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傾国の美妃はひげそりを所望する  作者: まるいのあっと


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【ブライダルプラン・王都編 婚家の事情】②

お読み頂きありがとうございます

皇子様の護衛騎士達は扉の前で物騒な妄想で徹夜します。

物騒な妄想の元は皇子様を起こせるのでしょうか

…お楽しみいただけると幸いです

 ep4 そうだ! いちゃラブしよう。①

 

 夜の帳の降りた寝室。

 ベッドサイド横、寝ている皇子の顔に被らないギリギリに小さな灯があった。

 照らしているのはサイドテーブルの周りのみ。

 水差しとコップ、水の入った小さな桶と手ぬぐい、薬箱の横にはコロンとした可愛らしい小さな飴の瓶。

 

 クスリと笑った。

 如何にも好きそうな可愛らしい花の形の黄金色のべっ甲飴。

 手に取ってカラカラと振りながら眺める 1/3程減っている。

 

 甘いものが好きなのだろうか?

 土産は甘いものがいいのだろうか?


 サイドテーブルの灯越しに見る皇子は人形のように動かない。

 肩甲骨まである銀の髪がベッドの上に流れている。

 時々、小悪魔のように悪い顔をする青い瞳は閉じられたまま、白すぎる肌が作り物のような硬質感をかもしている。

 ふと、息をしているのかと手袋を脱いだ手の甲を軽く近づけてみる。

 

 微かに息はある。

 

 生きているのが不思議な細い息。

 低い体温。

 微かな脈。


 「動物が冬眠するとこんな感じだろうか」

 16歳、成人まであと2年。

 「俺が16の頃はもっと育っていたよな」

 兄弟友人に俺の身長は平均じゃないのかと聞いたら〈育ちすぎ〉と言われた事は考えない様にした。

 

 顔を近づけて覗き込む。

 元気な時にこんなことをしたら烈火の如く怒るだろうなと、また少し笑う。

 「髭はまだ生えてないんだ」

 頬を指の背で撫でる。

 行きつけの娼館の娼姫が指の腹で頬をなでるのは不躾だと言ったので。

 でも、どちらでも同じなのではないかと思うのはデリカシーが欠けているせいだろうか…。

 「戦場で生きてきた俺にデリカシーとか言われてもな」

 自分を嗤う。

 

 窓の向こう、街の灯がカーテン越しに見える。

 この街のカーテンは薄く光を通すものが多い。

 カーテンの役に立ってなくないか?


 一日の最後の祈りの鐘が密やかに聴こえる。

 灯がつけられる家でも、もう灯を消して眠りに入る時間。

 

 奥の手を使う為に人払いをした。

 

 この部屋の扉の前に侍女と侍従、護衛騎士が3人いる。

 少しでも物音がしたら突入する、と恐ろしい顔をした侍女に宣言されている。

 これが限界。

 

 マントを捌くように腕を振り、指をパチンと鳴らす。

 オンと水面に落ちた水滴が広がるように部屋の壁沿いに防音、防刀、対人、対魔の結界を張る。

 「乱入されても困るからな」

 

 嫌な臭いがした。

 

 この世界を創り、女神達に丸投げして世界から手を引いた 神というものの臭い。

 

 いつも腰につけているポーチから自分の握りこぶしより少し大きい石を出す。

 子供座りの羊に少女が寄りそう、砂漠で取れるバラ色の石に彫刻された羊の女神像。

 像を置こうとして置き場がない事に気づき、後から戻せばいいと、飴の瓶をポーチに入れ、像をそこに置いた。

 アルマリノ(羊の女神)黄金の羊を伴う女神。

 

 俺はアルマリノの聖女(外交官)

 

 女神像を前に跪づき、胸に手を添え、頭を垂れ目を閉じる。

 

 1・2・3秒。

 

 閉じた目の奥に光を感じる。

 

 聖句は要らないと言われた。

 敬う気持ちがあればいつでも顕現すると。

 貴方は私の聖女(外交官)だから、と。

 

