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公爵家の転生侍女ですが、どうやら私はヤンデレ悪役令嬢に娶られて王妃となるようです……なんて?  作者: 禍成 黒いの


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第60話 姫の茨僕

 「うーん、なんか釈然としないけどまあいいや!おかしなおかしの家《ゼルトザーム・ヘクセンハウス》最大サイズでてんかーい!」

 なんだか、やや投げやりな態度で寓話霊装《メルヒェン》を起動するベルさん。

 なお、《《穴》》を中心にドでかいお菓子の家が建立される様子を見てティアリスさんは額に手を当てて俯き、アルドラさんは両手を天に向けて肩をすくめました。

 ちーちゃん?

 ちーちゃんは……。

 「でっかいね!おかーさん!」

 超でっけーお菓子の家にお目々キラッキラで喜んでますよ、はい。

 あと、だからまだおかあさんじゃないですって。


 そして、対する肆《よん》の魔王は……。

 ずももももという音に一度振り返り、戻り、そして、教科書のように綺麗な二度見をキメました。

 ふっふっふ、思いもよらぬ手段で帰還ルートを塞がれて動揺するのはわかりますが、隙だらけですよ!魔王さん!

 うおりゃー!『匣』からちょっぱってきた新寓話霊装(メルヒェン)をくらえー!


 「隙ありぃ!目醒めなさい姫の茨僕《ドールレースヒェン・ファミリアー》!かーらーのーぉぉぉ!烏龍盤打《うりゅうばんだ》ぁ!」

 気流制御で背後から風を受け高速で接近しながら、100時間連続で寝たことが無いと使用できない「いばら姫」をモチーフとした寓話霊装《メルヒェン》を起動します。

 効果は……。

 私の背後に《《展開》》した大量の茨が両腕を形成。

 そしてそのまま私の腕の動きをトレースし、帰り道を塞がれて呆然とする肆《よん》の魔王の顔面へしならせた腕による強烈な打撃が炸裂します。

 高密度に圧縮された茨の腕は鈍器も同然。

 そんなものを振り回されて顎をかちあげられれば、例え魔王といえどノーダメージでは居られません。


 次いで、怯んだところに|陽鞭手《腕を鞭の様にしならせた叩きつけ》を繰り出し流れるような連続攻撃をキめてやります。

 ふっふっふ、人間相手だと全力で殴れませんし、ただの魔蝕性侵略体(クリーチャー)相手だと接近する前に終わってしまって振るう機会の無かった劈掛拳《ひかけん》を思う存分振るえてちょっと気持ちがいいです。

 さあ、皆さんも今のうちに全力で色んなものをぶっぱしちゃってくだ……。

 ナズェミテルダケナンディス!?


 「……あっ!め、メリーがあまりにもキレイに技を繰り出すのに見とれてましたの。今からわたくしも参戦しますの!」

 「違うよねルテ。相手が魔王だったとしても、ちょっとこう、うわ外道みたいなメリーさんの行動にびっくりしてたんだよね?」

 ……えっ?

 「ふむ、流石でしてよ。その容赦の無さ、私は結構好みかしら」

 「ティア様、ゲテモノ大好きですもんね」

 げ、ゲテモノ!?

 「おかーさんかっこいいよ!」

 うう、私の味方はちーちゃんだけですか……。

 というか、この程度のやり取りは一緒にゲームするとき散々見せてますよねルテ!?


 と、私が一瞬落ち込んでる隙に魔王が体勢を立て直しました。

 んもー!このまま全員でボコって何の見せ場も無いまま撃破まで持っていく算段だったんですが、世の中うまく行かないものですね。

 ただ、体勢を立て直した魔王の行動は予測とはちょっと違いました。


 こちらに対して猛攻を仕掛けてくるもの……だと思っていた魔王は、体表にある数カ所の水晶体及び両腕に巨大な魔力塊を創り、お得用お菓子の家へとぶん投げました。

 ああ、帰宅ルートを解放したかったんですね……。

 ただ残念。

 爆炎が渦巻き、驚異的な破壊力の魔法を受けたはずのメガ盛りお菓子の家には傷一つついていません。

 そりゃまあ、魔法に対して完全耐性を持つお菓子の家ですから?肆の魔王(おまえごとき)に壊せるものではないですよ?


 そして、そんな大規模な攻撃を行った直後です。

 普通に考えて、全力攻撃なんてしたら隙が出来ないはずが無いんですよ。

 そして、そんな隙を(二回も)見逃すようなメンバーはここには居ないんですよ!

 ……ちーちゃん以外!


 「80%《アハツィッヒ・プロツェント》、開花《ブリューテ》!お喰らいあそばせ!極光一刃《ファンケン・シュナイダー・グレンツェ》!」

 下手な水着よりも露出度の高くなったルテが右の巨腕をルテの光刃が切り飛ばし……。

 「気づいてまして?日、落ちてますのよ。ガラスの靴《アッシェンプッツェル・マギア》|ダンスの準備を致しましょう《フルコンタクト》!」

 赤く光の尾を引きながらカっ飛ぶ吸血姫が水晶体《砲台》を2箇所ほど破壊し。

 「では、私は足を。影よ、飲み込め!」

 悪魔の従者が足を影に飲ませます。


 しかし、それでも……。

 「繝薙ャ繧ー縺ー繝シ繝ウ」

 斃れないのが、魔王というもの。

 先ほど、《《穴》》を塞いだお菓子屋敷に向けて放った大火力を今度はこちらへと投じてきます。

 片腕を無くし、水晶体も減り、しかしそれでも。

 「あれは不味いです!直撃どころか余波でも人が死にます!」

 「待って!?お菓子の家はもう出せないよ!?」

 魔王は、魔王なのです。


 両手と残り4箇所の水晶体。

 そこから放たれた漆黒の魔力はルテの光線の様に空を引き裂き……。

 一拍の間を置き、それぞれが獲物に向けて振り下ろされました。

 自分で教えてルテにやらせといてアレなんですけど……。

 レーザー出しっぱなしで薙ぎ払うのはずるいでしょう!?

