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公爵家の転生侍女ですが、どうやら私はヤンデレ悪役令嬢に娶られて王妃となるようです……なんて?  作者: 禍成 黒いの


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第49話 お姫さま、お部屋くちゃーい!

 えー、ノイ・アトランティスの法律では簒奪により死去した前王の親類は新王の証人を受けて再度戦闘能力の評価を行い、それに見合った爵位へ割り振られる……という事になってるみたいです。さっき資料で読みました。

 簒奪って表現が穏当ではない感じがしますが、簒奪という言葉の意味は王位継承権の無いものが武力やら政治力やらで王位を奪うことなので間違っちゃぁ居ないのがこう、絶妙に暴力的ですよね。


 で、ですね?

 「セイラさん、前王ナレーシの親類って今どうなってます?」

 と、私とルテの周りで一番頼りになる有能メイドさんに確認した結果。

 「調べてまいりました。結論から先に申し上げますと、娘一人を除いて全員が鬼籍に入っておられます。詳細はこちらに」

 ありがたいですね、どういう状況なのか全員の記録を持ってきてくれました。

 「あ、メリー、わたくしも読みますの!」

 「……一緒に読むのは良いんですけどね?ルテ?夏だからってシャツとパンツだけでうろつくのはどうかと思いますよ?」

 「だって、暑いんですの……」

 ……まあ、実際今年の欧州は記録的な熱波に襲われているので多少は仕方ないかな、と思わないでもないですが。

 「でも、私の周辺の空間は気温23度前後で保ってそれなりに風が吹くようにしてありますよね?それでも暑いですか?」

 「……ホントは、服が煩わしいだけですの。ホントはシャツも脱ぎたいのですけど、メリーの好みに合わせましたの!」

 ああもう!彼シャツならぬ嫁シャツとか大好物ですよこんちきしょう!

 

 「で、えっと……。うわ、存在楔《ザイン・ケイル》破壊戦での死亡多すぎ」

 「よくもまあ、これでどうして堂々と王位に座ってられたのか理解できませんの!」

 これ、海老蟹さんちの娘さんも閲兵式《デビュタント》を終えてたら間違いなく戦場に駆り出されて死んでる奴ですよ。

 んでんで、その肝心の元王女様の現状なんですが……。

 『指示を受けていない事を名目に、王城の一室にて軟禁中』

 ……うーんこの。

 

 「前王に対する恨みの結果……って感じですかね?」

 「おそらくは。意図的に議会や関係者がこちらに情報を流さなかった結果だと思われます。……舐められてますね」

 「対応は任せます。……とりあえず、こちらとしてはその元王女様に会いに行って色々確認したいので予定を調整してもらえますか?あ、その時に同行してもらうのでシュネーファル侯爵を呼んでおいてください」

 「……一応確認いたしますが、先日帰国したハンス様の方ですか?」

 「いや、娘さんの方でお願いします」

 「かしこまりました」

 ……前侯爵、帰国してたんですね。

 現状、シュネーファル侯爵ってどっちになってるんでしょう?

 私、気になります!


☆


 とまあ、そんな感じで案内役のセイラさんを含めて吸血姫主従と私とルテのメンバーで元お姫さまの状態を確認しに行く日がやってきました。

 前王が相当恨みをかってたのか、こうやって状況を確認しに行くだけでそれなりに妨害がありましたが、私を18歳の小娘と舐め腐ってる感じの奴だったので完全スルーで押し切りました。

 こちとら前世合わせてあらふぃ……それなりの年齢なんじゃい!「王妃様にお見せするには少々見苦しく」なんて雑な言い訳で止まるわけ無いでしょうが!

 というか、そもそもアトランティス王族は普通に城下町のレストランやら食堂やらへ食事に出かけますからね?

 そんな立場の人間に見せて「見苦しい」環境なんて逆に見ないわけには行かないじゃないですか!

 ……まあ、どんな状況なのか想像はつくんですけどねぇ。


 で、まあ、お城は見栄えと生活のしやすさしか考えてない感じのなんちゃってお城なのでさして広くもなく、目的の区画にもすぐに辿り着いたわけなんですが……。

 「少々、好ましくない空気でしてよ」

 「シュー……コー……」

 漂う異臭に顔をしかめるティアリスさん。

 ……最初はティアさんって呼ぼうとしたんですが、ティア呼びはアルドラさんにしか許してないみたいだったので諦めました。

 なお、そのアルドラさんはどこからともなく取り出したガスマスクを装着してます。

 ……真面目にどこから取り出しました?


 「腐乱臭……。これ、正気で生活できますの?というか、元王女様はちゃんと生きてますの?」

 「……一応、食事は運ばれてる様子ではありましたし、死亡したら流石に報告が上がるはずですので生きてはいると思われますが」

 ちょっと、尋常ではない空気にお嬢様方がドン引きしてますが……。

 「まあ、多分大丈夫ですよ。とりあえずさっさと軟禁状態から解放してあげましょう。あと、お風呂の用意ですねー」

 まあその、こんな感じになってるだろうなと私は予想していたので……。

 とりあえず、軟禁中《とらわれ》の元お姫さまを救出?に行きましょうか!