 「婚約おめでとう」

 

 女神に婚約を寿がれてしまった(笑)

 

 「頭を上げて、直答を許します」

 少女の柔らかい声が頭上から降りる。

 頭を上げると子供座りの羊に寄り添う少女 アルマリノ、黄金の羊を伴う女神。

 

 白い空間にそれらは顕現する。

 

 何処までも続く白い空間だと飽きるのだろうか、白い列柱が生えるように立ち並び足元に石畳みが出現する。

 

 見る間に顕現するにふさわしい神殿風な空間が出来上がり 祭壇のような王座のような列柱とに囲まれた場所に女神たちは立っていた。

  

 「この子もふもふで可愛いわ! 作者に祝福を」


 真一文字の瞳孔の無表情な羊をもふもふと撫でまわしてご満悦な女神。

 もふもふを堪能するまで撫で回すのは止まらないだろう。

 

 「…マッチョになっちゃったわね…」

 感慨深げな女神はケレスティア(豊穣神、大地の女神、冥界の女神)は羊もふりに夢中な女神を気にするでなく俺に話かけてくる。

 

 「お久しぶりです、女神アルマリノ、女神ケレスティア」

 

 「前世は儚げな美少女だったのに」

 申し訳ありません、しかし絶世の美女にじっと見つめられた上、ため息つかれても困るんだが…。

 

 聖女(外交官)の力を搾り取られて餓死した子供が前世なんて俺にとって黒歴史以外の何物でもない。

 今なら思うよ、例え力がなくとも刺し違える位できたんじゃないかと。

 「ソレは脳筋の今世での考え方じゃない? 」

 

 前世の上司に考えを読まれたか、無茶ねと、少し睨まれた。

 「今は婚約者にぼいんぼいんとか胸筋撫でられてますよ」

 結構幸せなので許してください。


 婚約者が神の厄介事で寝込んでいる以外。


 幸せを体現するように笑顔で両手を広げて胸筋を誇張すると女神がしみじみ眺めてきた。

 …恥ずかしいことをしてしまった。

 

 「雄っぱい…」

 そいう下賤な言い回し何処で覚えられたのでしょうか?

 二柱の女神に微妙な顔をされる。

 いや、ぼいんぼいんとかのたまったのは俺の婚約者なんだが。

 

 今の俺が聖人ではなく聖女(外交官)として出現を予言されたのはあながち間違いではないのだろう。

 俺の前世は女神ケレスティアの聖女(外交官)

 その影響? か、女神たちの間では俺は未だ聖女(外交官)扱いなのだろう。

 聖女(外交官)の異能を搾り取られて聖女(外交官)の仕事もこなせないうちに死んだ子供(少女)

 殺された時は今の皇子より小さかった。

 そして砂漠に埋もれた国が滅びるきっかけの聖女(外交官)

 

 「それで今回の会見の理由は?」

 

 もふもふもふりがエキサイトして羊、今はひっくりかえされて腹毛を吸われてる。

 

 これが羊吸い?

 羊は腹吸われても我関せず、無我の境地。

 羊吸いながらも時間を無駄にはしない女神は俺に尋ねる。

 前世、俺が死んで冥界に赴いた時、女神ケレスティアに何故助けてと言わなかったのかと抱きしめられながら怒られた。

 そして魔力封じの首輪の呪いで死して魂になっても何も語れない俺に女神達は激怒した。

 女神の怒りで一国が滅亡したのを目の当たりににした俺は困ったら事が大きくなる前に助けを求めようと魂に誓った。

 

 「私の婚約者から神の臭いがします、周りの者の話によると長き眠りの(きざはし)(よわい)を忘れ、(こども)の姿のまま眠りに喰われると…原因と対処法を知りたく存じます」

 

 俺は上げた頭を再び垂れた。

 婚約者の眠りの原因は〈神〉。

 この世界を創り、女神に丸投げして見捨てた元凶。

 

 「人柱ね」

 ケレスティアはため息をつく、その仕草は人のようだがこれはひとではなし。

 「冥界の門を通過する魂の管理は私の仕事だけど別に困ってるとか滞っているとかはないのに余計なことを」

 女神様、悔し気に爪を噛んではいけませんよ?

