【聖女様の結婚準備ブライダルプラン・王都編】
お読み頂きありがとうございます
皇国、ノイエクラッセ王国のお隣です
厳しい山脈に囲まれた盆地からの砂漠地帯までが皇国、
酪農中心の宗教国、羊の女神を崇め奉るのんびりした国です(笑)
ep2 ウエディングドレスかタキシードか、ずるずる…か(笑)
本人たちの了承も確認も適当に聖女様のブライダルプランは進んでいた。
新郎:アントニオ ガヴァナー ウインズ 16歳 ウインズ皇国第三皇子。
新婦:マッティア・アブン・ダンティ 聖女 自称24歳 ロコロドンドの西の砂漠のアブン族出身。
「何故、俺は32歳独身と紹介されるんだ?」
連日のパーティやお茶会で女性陣に囲まれ、不機嫌最高値のマッティア氏。
俺の部屋のソファにだらしなく寝転んで文句をたれている。
「32歳独身は兄貴なんだが…兄貴が聖女か? 」
本気か!
んな訳ないだろう? ん?
お前の兄貴がどんな人物か知らないが…やめてくれ、これ以上事態を悪化させるのは。
俺はロイヤルスマイルをたたえたままお茶を一口飲んだ。
それは対外的にもにこやかに。
「どんな方ですかお兄様は」
一応お前の兄貴が聖女だった場合の対策のために探りを入れてみる。
俺の〈お兄様〉発言が気持ち悪かったのか微妙な顔をする聖女 マッティア・アブン・ダンティ。
俺の中での呼び名はマティちゃん(笑)
「アブン族の最終兵器と呼ばれている 戦に出すと一帯焼け野原になるから穏便に済ませたいときは絶対出さない」
「素晴らしい兄上ですね」
にこやかロイヤルスマイルの俺。
条件反射です。
「本気マジか? 」
すみません御追従です。
にっこにこー。
焼け野原製造聖女…すごいな字面が。
32歳独身男性の聖女って何のパワーワードなんだよ。
…24歳独身男性の聖女の破壊力もアレだけど。
コイツに名付けるなら〈黒い破壊兵器の聖女〉。
聖人でよくね? 女神様。
そしてなんでこいつは長年の親友のように俺の部屋でくつろいでいるんだろう?
チックショーだらけていてもイケメン! そのムッキムキの筋肉俺に半分寄こせよ!
胸はだけてソファに転がるイケメンの筋肉が羨ましい。
と、愚考しながら紅茶を飲む、今日は花の香が清々しい紅茶だ。
細工が可愛らしい角砂糖を入れると花が浮き上がってきて雅…ふう。
野郎二人で可愛らしい紅茶でお茶会なんぞやってられっかー!
俺の肩の上常駐になった小鳥の様な荒ぶる本性が雄叫びをあげながらちゃぶ台をひっくり返している。
でも菓子はうまーい、はぐはぐ。
なお、ちゃぶ台とは隣の国の東の辺境で床に藁引いて暮らしている部族のテーブル。
俺はキチンと背筋を正し、にこやかに礼儀正しく紅茶を飲み干す。
おかわりーなどと宣ってはいけない。
自分で言うのもナンだが虚実混ぜませの嘘くせ―笑顔で壁際の侍女に合図。
お紅茶うまうまー。
けれど、初夏の皇国、俺の離宮の庭園ではくちなしの花が盛りで花と香が離宮一帯に広がっている。
慣れてもこの季節、結構匂いキツイ。
紅茶の香りと混じって微妙。
風呂の入浴剤もくちなし。
俺の個人的な紋章もくちなし。
死人にくちなし…。
不穏な俺の思考。
苛立っているから勘弁してください…、俺の部屋なのにくつろげないので荒ぶってます、このイケメンのせいで。
このクロヒョウのせいで!
(多分俺の視線の先、猫科の動物のように寝転ぶイケメンに ↓ がたっている)。
自分の部屋に帰れぇ!
