第2話 牢屋で過ごす時間
それで勇者として私は打倒魔王を目指しながら、自分の力をつけていった。
その世界にはびこる雑魚モンスターから退治していって、ちょっと強めのモンスター、災害級とかいう特別強い個体、四天王なんかを倒しながら修行をこなした。
そして最後にとても大変だったけど、魔王もきっちり倒したわ。
もちろんただの新米社会人だった私が、一人で全部倒したわけじゃない。
頼りになる魔法使いとか、剣士とか弓使いとか、パーティーの仲間と倒したのよ。
それで、あとくされなくなった後、その世界にさよならしたんだけど……。
なぜかまたの異世界召喚。
異世界召喚中の時間が、元の世界では流れていなかったのが幸いして、帰還した後、会社を首にならずに済んだのに。
こっちでの一年はあっちでの一日みたいね。
なんとか体調不良でごまかせてよかったわほんと。
まあ、その影響で死ぬほど吐き気に襲われてトイレから丸一日でられなかった可哀想な新人って、先輩から不名誉な覚えられ方したけど。
だけどどうしてまた異世界召喚なの!?
たった10日しかたっていないんだけど、前回から!!
召喚された直後、ふてくされた顔の私は、周辺を観察する。
足元には既視感のある魔法陣。
一度目にみたものと同じだ。
集まった人たちは……どうかしら。
私を再召喚した人たちには、見覚えがないわね。
1度目に私を召喚した人たちじゃないのかしら。
とりあえずどういう事か事情を尋ねようとして口を開くんだけど、言葉が出ることはなかった。
「勇者の身動きを封じろ!」
なんて誰かが言って、何か魔法を使われたのか私の体が動かなくなった。
黒い靄みたいなのが体をまとわりついて、私は指一本動かせない。
ミノムシみたいになって床を転がるしかない。
「大事な道具だ。専用の牢屋に連れていけ。くれぐれも魔法をゆるめるなよ」
ちょっと、どういうこと!!
あまりにも失礼すぎるんじゃない!?
リーダーらしき声のでかい人がそういうと、どこかにいた兵士らしき人達がやってきて、私を担ぎ上げる。
乙女を俵担ぎしないでちょうだい!
肩がお腹に食い込む!
勝手に召喚しておいて、何も言わせず身動きを封じるなんてどういうことなのよ!?
抗議の声を出したかったけど、無理だった。
私は、どこかの牢屋に入れられ、そのまま放置されたからだ。
最初の召喚ではこんな扱いはなかった。
部屋の中には閉じこもっていたけど、周りの人は丁寧に対応してくれた。
牢屋に入れられるのとは雲泥の差だわ。
あの時は、食事だって用意してもらえたし、部屋の中にはお風呂もあった。
備え付けの家具には着替えがあり、何らかの魔法がかかっているのか部屋の気温はいつも快適な気温に保たれていたもの。
だというのに、ここでは食事は一日に一度の水と固くなったパン。
お風呂は当然入れないし、着替えなんてできるわけがない。
やたら寒くて、後で牢屋の中に放りこまれたボロボロの毛布一枚でくるまっていても、体が震えてしまう。
一体どうしてこんな目にあわなくちゃいけないのよ。
元の世界じゃさえないただの社会人だけど、この世界では一応世界を救った勇者なのよ。
そんな風に文句を言いながらも、牢屋の中で過ごす事一週間。
ローブを着た人物がやってきて「準備が整ったから出ろ」と言った。
ここにいてもしょうがないから出るけど、その準備は何の準備なの?
物凄く嫌な予感がするわね。