 「人柱とは?」

 俺は素直に質問したつもりだがそんなことも分からないのかと言いたげに眉をひそめられてしまった…ええぇ? 理不尽。

 

 女神アルマリノは羊を抱きかかえながらも女神ケレスティアの袖を引いて耳打ちする。

 「人間には神々のシステムなんて分からないわよね」

 わかっていただけたようですが、ため息つかれるのはちょっとな気がしますよ? 女神様。

 

 一瞬に移動、深夜の皇子のベッドサイドへ。


 集団夜這い…。

 不遜な俺の思考を読んだのか、女神アルマリノが後頭部を手刀で叩いてくる。

 別に痛くないが凹むのでやめてください。

 

 女神二人と聖女(外交官)、深夜のこの時間に起きている聖職者はいないだろうが、神殿に近いここ皇宮で神気振りまいているだろうことを思うとひやひやする。

 

 「この子、そろそろ寿命に近いわね」

 

 いきなりの宣言、心臓がずくりと痛む。

 女神は何のこともないように言うが…。

 「…彼は私の花婿なんですが」

 女神達が眼を丸くして俺と皇子を見比べている。

 さっき俺たちの婚約を寿ことぶかれましたよね?

 「嫁です」己を指さし言ってみる。

 政略ですが。

 「あー聖女(外交官)だもんねぇ」

 しみじみ言う女神アルマリノだが、神託下したのはあなたですよね?

 てへぺろしても誤魔化せませんよ?

 

 「人柱とは神がこの世界に手を入れて調整する為の人間のこと」

 それは聖女(外交官)の俺も人柱だと言っているのでしょうか。

 女神アルマリノ曰く女神の執行代理人が〈いとし子〉外交官が〈聖女(外交官)〉。

 世界の安定の為に使い捨てられる部品が〈人柱〉。

 

 〈部品〉。

 

 「人柱にもいろいろあるの、ある一点で昇華させるための〈尊称持ち〉柱としてそこに根付き、心身を削って神に奉仕する〈人柱〉。

 淡々と本を読むが如く抑揚なき声で宣言する。

 「この人柱は〈冥の前庭〉大人になる前の罪なき子供の魂を拾い上げて魂の傷が治るまで育て冥府に送るもの」

 

 あちゃーという顔の女神アルマリノ。

 話し終わって無表情からちょっと怒ってるような顔になった女神ケレスティアが呟く。

 「成人するまであと2年位よね? それまでに「冥の前庭から引っこ抜かないと〈罪なきものの魂〉に呑まれてあちら側に行くわよ。

 

 「引っこ抜くとは?」

 皇子をじっと見つめていた眼をこちらに向ける。

 女神ケレスティア、悪だくみを考えている眼をしている。

 この女神、この世界で豊穣と大地と冥府の女神として女神人気ランキング第一位ですよね?。

 

 女神アルマリノは、この国での人気ナンバーワンの女神。

 ちなみに各国ごと、祈奉する女神がいる。

 隣のノイエクラッセ王国では天秤(ライブラ)の女神、俺の前世で滅んだ国はケレスティア、この国はアルマリノ、他にもいろいろな女神がいたが昔に比べれば少なくなったという。

 いつの昔だよ。


 神にも女神にも見捨てられる欲深で醜悪な人間(イキモノ)

 それでも見捨てずによりそってくれる女神もいる。

 女神アルマリノは元はヒトだと云う。

 そんな女神があざとく人差し指を下唇に充てて考えてる。

 

 「とりあえずこの子、〈前庭〉から引っこ抜きましょう」

 決定事項になった。


 どうやって?


