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小泉さんが戻って、数分後会議を開いた。
僕達『クサナギエージェント』は、僕を入れて三人の会社。
端末を開発する会社だけど、まだ大がかりの情報端末を作ることはできない。
そんな僕らの業務は、主に提携ソフト会社とのケアやハードの売り込み。
現在、僕達社員全員で会議を開いていた。
狭い会議室に、僕と夏帆と小泉さん。
僕と夏帆はスーツを着ているけれど、小泉さんだけなぜか白衣。
机を囲んで、三人で話していた。
「『DEXSY』公認マスコットですか」
「ええ、あの会社も無茶なことを言うな」
「何を言っている、それだけ期待されているんだぞ!」
白衣の小泉さんが、立ち上がった。手には、フィギュアを持っていたので説得力には欠けるが。
「いいか、マスコットは重要だ。今は『ゆるキャラ』なんていうものもある。
ご当地キャラは、ステータスの一つなんだ。これを見て見ろ」
そこに見えたのが、小さな女の子のフィギュア。
「はいはい、またですか」
「でも、必要だと思いますよ」
夏帆は、いつも通りよどんだ目で僕をまっすぐに見ていた。
「夏帆?」
「ハードも、今はいろいろ差別化を図るべきです。キャラクターは大事だと思います。
マーケットを考えても、成功例は多数ありますし」
「なるほど、じゃあいい案は?」
「ズバリ、ロリ」
「却下」小泉さんの言葉に僕はかぶせた。
「冗談はこれぐらいにして、真面目に話そうか?」
「小さい子、かわいい」夏帆の笑顔がちょっと怪しい。
「だろ、男も女もロリは万物共通なんだ。小さい子はみんな大好きだ」
小泉さんのロリ談義に、耳を傾ける夏帆。小泉さんのロリやアニメに対する情熱はすごいものがあった。
凄すぎて前に勤めていた会社をクビになったほどだ。
「小さい子か……」
「そう、小さい子はみんなに好かれる。子役ブームだしな」
「確かに、そうだけど」
「子役の市民権は得られているのに、どうしてロリの市民権は得られないのだ?
常日頃嫌悪感で、軽蔑の目で見られる。実に嘆き悲しいことだ」
「小泉さんみたいに、怪しくないからですよ。それじゃあ単なる変質者です」
あきれ顔で小泉さんを見ると、大事そうに女の子のフィギュアを机に置いて、僕に見せてきた。
「それでもだ、ロリは世界を変えていくんだ」
「はいはい、分かったから。とりあえず、マスコットキャラなんだけど……」
「いい案が無いわ」
「『ボカヌース、トゥエルブプリンセス』」
いきなり変な単語を口走る、小泉さん。そう言ってお気に入りのアニメ雑誌みたいなものを取り出した。
「な、なんですか?」
「『トゥエルブプリンセス』だよ、『トゥエルブプリンセス』」
「はい?」
しかし、小泉さんは興奮したのかアニメ雑誌で僕に力説してきた。
「いいか、これが『マウスプリンセス』、こっちが『カウプリンセス』。かわいいだろ」
『マウスプリンセス』とは小さな女の子らしい、『カウプリンセス』は巨乳なお姉さんのアニメの美少女。
どうやら干支を模した女の子が十二人、露出の高い格好で歌を歌っていた姿が見えた。
「だから、なんでそんな説明を?」
「マスコット、これがマスコットだ。従来一人という概念も」
「そのままそっくりというのも……」
「むうっ、マイナーキャラだからいいと思ったのだが……」しぶしぶアニメ雑誌を下げる小泉さん。
この人、妻や娘もいるのに家庭は大丈夫なのかと、心配さえしてしまう僕だった。
「でも、何もないところから作るのは……」
「確かに、難しいですね」
「何か、元になるものがあれば、ねえ」
肝心の話になると、夏帆も小泉さんも難しい顔を見せていた。
いきなり話をフッテも分からないだろうし。
そんな時、沈黙を破って携帯電話が鳴った。僕のだ。
「もしもし……」
「『クサナギエージェント』という会社はここか?」
それは、男の声にも聞こえる低い声だけど、聞き覚えがあった。
「はい、どちら様でしょう?」
「駿、忘れたとは言わせぬぞ」
その女性の声のしゃべり方で、僕はちゃんと思い出せた。
こんな話し方をする人間は、一人しかいない。かしこまった僕は、電話をとった。
「頼みがある、すぐに来てくれぬか?」
「あの仕事中だけど……」
「大事な話だ、駿。これは一大事なのだ」
その声は、とても緊迫感があった。