「砂漠と違っていい気候だな」
俺のココロのツッコミは通じない。
クッションを抱き枕にものうげに語るマテアちゃんこっちの方がゴロいいかな?。
一応言っておく、コレも命名俺(笑)
真っ黒黒の聖女サマでも窓の外を眺めながらそう、しみじみ言われるとちょっと胸にくる。
こいつの故郷は砂漠、熱砂と灼熱の太陽、人には優しくない厳しい自然と何処からか湧いてくる魔獣、国境線に接しているせいで攻めてくる好戦的な隣国。
命の危険と隣り合わせの土地だが、それでも故郷なんだろうなぁ。
しみじみ。
「マテアちゃん、ホームシックですかな?」
凄い嫌そう。
花の季節は俺の誕生月、外は皇宮も庭も街中も花が溢れ華やか。
めでたきこと、誕生月の皇子と聖女との結婚が決まり街は祭りの準備に賑わっている。
実際、花嫁この黒いのだけどな。
俺はそんなマテアちゃんに、にこやか皇子スマイルを粗製乱造中。
結婚は政略。
親父(国王)らからは嫁と仲良くしろと言明された。
「トニー君、笑顔ながら額にしわが寄ってるぞ」
こちらを向いたマッティア氏は自分の眉間を指で軽くつつく。
誰がトニーじゃ、アントニオだよ。
おっとこらしい名前を両親に頂きましたが銀髪青目の16歳。
なのに見た目儚げ女子のような美少年ショタ枠に育ちました(笑)
外見だけなら俺のほうが聖女じゃね? 並んだら絶対俺聖女に間違えられるという屈辱!
俺が旦那!
「今日は珍しくオフの日だよな、天気もいいし遠乗りでも行くか」
ほんと、友達扱かい。
政略とはいえ一年後には結婚する婚約者同士なのに。
「お…私には今、私用で使える馬がいません、ロコロドンドの西の砂漠に連れていけないので私の馬は妹に譲るため調整中なんです」
俺の愛馬は小型の白馬、散歩だのパレードで王都内の移動くらいしか乗った事がないのでロコロドンドへの長旅には付いて来れないだろうから置いて行きます。
元々俺がデッカくなって大きい馬に乗り換える時、譲る約束をしていた…俺、おっきくなる前に婿に行くのか。
にーっこり、腐るな俺、俺は皇子、皇子…腐っても皇子。
自分に呪いをかけて皇子スマイル。
聖女誕生の祭りと俺の誕生日の祭りといろいろな宗教行事が終われば俺はこいつの婿? として西のロコロドンド領に行く。
花婿行列引き連れて…。
二度確認、俺は皇子、皇子…腐っても皇子。
「俺の馬に二人乗りすればいい」
え? 流石野郎二人は馬に負担。
「馬、可哀そう」
「一角獣だぞ? 乗ってみたいと思わないか? 」
はい?
あの清い乙女にしかなつかないという幻獣? 男なのに騎獣に出来るのか?
てか、マテアちゃん乗ったら潰れないか?
「お前、失礼なこと考えてなかったか? 」
「清い乙女以外が近寄ると角で串刺しにされるのでは?」
串刺しNG!
「お前童貞だろ? 見た目乙女っぽいから誤魔化せる」
誤魔化して…誤魔化せるんかーい! 一角獣!
誤魔化せるなら見てみたいと好奇心に負けたのが間違いでした。
騎獣舎にそれはいた。
これ、一角獣じゃねぇ!
ユニコーンと呼ばれる馬、黒い馬身に黒光りする太く鋭い角、体躯が普通の馬の3倍はありにける。
その勢い破竹の如く、猛き巨体は獣舎にも轟き破壊する勢いであった。
…一角獣…?
清き乙女、踏みつぶされて干物にされるよ。
「これ…なに?」
「一角獣」
騎獣舎の飼育員が怯えて近寄れないでいる、皆マッチョなおっさんなのに。
「清き乙女、泣きわめいて漏らしちゃうよ」
マテアちゃんは周りの飼育員もガクブルの覇王の馬の鼻づらを撫でて先ほどお茶会で出した花の角砂糖を与えている。
花の角砂糖が…ちっせー!。
「俺には大人しい馬だ」
ふと気が付いた。
「…童●?」
微妙な眉寄せた顔。
「貴族教育舐めるなよ」
おお、噂の閨教育か。
「そういうお前は童●か」
「……」
!
俺の肩の上でちょこんと置き去りになった小鳥のような本性が叫ぶ、ちくしょぉおおおぉあ!
16歳、ショタ枠舐めるな。
童●だけど…。
閨教育まだです。
一角獣は俺を舐め切って笑い? 顔? でブルウルンと鼻息に鼻水混ぜて飛ばしてくる。
ブフォと生臭い鼻息が嫌。
大事な事なので二度確認、一角獣?
ひとしきり俺を舐めて笑っていた魔馬はマテアちゃんに鼻づら撫でられて気持ちよさそうな顔してる。
それにしても馬体がまっ黒、変異体?
ええい! 頭を喰らおうとするな、角砂糖も人参もやらん!
ぶるぶるとおやつを要求する魔馬ことユニコーン。
角砂糖では足りなかったか、とうとう黒砂糖のデッカイ塊をマテアちゃんに貰うとバリンと一噛みで粉々にする。
一角獣う?
