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YAYOI(下)  作者: 葉月 優奈
五話:大七夕の奇跡
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小泉さんが戻って、数分後会議を開いた。

僕達『クサナギエージェント』は、僕を入れて三人の会社。

端末を開発する会社だけど、まだ大がかりの情報端末を作ることはできない。

そんな僕らの業務は、主に提携ソフト会社とのケアやハードの売り込み。

現在、僕達社員全員で会議を開いていた。


狭い会議室に、僕と夏帆と小泉さん。

僕と夏帆はスーツを着ているけれど、小泉さんだけなぜか白衣。

机を囲んで、三人で話していた。


「『DEXSY』公認マスコットですか」

「ええ、あの会社も無茶なことを言うな」

「何を言っている、それだけ期待されているんだぞ!」

白衣の小泉さんが、立ち上がった。手には、フィギュアを持っていたので説得力には欠けるが。


「いいか、マスコットは重要だ。今は『ゆるキャラ』なんていうものもある。

ご当地キャラは、ステータスの一つなんだ。これを見て見ろ」

そこに見えたのが、小さな女の子のフィギュア。


「はいはい、またですか」

「でも、必要だと思いますよ」

夏帆は、いつも通りよどんだ目で僕をまっすぐに見ていた。


「夏帆?」

「ハードも、今はいろいろ差別化を図るべきです。キャラクターは大事だと思います。

マーケットを考えても、成功例は多数ありますし」

「なるほど、じゃあいい案は?」

「ズバリ、ロリ」

「却下」小泉さんの言葉に僕はかぶせた。


「冗談はこれぐらいにして、真面目に話そうか?」

「小さい子、かわいい」夏帆の笑顔がちょっと怪しい。

「だろ、男も女もロリは万物共通なんだ。小さい子はみんな大好きだ」

小泉さんのロリ談義に、耳を傾ける夏帆。小泉さんのロリやアニメに対する情熱はすごいものがあった。

凄すぎて前に勤めていた会社をクビになったほどだ。


「小さい子か……」

「そう、小さい子はみんなに好かれる。子役ブームだしな」

「確かに、そうだけど」

「子役の市民権は得られているのに、どうしてロリの市民権は得られないのだ?

常日頃嫌悪感で、軽蔑の目で見られる。実に嘆き悲しいことだ」

「小泉さんみたいに、怪しくないからですよ。それじゃあ単なる変質者です」

あきれ顔で小泉さんを見ると、大事そうに女の子のフィギュアを机に置いて、僕に見せてきた。


「それでもだ、ロリは世界を変えていくんだ」

「はいはい、分かったから。とりあえず、マスコットキャラなんだけど……」

「いい案が無いわ」

「『ボカヌース、トゥエルブプリンセス』」

いきなり変な単語を口走る、小泉さん。そう言ってお気に入りのアニメ雑誌みたいなものを取り出した。


「な、なんですか?」

「『トゥエルブプリンセス』だよ、『トゥエルブプリンセス』」

「はい?」

しかし、小泉さんは興奮したのかアニメ雑誌で僕に力説してきた。


「いいか、これが『マウスプリンセス』、こっちが『カウプリンセス』。かわいいだろ」

『マウスプリンセス』とは小さな女の子らしい、『カウプリンセス』は巨乳なお姉さんのアニメの美少女。

どうやら干支を模した女の子が十二人、露出の高い格好で歌を歌っていた姿が見えた。


「だから、なんでそんな説明を?」

「マスコット、これがマスコットだ。従来一人という概念も」

「そのままそっくりというのも……」

「むうっ、マイナーキャラだからいいと思ったのだが……」しぶしぶアニメ雑誌を下げる小泉さん。

この人、妻や娘もいるのに家庭は大丈夫なのかと、心配さえしてしまう僕だった。


「でも、何もないところから作るのは……」

「確かに、難しいですね」

「何か、元になるものがあれば、ねえ」

肝心の話になると、夏帆も小泉さんも難しい顔を見せていた。


いきなり話をフッテも分からないだろうし。

そんな時、沈黙を破って携帯電話が鳴った。僕のだ。


「もしもし……」

「『クサナギエージェント』という会社はここか?」

それは、男の声にも聞こえる低い声だけど、聞き覚えがあった。


「はい、どちら様でしょう?」

「駿、忘れたとは言わせぬぞ」

その女性の声のしゃべり方で、僕はちゃんと思い出せた。

こんな話し方をする人間は、一人しかいない。かしこまった僕は、電話をとった。


「頼みがある、すぐに来てくれぬか?」

「あの仕事中だけど……」

「大事な話だ、駿。これは一大事なのだ」

その声は、とても緊迫感があった。


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