【聖女様のブライダルプラン・王都編 婚家の事情】④
お読み頂きありがとうございます。
今回は親父セクハラも残酷な描写もありませんので安心してお楽しみください
チームアントニオ、片眼鏡の侍従、剛腕の侍従、腹筋を鍛えし護衛騎士三人チームです
皇太子にはこの数に側近候補3人と侍女がもう一人つきます
チームアントニオの護衛騎士はたまに皇子に怒られて気合いを入れて貰えるのがご褒美らしいです(笑)
「気合いだー! 」ぺちッ! ……。
侍従が羨ましそうです。
そうだ! いちゃラブしようぜ。③
「刮目せよ! この華麗なる移動術を!」
俺はそう叫ぶと体操マットの上で仰向けになり両手を揃えて上げ、横にゴロゴロ転がった。
俺の運動の監督護衛騎士は突っ伏し、本来の勤務中の護衛騎士は膝をついて天を仰いだ。
俺の部屋の天井画、お花畑です(笑)
むふふーん、どうよ! と部屋の隅に控える片眼鏡にドヤ顔すると眼鏡はチッチと指を顔の前に立て横にふった。
「甘いですね、場所を取りすぎています」
「おおう? 」
「私ならコレです」
片眼鏡、さっと前に両腕を伸ばしてしゃがみ込み、そのまま前転で3回転した。
ソファが邪魔しなければもっと距離が稼げた?
「おおお!」
俺もやる! 俺も。
俺はすっくと立ち上がり片手をまっすぐ上げる。
「アントニオ ガヴァナー ウインズ第三皇子、行きます!」
宣誓と共に屈む、と同時に護衛騎士が両側にアシスト&救助体制…万全じゃねえか(俺の護衛優秀! )。
ごろん!… ……。
一回転して巻きが取れたダンゴムシのように仰向けに寝転んだ。
皆が静止した…。
解せん!
起き上がろうとするが腹筋が弱くて起き上がれない!
誰か助けて! うごうご…
誰かに手を貸して欲しくて手を伸ばす。
「何やってんだ?」
天上画のお花畑を背景に魔王降臨。
護衛騎士を押しのけて助けを求めて伸ばした手を握っていた。
ぎゃあぁあああ!
いやいや、なんで握ってるの?
マティちゃん、慌ててる俺を笑いながら抱き起してソファに置いた。
予想より優しくされてしまった…朝、スッポンポポンの血を無理矢理飲ませて来たくせに。
「何やってんだ? 」
「夜会でちゃんと歩いて会場回れるように筋トレ中、ついでに倒れた時邪魔にならず素早く移動する方法を思案中」
「ダンゴムシのまねで? 」
微妙な顔のマティちゃん。
ダンゴムシじゃねーよ! 俺の荒ぶる小鳥の本性が肩の上でちゃぶ台ひっくり返している。
「助けを呼べ、俺が馳せ参じてやる」
頭くしゃくしゃ撫でながらニッカリ笑うマティちゃん。後ろで侍女が編み込んだ髪を乱されて怒です、怖い。
ちくしょう、ちょっとキュッとした、キュンじゃないぞスパダリめ!
侍女、侍従、護衛騎士、チームアントニオ 微妙に警戒態勢です 誰にって?
イキナリ距離詰めてくるスパダリにですよ。
コイツがしでかした朝の出来事で油断もスキもないと学習しましたよ、オレ。
イキナリスッポンポポンの血とか飲まされた恨み晴らさでおくものか。
ちょっとぶーたれながらマティちゃんを見あげる。
あれ? ナニか思い出しかけてる?
でっかくて黒くて鬱陶しい政略結婚の相手、会って5日も経ってないのに懐かしい感じがする。
「?」
子供の頃に会った?
黄金の麦畑、青い空 血の色。
長い黒髪に赤い眼の……自分より少し年上そうな話し方なのに俺より小さく細い少女。
俺を「トニー坊や」と呼ぶ少女。
「どうした具合悪ければまたスッポンポポンの血飲むか? 」
俺の情緒を返せ。
かーえーれ、さっさと自分の部屋かーえーれ。
駄々っ子のように呪ってみる。
お前がいると猫かぶりしなきゃなんないから。俺の本性が小鳥となって肩の上でちゃぶ台返し始めるんだよ。
「聖女お目見えと夜会の服を合わせるようお前の兄ちゃんに頼まれた」
握りこぶしに親指立てて後ろ方向を指す。
聖女の後ろを見ると部屋の扉の前に衣装箱を抱えた侍従や侍女がいた。
早く言えよぅ!