 「フィアネイア様、いらっしゃいますでしょうか?」

 さて、異臭濃度が部屋に近づくにつれて濃くなってきましたが、みんな鼻をつまんで我慢です。

 「シュー……コー……」

 あ、うん、アルドラさんは別として。

 ……今気が付きましたけど、私が流体制御でこの臭い空気を遠ざければ良かったですね。

 まあ、部屋の中はこれ以上の臭さでしょうしその時に対応しましょう。

 で、返事は……無いですね。


 「メリーお嬢様、リシェルテお嬢様、どう致しましょうか?」

 ちなみに、今の時間はお昼すぎ。

 普通の状況だったら、昼寝してるだけ……の可能性も考えるところですが、この異臭状態でその考えに至る人は少ないでしょう。

 「突入しますの」

 ルテが険しい目でそう宣言しました。

 まあ、突入も何も扉の鍵は外からかけるタイプの部屋なので普通に鍵を開けて部屋に入るだけなのですが。

 というか、軟禁のハズなのに部屋に外から鍵がかかってるのはおかしくないです?

 

 「じゃ、私が開けますね。ついでにこの臭いを魔法でなんとかしますので何か見えても先走ったら大変なことになりますよ」

 とりあえず、まあ、どういう状況か予測はついてるので他のメンバーが突っ走らないように忠告をして……。

 

 扉を開くと同時に漏れ出す腐乱臭の乗った空気と外から持ってきた新鮮な空気をすかさず魔法で入れ替えます。

 なお、このくっせぇ空気の行き先はこの状況を報告しなかったメイドさん達の詰め所にしておきました。

 ……まあ、一瞬臭いだけなので我慢してもらいましょう。


 そして、開いた扉の先には……。

 「っ!」

 息を漏らして飛び出そうとするルテと、無言で走り出しそうだったセイラさんを手で制します。

 まあ、何日も着替えてないような薄汚れた服を着てベッドに突っ伏してる女の子を見たらそりゃまあ、駆け寄りたくなるでしょうけど……。

 その前に、《《それ以外の場所》》にも目を向けてくださいね?


 「あら、悪趣味だこと」

 「シュー……。アレは、何の肉ですか?」

 部屋の、小さなテーブルの上に広げられているのは無数の実験器具と、薬品、そして、変色して酷い異臭を放つ肉塊。

 あと、ベッドサイドの中途半端に食べ残されて放置された結果腐ってる食事の残り。


 「フィアネイアさん、起きてください。流石に臭いが酷いのでお風呂に入りましょう?」

 皆の困惑した空気の中、私は床に散乱する各種ゴミ類を踏まないように注意しながらベッドへ近づき元お姫さまを揺り起こします。

 って、ほっっっっっそ!?

 これ、誰も注意しないからってご飯とか何回も抜いた感じですよね!?

 ダメなんですって、この《《実験バカ》》はちゃんと監視しておかないとお風呂もご飯も無視して自分の研究を最優先に行動しちゃうんですから!

 ……ってうわ、なんかべちょってした。

 

 「なぁに?せっかく誰にも邪魔されずに好きにやってたのに……。邪魔しないでよぉ」

 不機嫌そうな寝起きの一言に、絶句する私以外の4人。

 まあ、そりゃこんな酷い場所に押し込められてた……と思ってた少女から「好きにやってた」なんて言葉が飛び出したらびっくりしますよね!


 「研究費、増やしてほしくないですか?そのお話をしにきたんですけど?」

 「なにそれ!ちょ、詳しく聞かせなさいよ!」

 で、私の一言で元気に飛び起きるガリガリで痩せこけて薄汚れたお姫さま。


 「じゃあ、まずはお風呂ですね。……フィアネイアさんも、その格好で外に出られるとか思ってませんよね?」

 「……えー……、めんどくさいんだけど?」

 

 はい、これが海老谷さんちの娘。

 『天才』寓話霊装(メルヒェン)学者 フィアネイア・サフィア・ティンカー・ヘイト・アガーラン元王女です。

 ……流石に、間近にいると臭いが遮断できないですね。

 くちゃい!

 


☆★☆★☆★☆


はい、2ヶ月ぐらい放置されてたら腐ってた元王女様のエントリーです。

軟禁されてて不幸だと思った?残念!超絶好き勝手に研究しまくれると大喜びで引きこもってたフリーダム娘でした!


で、ここに吸血姫ペアを連れてきた理由については次回ですかねー。

まあ、寓話霊装《メルヒェン》の研究をしてる辺りで察せられるかもしれませんが。


ということで、次回は汚れを落とした元お姫さまがオタクあるある早口で説明する回……になると思います。

更新予定は9月16日20時。

どうかよろしくお願いします。



次の更新が楽しみだと思われた方は、良いねコメント★拡散等で応援していただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。




最新話までお読みいただき、感謝致します。


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