第53話 仕様の変更を求めます!
「いや、あのね?一応、どんな寓話霊装でもみんなで共有出来たほうがいいなって思ってね?じゃあ、『何か』が無限に出てきて分け合う伝承をベースにしないとって思って、探して、見つけたのがコレでね?で、仕様がこんな感じに……」
ドゥゲザーの姿勢から顔だけあげてどうしてそうなったのかを説明するフィアネイアさんですが……。
いやまあ、理由の方はなんとなくわかってるんですよねぇ。
多分、「盛りすぎた」んだと思います。
とはいえ、一応どういうお話をベースに寓話兵装に仕立ててるのかは興味があるので確認してみましょう。
えっと、なになに?
『無限に湧き出る食料を皆で分け合ったという伝承があるケルト神話の最上神・ダグザの大釜をベースに、分け合うという行為だけを抽出・増幅し、平時であれば元の効果の分散付与を、非常時であれば魔力を注入することで時間の制限はあるが、分散なしで兵装効果の完全共有を戦場全体で可能にする新世代寓話兵装。仮称幸せな王妃の大釜』
……つまり、戦闘時に《《これ》》の所持者が魔力を注ぎ込んで最大駆動させることでちーちゃんの比丘尼祝詞そのままの効果を任意の人数に同時に適用出来るようにする寓話兵装……ということですか?
いやあの、すごいですよ?
ぶっちゃけ、こんなものがあればベルさんの治癒魔法での治癒が難しい私以外の戦闘参加メンバー……というか、アトランティス貴族全員が事実上無限にゾンビアタックが可能な不死身の戦士になれるって事ですからね!?
ただその……。
「念のため確認しますが。コレを実現するのに必要な素材は、魔王何体分ですか?」
「……よん?」
よん?よんって、四です?
「……通るかこんなもーん!完成した時点で残りの魔王2体になっとるやんけー!」
そもそもですよ!?
神話モチーフの装備って寓話霊装にすら数えるほどしか存在しないんですよ!?
それを寓話兵装で?
そりゃ、必要な素材もそんな感じになりますよ!
「でも、でもね?効果はすごくない!?計算上、これ素材が揃えば間違いなく出来るんだよ!?そしたら、誰も死なない戦場の完成!私のとっておき、ガラドリエルMarkIIIを戦場に投入する必要さえなくなるの!」
「その頃には戦場自体が無くなってるって話ですよ!」
……いや、あれ?無くなってますよね?
魔王を全滅させたら穴が消えてハッピーエンドでいいんですよね?
【それはどうかなー】
……あ、なんかダメっぽい。
だとしたら、将来これを作ってもらう前提で現状のまま魔王軍との戦闘を続けるべきなんでしょうか?
って、違いますよね!
そもそも今回この寓話兵装を創ってもらってる理由は、ちーちゃんの比丘尼祝詞の効果を弱めて、「ついでに」弱まった分の効果を分け合ったりしてちーちゃんがちゃんと成長出来るように、最終的には老いて、《《人間として》》命を終えられるようにするためなんですよ!
戦場の全員が死ななくなるチート寓話兵装とかは要求してないんですよ!
ということは!
「それ、とりあえず効果の共有範囲を……そうですね、5~6人ぐらいに絞ったらどれだけ材料減らせそうです?」
多分、これが正解です!
……で、今頃気がついたんですが。
さっきガラドリエルMarkIIIって言いませんでした?
あ、MarkⅢか、そうかⅢか。Ⅲならまだドローンに毛が生えた程度の奴でしたよね確か。
いや、海老蟹さんの書いたシナリオで最終的に出てくるガラドリエルMarkⅦがなんかこう、戦闘用リモートコントロール魔導ロボみたいな?そんな感じの奴だったのでどっから制作費用調達してたんですか!?って一瞬びっくりしただけです。
……いやでも、アレ強かったし、今制作してもらってるちーちゃんの解呪用装備が創り終わっても支援は続けたほうがいいんですかね?
「んー、それだけ弱くするなら、えっと、あと魔王1体分あれば?多分?あと、足が痺れてきたんだけど立ち上がっていい?」
「いや、誰も座ってろなんて言ってないんですが……」
しかし、ふむ。
魔王をあと1体倒せば魔王討伐の選抜メンバーは私を除いて不死身モードで戦えるようになると……。
これは、やってみる価値がありますね!
というかですね?
