第56話 私も戦いたい!
「はい、そんな感じで準備が足りないので漆の魔王はスルーする方向で行きましょう」
「あの魔王の支配領域、メリーさんの天敵みたいな性質をしておりますものね。仕方ないのではなくて」
「あー、言われてみれば確かに。……え?これほんとどうやって突破するの?」
「まあ、メリーが攻略を断念したのですから今から突破方法を議論してもしょうがないと思いますの。捌の魔王はどうしましょう?」
メリーさん達が、魔王をどうやって倒そうか話し合ってる。
参加メンバーは、メリーさんと、リシェルテさんと、ベルさんと、よく知らない2人。
私は、それを見てるだけ。
魔王と戦うメンバーの話なのに、名前が上がることもないし、そもそも私がここで見てることすら皆忘れてるかもしれない。
……悔しい。私だって、おかあさんの役に立ちたいのに。
あっ、またメリーさんの事をおかあさんだと認識しちゃってた。
……しょうがないよね、あれだけ優しくしてくれるんだもん。
私の、140年ずっと足りてなかったおかあさんに甘えたいって気持ちがおかしくなっちゃっても、やっぱりしょうがないと思う。
メリーさんが言うには、全部の魔王が1回ずつ出てくるから倒せる魔王は倒しておきたいって話みたい。
だけど、聞こえてくる話からするにどの魔王も撃破するにもなにかしら足りないって言ってる。
その中には、「盾役を務められる人が足りない」って話もあった。
……私じゃ、ダメなのかな?
私なら絶対に死なないし、酷い怪我をしちゃっても平気だし、見た目がかわいそうっていうならベルさんに治してもらえば良いし……。
私のために一生懸命考えてくれたメリーさんのために、私にすっごく優しくしてくれた、何度も何度も褒めて撫でて抱きしめてくれたメリーさんのために、戦っちゃ、ダメかな?
……聞いてみたいけど、ダメって言われた時に絶対泣いて迷惑かけちゃいそうだから、聞けない。
私だって、子供だけど子供じゃないもん。
頑張って色々考えてる人達に迷惑はかけたくない。
でも、力になりたい……。
どうしたらいいんだろう?
身体をもっと動かせるようになって、魔力の制御も出来るようになって、強くなる……。
うん、そうすれば多分戦力として数えてくれるようになる……。
けど、どれだけ先のことになるかわからない。
少なくとも、今話してる連続で毎月現れる魔王との戦いには連れて行ってもらえなさそう。
黙って隠れて着いていく?
……無理だよね。
移動は車だし、メリーさん達は空を飛べるから一緒の戦場に間に合わない。
敵はどうせ穴から出てくるんだから、穴の前にずっと居ればいいかもだけれど、そうすると私が居なくなったって心配させちゃう……と思う。
やっぱり、見てることしか出来ないのかな?
「で、ちーちゃんですが……」
諦めかけてたら、メリーさんが私の名前を口に出した!
お手伝い、出来るのかな?
「他の魔王が討伐できてない状態で、肆の魔王が現れた場合だけは、一緒に戦ってもらうことになると思います」
……!?
やた!私も一緒に戦えるんだ!
「……どうしても、囮としての役割が強いので本人に確認してからになりますが」
「行くよ!」
苦渋の決断……っぽい感じで顔を歪めるメリーさんに向けて、元気よく声を上げた。
「だって、メリーさんは私をちゃんと私として扱ってくれたから。だから、恩返しになるなら囮だって生贄だって、盾にだってなるよ!」
それに、私知ってるよ?
フィアちゃんが今作ってるくらいなーめるへん?って、私のための道具なんだよね?
私のために、魔王を倒そうとしてくれてるんだよね?
だったら、私も戦わなくちゃいけないと思うし。
「……相当、痛い思いをしますよ?」
「平気だよ。今までだってそうだったもん」
「……私達が失敗して撤退が必要になったら、大怪我をしていても見捨てて行くことになりますよ?」
「でも、私は死なないから平気だよ」
「……お願いする役目は、サンドバッグに近いんですよ?」
「だけど、そうすれば皆が、メリーさんが安全に戦えるんだよね?」
だったら、私は何も悩む必要無いもん。
「……じゃあ、その時はお願いしますね」
やった!私も役に立てる時が来る!
「じゃあ、そのときに備えて訓練の強度もあげておきましょうか」
……え?
「大丈夫大丈夫。私のリハビリも進みましたし、魔力操作の練習をしながら私と同じ動作をしてほしいだけですよ」
「メリーさんを真似るだけ?じゃあやる!」
あれ?どうしてリシェルテさまは目を押さえて上を向いてるの?
「……メリーの動作を真似るだけといいますけれど、アレ、何時間も柔軟したり肩の可動域を広げる訓練とか言って凄い姿勢取らされたりしますの。正直、かなり辛いんですのよ?……すくなくとも、わたしくはもうあんまり付き合いたくありませんの」
でも、メリーさんがきびきびっ!って動いてるイメージ無いからそんなに大変な訓練とかはしないんじゃないかなぁって思う。
見た感じ、筋肉だってそんなに無いし……。
「ルテは八極の方が好きそうでしたからね。私は劈掛拳に比重を置いてるので関節の可動域がとても重要なんですよ」
はっきょくと、ひかけん……?
あ、中国拳法にあったよね確か。
にのうちなんとかさんって有名な人が使ってた奴だと思う。
んー、メリーさんが拳法……。
あんまりイメージわかないかも。
「えと、じゃあとりあえず、肆の魔王が出たら私も連れて行ってくれるんだよね?……他の魔王の時は?」
「……一応、壱と弐の魔王の時には居てくれた方が助かりますけど、これに関してもただの目標分散以外に意味は無いので痛い思いをするだけですよ?まあ、慣れてるって言うんでしょうけど」
「うん、慣れてる!」
少なくとも、痛い思いぐらいなら皆が戦ってるのを指を咥えて見てることしか出来ない歯がゆさよりは、受け入れられる気がする。
「……じゃあ、壱と弐の魔王の時も一応一緒に来てもらう事にしますね?」
「私は、両手をあげて賛成……とは言えないけど、見てるだけが辛いのも知ってるから反対も出来ない……かなぁ」
「本人が来たがってるんですもの。異論はありませんの」
やた!残り6体の魔王の半分は私も一緒に戦えるんだって!
うん……。
できるだけがんばって避けて、そんなに怪我しなくても勝てるように……。
がんばろう!
☆★☆★☆★☆
肆の魔王登場フラグ回。
ちーちゃん、わかりやすく母性に弱い。
ちなみに、ちーちゃんベストエンドの電波を誰も受信できなかったのは「他のルートのヒロインが必須のシナリオとかダメじゃね?」とト書きさんが電波を送らなかったから。
次回は10月3日20時更新の予定です。
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