第1話 なぜか2度目の
ーー愛しいあの人にもう一度会いたい
ーーもしかしたら、憧れに過ぎない感情かもしれない。だけれど、一度だけでもいいから彼女に会いたい。
ーーけれどそれはあってはならない事だ。
ーーなぜなら、彼女とは生きる世界が違うのだから。
異世界召喚された。
ふつうに生活していたら。
ベッドで起きて、会社に行かなくちゃと思っていたら、なぜか知らない部屋にいた私の気持ち分かる?
魔法陣の上に立っていて、多くの人から期待のこもった眼差しを向けられた私の気持ち。
分からないでしょうね。
しかも、二度目よこれ。
まったく、どうして二度も異世界に召喚されなくちゃいけないのよ。
世界を救ってほしい。
そう言われて異世界に召喚された1度目。
私はまだ社会人1年目だった。
しかも勤め先に出社するようになってからたった3日目。
異世界召喚にうきうきする気持ちなんてこれっぽっちもないわよ。
世間の事なんて何も知らない子供だったならまだしも。
私は20代のいい大人なんだもの。
現実世界での将来とか、どうするのって感じで、異世界の人たちに対する同情心なんてこれっぽっちも湧かなかったわ。
だから、異世界召喚をした人たちの言葉なんて、右から左。
魔王がどうのとか。
勇者はあなたとか、この世界の希望ですとか言われたけれど、知らない他人の事情なんてそんなもの。
薄情と言われようが、冷たいと言われようが、私は現実を見て生きていかなくちゃいけない。
だから、最初はいい迷惑だと思ったわ。
どこぞの大きな施設の中。用意されたお客さん用の部屋に引きこもっていたの。
けれどそんな私を気に掛けてくれたのは、どこかの国の王子様。
育児放棄された可哀想な王子様。
いくら冷たい現実主義な私といっても、血も涙もないってほどじゃないし、そんな子供を相手にして、酷い態度なんてとれない。
私はだんだんとその王子様と交流するようになった。
これが打算まみれの大人だったらまだ話は違うんでしょうけれど、王子様はまだ子供でぷくぷくほっぺの可愛いひよこだったもの。
それに、元の世界に弟がいたからそのせいもあるのかもね。
放っておけなかったのよ。
だんだん私は、王子様の話し相手兼遊び相手をするようになった。
それどころか王子様が、誰にも食事を用意してもらえないと聞いては、ご飯を作ってあげたり。
誰もお世話してくれないし、着替えの服もないという話を聞いては、ちくちくと布を縫って服を作ってあげたりもした。
他の大人にこの状況を伝えもしたんだけど、何せ世界の危機。
皆、余裕がなくて、王子様の相手なんてしてられないって感じだったわね。
私が召喚されたところはどこかの研究施設で、王子様がいるべき本来のお城とは離れている。
そういった事情も関係しているのかも。
そんなこんなな交流が続けば、多少はその世界に情が湧くというもの。
親しくなった王子様が死なないように出来る事くらいはやろうと決心して、閉じこもっていた部屋から出るようになった。
私が勇者?本当なの?
って思ってたけど、異世界召喚の特別な力なのか、元の世界にいたときよりも体は頑丈になっていたし、素早く動けた。
それに、身体強化の魔法をかければ、何も鍛えていない状態でも大人のゾウくらいは簡単に持ち上げられたのよね。
そんな私は、そこから色々な世界の状況を知る事になるのよ。
壊れた町や村、怪我をした兵士達、すさんだ都市の雰囲気。
魔王討伐の旅をする間に嫌でも見る事になったわ。
それで、本当にこの世界の人たちは生きるのにギリギリなんだなって思った。
巻き込まれていい迷惑だって思うのは変わらないけれど、この世界の人たちだって好きで異世界の人に迷惑をかけたいわけじゃないはず。
誰かがやらなくちゃいけないというのなら、私がやらなくちゃって思ったわ。