「ご苦労様、入って、適当に荷物置いていいよ、こちらで確認するから…」
早くに終わらせたいが為に愛想よく言ったつもりだったが。
「中身を確認してお二方の衣装を揃えて合わせをするよう申し使っております」
侍女長は真面目だった。
これ、時間かかるヤツだ。
俺とマティちゃんサイズのトルソーが2体づつ持ち込まれる。
適当にある服の組み合わせで出席しようと思ってた。
なら早くから衣装合わせしておけばいいのにギリ当日に二人揃えてる為の衣装合わせなんて無茶だよう、ひいふうみい…針子のお嬢さんがた10人位いる、俺の部屋入り切れるかな。
「聖女のお披露目にはアントニオ皇子は白の祭祀服をお召になる予定です。聖女様も合わせて白の祭祀服にしたいのです…が」
「サイズの合う服がありません」
だよねー。
身長デカイし筋肉すげーし、見た目太さは普通に見えるけど触ったら分かる、すげー筋肉ぱつんぱつんだと。
「皇太子殿下から祭礼服一式譲ってもらってサイズ直しは終わっている。それを使ってくれ」
兄上ちゃんと考えてくれていたようです。
「了承いたしました それでは皇子の意匠と合わせての刺繍の手直しと指し色の追加…」
半日で足りるのか? 俺ら皇族はこういう事態に備えて色々組み合わせ用意してるが、兄上から借りるにしても聖女用を用意する時間は流石…。
「ああ、皇太子からメモと皇子の衣装も預かっている」
マティちゃん懐から出した封筒を侍女長に渡すと後ろの皇太子の侍女が幾つかの箱を持って前に進み出た、兄ちゃんに侍女借りたにしては多いと思ったら俺込み? 。
「刺繍や飾りはサイズ関係ありませんでしたので聖女様出現の報を受け、教会と皇家の協議の末に勝手ではありましたが幾つかパターンお作りしてあるそうです」
その場で手紙を読み進めながらも口頭で聖女や俺に説明する侍女長、本来なら失礼な態度だろうが…時間が無いせいで色々苦労かけてすみません。
侍女達は一礼すると、テキパキと衣装と付属品、差し色用の布や飾り用の刺繍布などを出して来る。
祭礼用の衣装は白を基本にしたシンプルなものに用途を合わせて飾り布や刺繍を付け足して使いまわす。
飾りとしての宝石は使わない。
「最終確認と手直しを頼む」
「承知いたしました…」
読み終えた侍女長は手紙を丁寧に折りたたみ、エプロンのポケットに入れた。
「夜会の服装は皇王に謁見した時の衣装をお使いになるとお手紙にありましたが、皇子の衣装をそちらに合わせたお色で…」
「いや、俺の兄上から子供の正装を譲ってもらったからそちらを着用して欲しい」
はい? 子供の…?
ちょっと待って? 兄上32歳とお聞きしましたよ? お若いご夫婦のお子様はまだ未成年では?
「一緒に来た兄上夫婦の子供は12歳で夜会には出ないが一応衣装は用意してきていて、それを皇太子に見せたら夜会はそれでそろえた方が面白いんじゃないかという話だ」
ちょっと待って?12歳の子供の衣装? 俺、小さくとも16歳…どんだけデカいんじゃお前の一族は!
「大きく作ってあるから留め具で調整すれば縫わずに調整できるんじゃないかと思う」
留め具? そいえばマティちゃんの初見の衣装スゲー留め具じゃらんじゃらんの軍服風の…。
「え? 俺もあの黒いすげー服着るのか? 」
しまった! つい興奮した 侍女長に睨まれた。
「すげー? 」
マティちゃんがにやにやしながら俺を見ている。
皇子様の猫がはがれかけて荒ぶる小鳥の本性が顔を出してしまった。
チームアントニオの面々がしょっぱい顔している。
もう猫要らないんじゃね?
あれ、ベルトとか留め具が戦闘服っぽくてかっけーと思ってたんだ、ちょっと着られて嬉しい。
「人気だよな、一族の子供達も成人でアレ仕立てるの楽しみにしているからなぁ」
「でも子供のって、その子も着るのを楽しみにしていたんじゃないか? 」
「大丈夫、成人までにまだ大分あるし、新しく作り直せばいい、代わりにこちらでドレスを買ってやったら喜んでいたからな」
ん?…ドレス?
訝しむ俺をなだめるように話続けるマティちゃん。
「着たら試しに剣も指してみるか? 舞踏会では帯剣は出来ないが兄上がトニー坊やに贈り物をと用意した剣を持ってきた、合わせるか? 」
マティちゃんは細長い箱を探し出して中を改めて取り出した。
瑠璃色の鞘に収まった騎士の剣とは違う細身の少し湾曲した剣。
俺は一応剣の扱いは習ったが自分の剣を持っていない。
習っているのに危ないと持たせて貰えてない! 。
オマケに〈剣は大人になってから〉と… 同級生は皆剣術習い初める時親から貰うというのに、解せん。
「宜しくお願いします! 」
マティちゃんの兄上、ありがとう!
