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夜に乗った大型客船は、翌日の朝に式部島についた。
スーツ姿の僕は、携帯の代わりに衛星電話をレンタルしていた。
式部島も、薪島村に属していた。
江戸時代に薪島と式部島は同じ一つの島だった。けど、大きな地震の影響で二つに分かれたらしい。
それ故に、二つの島はとても身近に感じた。フェリーですぐだし。
今日は晴れているので、少し離れた薪島が海越しに小さく見えた。
「ただいま」
式部島で高台にある大きな建物。
島一番の大きな家でもある僕と冬子さんの家、玄関に入った。
大きな木造の玄関で、立っていた僕。そこには奥から走って来た冬子さんがいた。
「駿君、早速だけどちょっと出かけてくるぞ」
あわただしく玄関を走って来た冬子さんの黒い服に、僕は驚いていた。
黒く結わえた髪と真っ黒な着物を着た冬子さんは、慌てた顔を見せていた。
「ど、どうしたんすか?」
「急に、葬式が入った。むかえの次郎さんがね、急に亡くなったのよ」
冬子さんの言葉に、僕は次郎さんの顔を思い出す。
近くに住んでいる、八十代の老人の顔が思い出せた。
知っている人が亡くなったら、切なさがこみ上げてきた。
「ええっ、次郎さんが……だってあそこ……」
「亡くなっていた、次郎さん。三日前に、発見されたの」
冬子さんは、急いで玄関で黒い草履をはいていた。
そのまま、僕とすれ違って小さなカバンを持っていそいそと出ていく。
「すまんな、駿。忙しいのに、呼び出しておいて。しかも留守にしてしまう。
後で詳しく話をするから、先に裏庭の方に行っていてくれないか。
弥生が、寂しがっているから」
その言葉を残して、冬子さんは急いで玄関を出て行った。
僕は少し辛い表情でカバンを置きに、自分の二階の部屋に歩いていった。
上がる階段から、僕は敷地の裏山がかすかに見えた。そこは緑が今も青々と残っていた。




