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お昼も二時間が過ぎたころ、僕は夏帆と一緒にファミレスに言っていた。
中華料理のチェーン店のファミレスは、いつも僕たちの会議場所。
桃のマークが目印のあのお店。
僕はラーメンを食べ終えて、自分たちの会社で開発した情報端末を出していた。
夏帆もまた、自分の情報端末を置いていた。
僕と夏帆でテーブルを占拠して、夏帆は重そうなリュックを隣の椅子に置いた。
スーツ姿にリュック姿、さぞかし目立つ夏帆。だけど、いつも通り周りを気にしない。
そんな夏帆の前には、なぜか杏仁豆腐と紅茶。
「やっと置いたな、そのリュック」
「食べる時と寝る時だけは、置くのは当然です」
前の飲み会のときには、ずっと背負っていなかったっけ。
などと突っ込みを入れながら僕は、情報端末を操作した。
「それより会議でしょ」
杏仁豆腐を持つスプーンを持ちながら、僕の方に顔を向けてきた。
実は『クサナギエージェント』に会議室はない。
まだ大きい会社でもないので、こうやってファミレスを使っていた。
そしてその時には、情報端末を使うのだ。
「また、僕のせいで君たちには迷惑をかけるかもしれない」
「あらまって、何?前置きはいいから」
「夏帆のそういうところが、大好きだ」
「嘘ね」持っていたスプーンを僕に向けていた。
「何を言っている、本当だ」
「下心ミエミエよ、社長。それが本当なら、セクハラです」
「ああ、セクハラというのは間違いじゃないな。僕は野心の塊だから」
「草薙社長、それは会社運営に大事です」
「理解してくれるのか、夏帆」
「理解しなければ、ついてきません。ここは私の居場所ですから」
右手のスプーンで杏仁豆腐をすくいながら、左手で器用に端末のタッチパネルを操作していた。
「そうか、ならば大好きな僕の意図も……」
「素直になりなさい、社長。あなたは妹好きの、ハイパーシスコンなのだから」
「そう、シスコン。それでも僕は間違っていない」
「だからこそ、社長は私を好きにならない」
「あのさ……夏帆。タブレット見てくれるか?」
そう言いながら、端末を操作し終えた僕は端末の画面で送信ボタンを押す。
杏仁豆腐を上品に食べ終えて、タブレットを見ていた夏帆は口を丸く開いて頷いていた。
「なるほど、確かにシスコンだわ」
「だろ、大好きな夏帆に頼みたいんだ。僕達の端末で……」
「『ナムラコーポレーション』様にそのことを報告しないといけないわ」
そんな夏帆は、店内の方に目をやった。夏帆の視線の先には、老人夫婦の姿がいた。
中のよさそうな老夫婦が、おいしそうに中華料理を食べていた。
僕の画面には、弥生のアニメ絵が相変わらず笑顔を見せていた。
「ねえ、草薙君」
「夏帆、その呼び方は久しぶりだな」
「未来は、ああいう将来になるというのね」
「そう、だけど僕たちはそれを手助けするツールでなければならない」
「それが『クサナギエージェント』ね」
「そう、夏帆。この会社の目的、ようやく見つけられた気がする」
「草薙君?」
「夏帆、この名前をつけてくれてありがとう」
「いいのよ、感謝の言葉なんて。私は感謝よりも、居場所が欲しいから。
だから草薙君、私にもっと居場所を作って」
夏帆の言葉に、僕は頷いた。そんな瞬間、店内に着物を着た女性が一人で入って来た。
(う、嘘だよな?)
一瞬目をこすって確認したけれど、それは嘘ではなかった。
そして着物女性は僕を見るなり、まっすぐに近づいてきた。




