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気がつくと秋になった。
僕が向かったのが、平見大学。
スーツ姿で夏休み中の大学に、卒業した僕が夏帆と一緒に向かっていたのがある研究室。
「失礼します」挨拶をしてはいると、狭い部屋が見えた。
中には、一人の老人教授が机に向かっていた。
「教授」
「草薙君、だね」
「はい、教授レポートを持ってきました」
僕は茶封筒に、レポートを持ってきた。眼鏡をかけた老人教授は、レポートを受け取った。
彼は『福沢教授』と呼ばれていた。『存在学会』の学会長でもあった。
この学会に、夏帆に勧められて僕は入っていた。
「ご苦労、草薙君のレポートはなかなか良かったよ。リアリティがあって」
「そうですか、ありがとうございます。事実を書きましたから」
「だが、残念ながら我が学会は思うような成果が出ておらぬな」
「こんなに崇高な学会なのに、もったいないわ」と夏帆。
分からなくはないが、ただ学会としては少し怪しすぎるかも。
「しかし、草薙君。会社の方は順調かな?」
「ええ、まあ」
「それはよかった、会社もまた数字でできている」
福沢先生は、穏やかな顔を見せていた。言う口調は、落ち着いているが顔が穏やかの初老男性。
先生を見ながら、僕はあるものを取り出した。
「それより、福沢先生。これを見てほしいのですが……」
僕は胸ポケットから一枚の切符を取り出した。ボロボロの切符は、弥生の日記から出てきた乗船きっぷ。
「ほう、なんだ?この切符は?」
「僕の妹が、いなくなった。最後に残された妹が、乗船した証なんだ」
弥生をずっと探していた。
僕だって、弥生がいなくなったことを諦めたわけじゃない。
だからこそ、弥生の痕跡を探していた。そして見つけてくれた。
福沢先生は、学会の教授であちこちに顔がきく人だ。
頼ることができるかもしれない、だからこそ僕は頼んだんだ。
「レポートに書いた通り、妹の数字が無くなろうとしている。
だけど、僕は妹を風化させてしまうわけにはいかない。そのために、どんなことだってする。
この切符は、弥生が好きな男の子に会いに行くために、何度も利用したフェリーの切符だ」
「ほう、興味がありますねぇ」
「福沢先生は、社会的にも顔がきくのだから調べてほしいんです」
僕の言葉に、穏やかな顔を見せた。
「それが君の数字を探す旅、かな?」
「ええ、そうです。僕はどうしても弥生に会いたいんです」
レポートに弥生のことを書いたから、福沢先生もよく知っていた。
夏帆は、研究所の本棚にある本を手に取っていた。
「シスコン、草薙君はシスコンだから」
「ああ、そうだとも」
「なるほど、近々は難しいが協力しよう」
福沢先生が、僕に手を差し出してきた。手を取って握手を交わした。
「ありがとうございます」
「草薙君のレポートも、期待しているよ。それまでこの学会を維持する必要があるな」
その時の福沢先生は、穏やかな笑顔だった。




