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ep.14 凶悪ドライブ日和

 日が徐々に落ちていく。


 男は、春香を助手席に座らせて、凶悪なドライブを楽しんでいた。


「なあ、君のくれたこの力、不思議なことに人を食うと力が湧いて来るんだ。

 どういう原理なんだ?」


「し、知りません、本当に何のことか、分からないです」


「前と違って、今日はえらく弱気だね。

 調子でも悪いの?

 なんか、俺は絶好調になって来たんだけど!あははっ!」


 そういうと、男は、春香のスカートの中に手を入れて、太ももを触る。


「いやっ!」


 春香は思わず両手でスカートを押さえて拒絶する。


「はははっ、可愛いじゃないか、その先は、この後じっくり楽しませてもらうよ」


 春香は涙ながらに言った。


「どうして?どうしてこんなことするんですか?」


 男の目が血走る。


「どうしてだと!自分の胸に手を当てて考えろ!」




 男は、山の中の公園に車を止めた。


 日が落ちて暗くなり、辺りには人はいない。


「降りろ」


 春香は、言うとおりに車から降りる。


「逃げようなどと考えるなよ、お前なんか触手ですぐ捕まえられるからな」


 男は、春香の手を持つと、乱暴に引っ張って行く。


 男は、しばらく歩いて一つのベンチの前で止まった。


 男が生暖かい声で言った。


「ここで服を脱げ」


「・・・・・・」


「早く脱げ」


「いやです・・・」


 バシッ


 男は、春香の頬をぶった。


 春香は泣きながら言う。


「いやです、もう帰して!」


 バシッ、バシッ、バシッ


 男は、春香の頬を3度ぶった。


「痛い、痛い、いやっー!」


 ゴッ


 鈍い音がした、男が、怒りに任せて拳で春香の顔を殴ったのだ。


「ううっ」


 春香は、口を切り、鼻血を流しながら、うめいた。


「俺が、脱がせてやる」


 男が春香の制服に手を掛けた時だった、男の顔の周りを人の形をした小さな紙切れが、回り始めた。


「なんだ、これは?」


 小さい紙切れは、1枚、2枚、3枚と数を増やし、男の顔にまとわりつき始めた。


 男は、両手を振って、紙切れを払いのけようとするが、数はますます増していき、その数は数十枚になり、顔を包み込み、周りが見えない。


「くそっ、なんだこれ!」


 男は、触手を放ち、粘液で紙切れを溶かした。


 しばらくして、なんとか払いのけると、目の前から春香が居なくなっていた。


「あいつ、逃げたな!」


 男は、触手を出してにおいを嗅ぐ。


(メスの匂いがする・・・)


 男は匂いをたどり、歩き始めた。


 少し離れた、茂みの中に、春香は隠れていた。


 口を押えて、呼吸の音も漏らさないように気を遣っていた。


 遠くから、男が近づいて来る。


 春香は、血と涙で顔をくちゃくちゃにしながら、必死に音を殺す。


 男が春香の前を通り過ぎる。


 春香は、その様子を茂みの合間から必死に見ていた。


(通り過ぎた・・・)


「なんちゃって~」


 男は、振り返り、春香の方に歩みよる。


「ヒトガタ、姫舞!」


 女の声がしたかと思うと、先ほどと同じように紙切れが、目の前にまとわりつく。


「くそっ、またか!」


 男は、触手を出し、粘液で紙切れを溶かし始める。


「木の呪符、ツタ縛り!」


 女の声と同時に、男の体にツタが絡みつき始める。


「なんだこれは・・・」


 男は、手足を縛られ、転倒した。


「春香ちゃん、こっちへ!」


 女の声の方に、春香は駆けよって行く。


 男は、女の声のする方向を見た。


 黒いスーツを着た若い女性が立っていた。


 女は銃口を向け言った。


「抵抗するな、そうすれば逮捕で済む。

 抵抗すれば、射殺する」


 男は、粘液でツタを溶かそうとするが、溶かしても新たなツタが生えて来る。


「クソがっ!」


 男は、触手を伸ばして女を襲ったが、女は飛びのいてかわすや、銃を撃った。


 パン、パン、パン


 乾いた音が響き渡ると、男は頭を打ち抜かれてガクリと倒れこみ、ぴくぴくと痙攣を始めた。



 神子上詩音は、携帯電話で連絡する。


「井草だ。状況はどうだ?」


「小金井春香は、無事救出、犯人は射殺しました」


「分かった、後の処理は任せろ。

 君は、小金井春香の保護を頼む」


「分かりました」


 詩音は、春香を車に乗せ、病院に送った。


 春香は、鼻の骨が折れているようで、痛みと恐怖から車の中でずっと泣いていた。


 春香を病院に送り届けた後、詩音はつぶやいた。


「心の傷にならなければいいけど・・・」


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