 「多分、まとわりつかれて起きられなくなってるようね…抜かないと連れて行かれる」

 

 だからどうしろと?

 

 「引っこ抜く…とは? 」

 「そうね」と女神ケレスティア、腰に手を当て姿勢を正す。

 「説明するの面倒だからちょっと引っこ抜きに行きましょう」

 

 「は? 」

 

 「冥の前庭へこの子の魂を引っこ抜きにいきます」

 いや、大根じゃないんだから…?

 「はいはい! 」

 アルマリノが羊をちゃんと四足歩行出来るよう立たせて背中を二回、埃りをはたくようにポンポンと叩くと羊は無表情ながら黄金に光始めた。

 なんかドヤ顔。

 

 「マテアちゃんは私に捕まって」

 どこから見てたんだよ、この女神様。

 冗談でいい合った呼び名がばれてる。

 

 女神のどこを触ってもいいものか躊躇していると焦れたのか俺の腕をぐいと掴んで羊の尻に置いた。

 

 もふ尻!

 何故羊の尻に捕まれと?


 尻に気を取られて間に世界が変転し、気がつくと黄金色の麦の穂が地平まで続く平地の端に立っていた。

 

 「アントニオ ガヴァナー ウインズ皇子の魂が作る世界よ」

 

 ぽつりとケレスティアが呟く。


 風がやさしく髪をなぶる。

 空は青を主体にたなびく雲が黄金色をしている。

 そよぐ麦畑。


 光あふれる美しい世界。


 俺は倒れる前にユニコーンの光の粒をを浴びながら世界が美しいと笑っていた皇子を思い出した。

 「これは……」

 彼らしい、豊穣と光の美しい世界。

 

 だとしたら俺の魂はどんな世界を作るのだろう。


 「黒そう……」うん、多分真っ黒でゴツい。

 凹んだ。

 バンと誰かに背中を叩かれる。

 「ほら! しっかりしないと飲まれるわよ」

 周りには女神達しかいなかった。


 何に呑まれる?


 よく見るとチラホラと子供がいる。

 一心に空を見上げる子供。

 両手を捧げてくるくる回る子供。

 眠る子供。


 見ている間に眠る子供が光の粒となって消えていく。

 「向こう側へ送られたのよ、自分も送られたくなければ早く仕事を終わらせましょう」

 女神ケレスティアは歩みを進める。


 黄金の麦畑を進む女神達、冥界の女神ケレスティアが歩む先々で光の粒が立ち上がる。

 「流石冥界の女神」ポツリと女神アルマリノが呟き俺の方を向く。

 と、びっくりした顔でのけぞった。

 なんすか?

 女神ケレスティアも振り向き、しげしげと俺の上下左右を見回すと困ったような顔をした。

 「神は罪なき魂を救う為と冥界に送る前の魂を選別し、彼の様な人柱の魂を使って浄化しようとしている」

 ケレスティアの顔が俺に迫る。

 「死は全ての生き物に平等である、それは変えられない(ことわり) 不死はない、蘇りもない 神は慈悲を垂れ、罪なき魂に救済を歌いながら罪なき人柱を生み出し無慈悲に使い捨てる、君も君の婚約者も人としての選択を誤ってはいけない」


 女神は何を俺に言いたいのだろう? 俺は首を傾げた。

 ふと、女神に抱き上げられる。

 高い視界で風の当たりが強くなる、俺の黒髪が風に煽られる。

 あれ? 髪、()()()()()()()()かな?

 髪より()()()()()()()を風で煽られないように押さえた。

 「彼処に貴方の婚約者がいる」


 抱き上げられ、女神が指差す其の方向を見る。

 黄金の麦畑の一角が紅く染まり、その中央にアントニオ ガヴァナー ウインズ皇子がいた。


 10歳程の子供の姿で。

 

頑強な黒騎士な聖女の由縁が今、ここに(笑)

次回も親父エロトークをサービスサービスぅ

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