 

 ルテは、まあ、問題ありません。

 8割も布面積を減らした生き恥ドレスで楽しそうに漆黒の光線を中心に弧を描きながら突っ込んでいます。

 吸血姫さんも、まあなんとかなりそうです。

 やや軌道が直線気味で制御が難しいのか回避には苦労してそうですが、そもそも当たりどころが余程悪くない限りティアリスさんは再生能力をデフォで持ってますからね。

 ……吸血鬼って、ずるいですね。

 ああ、アルドラさん?

 そもそも影の中に潜ってターゲット選択前に対象外扱いですよ。

 ……で、その分私とベルさんとちーちゃんへの攻撃密度が濃くなるんですけどね!


 「わっ!」

 ベルさんは、攻撃が自分に向かってると判断すると即座に盾の影に隠れました。

 まだ戦闘慣れしてませんけど、ナイス判断です。

 んー、私はどうしましょうか。

 頑張れば、地上でも回避出来なくも無いんですがその後の動きを考えても効率は良くないですし……。

 「おかーさん!あっ!」

 あ、ちーちゃんが私を心配して走ってきましたねって、走って!?

 「足元を見てー!お願いだからー!」

 

 案の定、足元の出っ張りに躓いて倒れ込んできたちーちゃんを優しくキャッチします。

 んが、しかし。

 ばりっと、ちーちゃんが落としてしまったビスケットの盾が砕け散りました。

 あ、これ地味に不味いやつ。

 ……と思いましたが、まだクレープのマントが残ってますね!

 「ちょいと失礼」

 「わっ!」

 小柄なち~ちゃんを抱き上げて、マントを手に取り盾にします。

 取り回しが良いとは言えませんが、ちーちゃんシールドで私の防御面も完璧になりましたね!

 

 しっかし、巨体だけあってどう攻撃するのが最適解なのかわかりづらいのが難点ですね肆《よん》の魔王。

 ここはト書きさんに……。

 いえ、私だけわかっても意味がないのでここは画像を表示できる方で行きましょう。

 「全てを識る鏡《シュピーゲル・デア・ヴュンシェ》!肆《よん》の魔王に有効な攻撃地点を表示して!」

 

 魔法の鏡に表示されたのは、いい感じにゆるく簡略化された肆《よん》の魔王の画像と弱点。

 まあ、わかりやすく砲台である水晶体と、あと顔面を潰せって描いてありますね!

 おーけーおーけー、どこを攻撃すれば有効かわからなかったさっきまでよりちょっと気が楽になりました。

 「みなさん、顔面を集中です!余裕があったら水晶体も壊しちゃってください!」

 

 私の声が届いた皆の動きが変わります。

 ティアリスさんは、あの独特な鋭角飛行で水晶体を。

 ルテは、顔面に向けて攻撃を開始。

 ……最近、ルテは重力制御を飛行にしか使えてないのでもうちょっと訓練が必要ですかね。

 さっきの光線も空間を曲げて防御とか出来たほうが良いはずですし。

 で、アルドラさんは地味に地味に影の爪やら何やらで足元を妨害してくれてます。

 ……いやその、多分あの巨体でお菓子の家に突進とかされるとだいぶめんどくさかったんでとても助かってはいるのですが、そんな地味な役割で満足できてます?


 さて、では私も攻撃に参加しましょう。

 皆の消費魔力から考えてもここが最終局面。

 気合を入れてまいりましょう!

 

 「私も、がんばる!」

 ちーちゃんもふんすふんすしてます。

 ……あ、そっか。

 まだ蜥蜴丸の有効射程外だったので攻撃できてませんもんね。

 あの巨体相手に刀1本でどれだけ効果があるのかわかりませんが、オートでダメージを稼いでくれる装備は大体強いので大丈夫でしょう!


 「結局私は見てるだけかぁ。攻撃手段、ほしいなぁ」

 いや、そもそもこの作戦、ベルさんが居ないと成り立ってないんですが!?

 ただまあ、攻撃手段が欲しいならこの戦いが終わったら中国拳法とか習ってみます?

 おっと、死亡フラグになりそうでした!

 今後を考えるのは魔王を倒し終わってから、ですね!


☆★☆★☆★☆


図体がデカいだけあって結構粘ります。

あと、シンデレラの霊装でガラスの靴をフルコンタクトしてますがメイドスキンに喜んで思わず書いたわけではあり……あります。


ということで、メリーさんの新装備発表回でした。

誰だ、隠者の紫とか言ったやつ!

……概ね正しいので何も言えませぬ。

遠くのものを引き寄せたり、何かに引っ掛けて移動したり、汎用性が高そうでいいですよね。

今回みたいに人体に連動する装備としても扱えます。

当然、鞭にも出来るので綺麗な薔薇にはトゲがあります。


んでは、次回で魔王をボッコボコにしましょう。

更新予定は10月12日20時。

どうかよろしくお願いします。


次の更新が楽しみだと思われた方は、良いねコメント★拡散等で応援していただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。




最新話までお読みいただき、感謝致します。


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