「まあ、倒せる魔王が出たら倒しますので、開発は気長に待ってもらう感じになると思うんですけど、大丈夫です?」
はい、どうせ対処出来そうな魔王が出たら倒すんですから、あと1体分ぐらいなら深く考えなくていいんですよ。
それに、ちーちゃんの不老不死問題も喫緊の問題ってわけでもないですし。
……普通の不老不死ならまあ、本人の希望次第で所持しておくのはアリだとは思うんですが、情緒が12歳から育ってないちーちゃんがずっとそのままなのはいくらなんでも可哀想だと思うので。
「まあ、そりゃそうよね。魔王が出てこなければ話にならないんだし、出てきても現状で倒せなければもっとお話にならない。……って事はつまり、次の魔王が倒されるまでの間、私はあの大量の資金を使って私の好きな研究をしても良いってことよね!?キャッホー!」
キャッホーじゃないんですよこの駄犬!
……と一瞬思いましたが、よく考えればなんだかんだ結果的に魔法科学の進歩には繋がるのでいいのかな?と思い直しました。
「ええ?もしかして、私今後《《これ》》のお守りをさせられることになるのかしら?」
「ティア様、私は面白いのでオッケーだと思います」
あ、はい、その、そちらに苦労は掛けますが、どうかよろしくお願いします。
しっかし、魔王ですか……。
先月に陸の魔王を倒して、今月で参の魔王を撃退してるのでしばらくは出てこないと思うんですよねぇ。
というか、2ヶ月連続で魔王が出てくること自体が異常事態ですし。
あ、でも前回の2ヶ月連続の時も伍の魔王を倒した直後だったんでしたっけ?
じゃあ、逆に魔王を倒すと翌月は確定魔王チャンスとかなのかもしれませんね。
……いや、なんかヤな予感がします。
「セイラさんセイラさん、ちょと確認なんですが勇者王が伍の魔王を倒した後、翌月にもう一度別の魔王が出たって話は知ってるんですが、その後数ヶ月の出現パターンとかってデータありましたっけ?」
「ふむ、しばしお待ちを……。おや?不自然にその後《《6ヶ月分》》のデータがありませんね……」
【お、よく気づいたね】
おいいいい!
……もしかしてこれ、誰かが倒されたら全員一度顔見に来る的な、そういう奴だったりします?
【のーこめ】
それは答えてるのと一緒なんですよ!
ということは、今後5ヶ月連続ボスラッシュってことじゃないですか!
ちょっ!?ちーちゃん鍛える時間は!?魔王に合わせて最適なパーティーを組む時間は!?って、しかもその間にあのシナリオの中にあった各種トンチキイベントがやってくるんですよね!?
あ、やばい、あかんやつやこれ……。
「メリー、どうしましたの?顔色がよろしくないですの」
「いえちょっと、とても良くない予感がしてですね……」
「おかーさん、大丈夫?」
「だいじょっ、ちーちゃん?呼び方間違ってますよ?」
「あっ!」
うむ、真っ赤になって顔を両手で隠す黒髪狐っ娘、いいですね……。
しかし、これどうしましょうか……。
いや、前向きに考えましょう!これで、どれかの魔王を倒せばなんちゃらの釜とやらという寓話兵装が作れるんです。
素材の方から葱が鴨を背負ってきたと考えましょう!
大丈夫!私が大体の能力を知ってる事で、撃破は無理でも撃退なら大体なんとかなりますし!
まあ、それはそうと……。
「ルテ、ちょっと色々持ち出したいので一緒に『匣』を開きに行きませんか?」
「ふむ?あれって、何度も開けるものでしたの?」
「ものでしたの」
とりあえず、どの魔王が来ても対処出来るようにあれこれ持ち出さないといけませんね!
あと、ベルさん用の寓話霊装とかも!
☆★☆★☆★☆
ということで、大体が「魔王戦に装備していく装備を作るには魔王を倒さなければならない」というモンハンジレンマなあれですね。
とはいえ、4体分使った贅沢装備は流石に許されませんでした。
で、あとはボスラッシュ予告ですね。
毎月出てくる魔王に対して準備期間1ヶ月でメンバーと装備を揃えろ!
……まあ、大体は不可能でしょう。
あと、イレギュラーは起こるものでしてー。
んでは次回「おかしなおかしの家」
最近影の薄かったベルさんにようやく出番が来そうです。
更新予定は9月26日20時。
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