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映画のようなワンシーン、それを見せたとき会場の空気が変わった。
会場の空気は、一瞬にして重くなった。それと同時に井上さんは、唇を苦々しくかみしめていた。
しばらくして、間を取ったのち僕は口を開いた。
「井上さん、この映像が何かわかりますか?」
「なんで……なんでこれが?」
体を震わせて、井上さんは両手で顔を覆った。
「知っているようですね、フェリー座礁事故の真実。
これは事故を起こした、定期船の固定カメラの映像です。
なぜあなたは、あんな嘘の記事を書いたんですか?」
バンと突き出す、新聞記事。騒然とする会議室内。
「わたしは、彼が好きだった」
「もういい」山本議員は、井上さんを制するように首を横に振った。
しんみりとした顔の山本議員と、僕は対照的だった。
「奇跡の船長、『山本 一樹』。彼は汽船会社のベテラン船長で、バツイチ。
井上さん、あなたとも随分仲が良かったみたいですね」
「本当に全てをお見通しなのね」
「それが、情報。情報の世界は日進月歩」
手をテーブルについて、うな垂れる井上さん。
それをみて騒然とする議員たち。あの映像で、空気は変わっていた。
「そうよ、私は一樹さんが大好きだった。
愛人だけど、素朴な彼に惹かれたの。私にいつも優しくしてくれて、温かい人」
井上さんの声は、急に明るくなる。それは、紛れもなく恋する女性の声。
「それでも、嘘は許されない。隠蔽された嘘の情報は、多くの悲しみを呼ぶ。
僕の妹は、死んだんだ。それは、一番むごいやり方で殺されたんだ。
誰にもみとられないで死ぬなんて、どんなにみじめな事か。わからないだろう、僕の気持ち!」
「落ち着きなさい、駿君」
全ての成り行きを見守ってきた、冬子さんの声が聞こえてきた。
今までのやり取りを全て見ていた、冬子さんはやはり落ち着いていた。
「今は、過去の罪をどうこうするつもりはない。
あくまでこれは議論。薪島のための議論だ。
お前の持ってきた情報が、嘘を暴いた。それでいい。それより話をつづけるぞ」
「冬子さん……」
「命令だ」冬子さんは、それでも凛としていた。
迫力に押された僕は、渋々下がることにした。
「さて、これでも分かっただろうな。この島の問題は、『孤独死』だ。
『クサナギエージェント』が持ってきた『情報端末』をつなぐために電波塔が必要なのだ。
そのためにも与党の山本党首、話しをしたい」
だけど、議論の体勢は決まっていた。山本議員はすでに戦意喪失していたのだから。




