーを出す店があるんだけど。
そこが美味しいかな」
「今日の、放課後、時間ある?」
泉は、何やら少し戸惑っているようだったが、思い切った様子で言った。
「うん、私、友達いないし・・・」
「じゃあ、そのハンバーガー屋に連れて行ってくれない」
「え?うん、いいよ」
「私は、雨宮夜月、夜月でいいよ」
「え、えっと、私は、浜野泉、じゃあ、私も泉って呼んでね」
「分かった、泉、放課後、校門で、待ち合わせでいい?」
「えっと、見られると迷惑かけちゃうかもしれないから、西北の時計台で、待ち合わせでどう?」
「わかった、じゃあ、終わり次第、西北の時計台で」
放課後、美佳は、二人の仲間と話をしていた。
「ほんと、泉ってウザいよね」
「なんで、生きているんだろ、マジで」
「あの子、においも臭くない?」
「あはははっ」
「可愛くない、頭悪い、運動できない、友達いない、なんでこの学校入れたんだろうね?」
「ほんと、同じ学校だと思われると迷惑だよね」
「ん?泉帰るみたいだよ」
「じゃあ、ちょっと遊んであげよっか、友達いない子だから」
美佳が泉に声を掛ける。
「泉、帰るよ」
泉が申し訳なさそうに応じる。
「ごめんね、今日は、他の子と約束があるから、先に帰るね」
「え、なに、せっかく私らが声かけてあげているのに?」
「ごめんね」
泉は、目をつぶるようにして、教室から走り去った。
「何あれ?なんか生意気じゃない?」
「本当、すごくウザい」
美佳が、冷たく言い放った。
「なんか、勘違いしているね、あの子」