噛み砕いた黒砂糖の欠片が飛んでくる。
粉と欠片だらけのオレ、皇子。
笑いながらマテアちゃんが頭をはたいて砂糖を落としてくれる。
ユニコーンとは…。
乙女の守護獣とは…。
と、悶々と思考の海で溺れていたら眼の前に手があった。
でかいな、手袋も黒かよ。
いつの間にか魔馬に騎乗していたマテアちゃんが俺に笑いながら手を差し伸べていた。
…ちくしょう、イケメン。
悪ガキが気取って女の子に手を伸ばしている感がする。
しかし俺は女子じゃないので!
ガッシと手を掴んでよじ登ろうとしたら思い切り片手で持ち上げられた。
羽のように軽いとかいうなよ。
馬背に引き上げられるように乗った、馬体をまたごうとしたら跨げない? 背中広すぎて普通に脚広げて床に座ってる感じに座ってしまった。
イケメン、マテア君は… がっしり跨ってる 鐙に足乗ってるし。
てか、鞍とか特注か! 足長いな、ちくしょう。
高い、馬の背高いわーー!
「どうだ? 他の馬より景色が高いだろう」
確かに。
並行して走る護衛の頭が下にある。
風がいつもより強い。
鬣が翻るたびに何かキラキラしたものが飛ぶ。
「魔力? 」
「らしい、一角獣の角は魔術師の杖の素材として魔力を通したり溜めたりするのにいいらしいからな」
「…黒いのにやっぱり一角獣なんだ」
「ははは」
マテア君、面白そうに笑う。
「くふふ」
俺も釣られて笑う。
風が流れる、風景が飛んでいく。
一角獣のキラキラの魔力に充てられたのか、世界が美しく見える。
不思議だ 世界が美しいなんて。
…黒と赤。
ーーぱん、と何かが己の内ではじけた。
血と硝煙、悲鳴とうめき声とか細い鳴き声。
世界を埋め尽くす圧倒的な鋼の暴力。
くちなしの花が咲き乱れる庭のガゼボにいる自分が嘘で破壊され血塗れの世界が現実なのだろうか と。
誰かが意地悪く囁く。
そして俺の預かり知らぬ所で世界は暗転した。
「息はしてるな? 」
一角獣に騎乗して走っていた。
高い馬身の上、流れる初夏の明るい景色。
青い空、心地よい風。
一角獣も、幾分高揚した気分なのかツノから魔力を振り撒き、コイツも笑っていた。
いつも澄ました態度のコイツが笑っているのが楽しくて俺も釣られて笑っていた。
なのに、突然だった。
カクリと、いきなり左腕に重みが集中する。
落ちる!
馬を止め、アントニオ皇子の人形のように弛緩した身体を抱えたまま飛び降りる。
抱きすくめた距離で見た見開かれたままのガラス玉のような瞳には何も映っていない。
「おい! 」
強めに声をかけるが反応はなし。
手袋を咥え脱ぎ捨て、素手で呼吸と首の動脈を確認するが反応がわからない。
コレは延命行為と自分に言い聞かせ、服のボタンを外し剥いた胸に直接耳を当ててやっと間延びした心音を確認。
再度動脈で脈を確認、微かに脈があった。
嘘だろ?
一番に駆けつけたのは皇子が〈幼馴染の腐れ縁だ〉と、紹介した侍従。
「後ろの馬車で王宮に戻ります」
慣れた手つきでフード付きのマントで皇子を包んで俺から取り上げようとする。
「それは婚約者の俺の役目だ」
侍従は一瞬、おもちゃを取り上げられても文句が言えない子供の様な顔を見せたが、俺は気が付かないフリをして手のひらで開いたままの瞼を閉じ、そのまま口元を覆う。
微かに息がある。
と、肩に生臭い重みを感じて振り返ると一角獣が俺の肩に顎を乗せ、ツノからキラキラしたものを出して皇子に振り掛けようとしていた。
珍しいな、コイツを気にかけているのか。
ユニコーンのツノには癒しの魔力がある。
さっきは砂糖のカケラ飛ばして笑っていたくせに。
「王宮に戻る、ついて来い」
一角獣に声をかけ、そのまま馬車に乗る。
王宮のバルコニーからも望める丘に馬で散歩すると伝えたのに侍従は護衛と馬車を用意していた。
「こうなると予見して馬車を用意したのか? 」
走り出す馬車の中、俺はアントニオ皇子を抱き抱えながら侍従に問いかけた。
童話の様な恋物語がいきなり不穏に突入しました
中の人、片眼鏡です
黒聖女、厚ヤバいです 初対面でデレかい!(ツッコミ)
咥えて手袋クイッとか初めて見ました(ヤルヤツイルンダ…)
男の色気、ヤバいです(オレ、ノーマルですけど?)
聖女なのにスパダリ?(オレ、ノーマルですけど?)
次回以降下ネタ要注意です。