俺が嬉しさの余り勢いよく挙手したら護衛騎士の3人が慌てた。
なんだよう、俺が剣持ったらやべー奴みたいな扱いすんなよー! 。
初めて剣習った時みたいに怪我人量産したりしないよぅ。
「聖女様の兄上にもお会いした時お礼をいいますけど、喜んでいたとお伝えください」
超うっきうきで歯が浮く台詞を一気にまくし立てた。
「マティちゃんでいいよトニー坊や」
「じゃ私はトニーで」
にっこにこー。
剣を貰ったからじゃないけど大盤振る舞いだ。
どうせ夫婦になるんだからトニー呼びは許すけど坊やはつけるな!
うっきうき 俺の剣。
「先に皇子の夜会服のサイズを合わせましょう」
侍女長は侍従に部屋の一角に衝立をふたつ持ってきた、それも両側の壁際に。
「男同士なんだから一つでいいだろう?」
チェーっと舌打ちする聖女。
お下品!
「いいえ、男同士とはいえ結婚前に一緒に着替えはありえません」
頑固な侍女長、このヒト昔から頑固だよな。
でも信頼できるスゴデキ侍女長だよ。
「こんなところで婚約者と裸でエロいことするほど豪のものじゃないよ」
マティちゃん反論。
勇気あるな。
「いいえ、猫は通りすがりに秒で子供を作ります」
そうなの!?
愕然とするマティちゃん、でも君は歩く●●●!
「俺、ケダモノ認定? 」
マティちゃんの犬耳が垂れてる幻覚が見える(笑)
「はい」
容赦ない侍女長。
ごふっとマティちゃんと侍女長の掛け合いで俺の護衛騎士共が吹いた。
さっきのダンゴムシにも耐えたのに…。
「朝食の席でアントニオ皇子に無体を働いたと皇太子殿下に聞き及んでおります」
あれは…アウトだな。
婚約者の俺でもダメだと思う。
…婚約者かぁ…。
侍女達に衝立裏に連れ込まれ、わらわらと脱がされながら考える。
聖女と王都で婚約式、半年後に王位継承権を放棄して西の辺境を守護する公爵家として公爵家を建てる。
そして落ち着いたら結婚……。
公爵家に聖女が嫁に入る。
字面はいいよな。
でも、嫁に入るのはあの黒くてデカイ聖女様だ。
魔法で男でも子作りが出来るという。
(想像を絶して凄い大変らしい)
…俺が生むのか、マティちゃんが生むのか?
(どちらも想像したくない…後者は絵面的にアウト)
俺とマティちゃん二人別に側室作ってその子供達を結婚させる…。
お互いに結婚させられる子供が生まれるかも分からないし、生まれてもまた男同士ならだめだろ。
生まれる前からの結婚が政略なんて嫌だな。
侍女がベストの留め具に迷っている。
「とりあえず上着着せて」
留め具は後でマティちゃんに嵌めてもらえば…。
「……裾長いなぁ」
上手くさばけるだろうか。
体力が落ちている。
学園は…あと2年残っているが飛び級で無理矢理卒業する。
さっき動いた感じでは夜会の最初の入場までは持ちそうだ。
目覚めぬ眠りの感覚が短くなっている。
眠りから目覚めにくくなっている。
「腕の留め具は嵌められる? 」
はい、と侍女がパチンパチンと音を立てて止めていく。
皇族には永い眠りの末、儚くなる子供がたまに出るという。
年を取らず、子供のままで眠りのうちに逝くという。
「まんまじゃんか」
はい? と腕の留め具を止めていた侍女が自分に声をかけられたのかと顔をあげた。
「ごめん、ひとりごと」
苦笑いで答える。
だが…おかしくね?
なんかこの服、裾長くないか。
一見丈の短いドレスに見えなくもない…。
そして上着の裾の長さとフリル。
えーっと…。
ノイエクラッセ王国の祭事で兄上について行った時、向こうの国の女性公爵がこんなドレスというかスーツを着ていたような……。
そしてあそこに控えるはヒールの高いブーツ…。
男性向けじゃねえよな アレ。
上着の前の留め具の止め方がわからずとまどう若い侍女が俺の顔見てひっとつぶやく。
恐い顔かな俺?
「マティちゃん呼んでくれ」
頭の上に乗った特大皇子様猫がひょんと飛び降りてる。
「ま…マティ様とは…」
「マッティア・アブン・ダンティ 聖女」
猫がいないのに荒ぶる小鳥ちゃんが肩に乗ったぞ。
両肩に。
侍女はおろおろと衝立を出て向いの衝立のなかに入った。
気づいちゃったよマティちゃん。
俺の肩に止まった荒ぶる本性の小鳥ちゃんが鳩胸膨らませてちゃぶ台返し待機中だよ。
そう、これが女性向けの衣装であると気が付いちゃったよアントニオ君は。
皇国はノイエクラッセ王国の西にあります。
お互い観光で往き来出来る平和なお付き合いです
山と酪農と教会総本山が観光名所です
ノイエクラッセ王国からは
南の辺境から出発の一泊二日で巡る砂漠の温泉ルートが人気です(笑)
次回、どっちが聖女様? 夜会編です。




