第48話 ト書きさんと向き合いましょう
さて……。
なんか急に魔王が出てきた想定外はありましたが、ほぼ月例の魔王軍襲来イベントを損害軽微でクリアした翌日です。
……ちなみに、ちーちゃんには今回は最後まで戦闘に参加しなくていいので、好きな相手を選んで初撃を避けてみよう!という課題を与えて居ましたが見事にクリアしたようでした。
うんうん、ちっちゃい子が怪我しなかったのは良い事ですね。
回避できて嬉しくてそのまま戦闘せずに帰ってきちゃったのにはちょっと笑いましたが。
で……、ですね?
流石にそろそろ、無視できなくなってきた違和感というか謎がありまして……。
最初はですね?
字自体は私の筆跡ですし?私自身が覚えていないスチルやら背景やらの指示書きが見えているのかな?と思ってたんですよ。
……いや、どう考えても違うじゃないですか。
魔王の世界とかなんですかそれ知りませんよ!本編シナリオでも受信しませんでしたよ!
あんた一体誰なんだ!
【ないしょ♪】
ないしょ♪じゃないんですよ!
ぶっちゃけ怖いんですよ意味がわからなくて!
自分の筆跡で自分の知らない情報が書き綴られてたら普通はビビり散らかしますよ!
あとルテが離れてくれなすぎて一人でこういう思索出来る場所がトイレしか無いのなんとかなりませんか!?
【ならないんじゃない?】
ですよねー!
って、いや、そこじゃなくて貴方が誰なのか知りたいんですよ。
いえ、この際ぶっちゃけ正体を明かせないならそこは我慢します。
ただ、これだけは正直に応えてください。
敵ですか?味方ですか?
【カーボウイ「敵かな?味方かな?」】
エキセントリックな少年の歌の歌詞で返してんじゃないんですよ。
……正直、敵か味方かすらわからないんじゃこの右目を抉り出すしかなくなるんですが?
はっきり言って今の私にはあまり余裕が無いので即断即決でやりますよ?
どうなんですかマジで!
【少なくとも、朝奈ちゃんの不利益になる誘導とかはしないよ】
!!!!?????
こいつ!私の生前の名前を!?
【あ、断華・朝の方で呼んだほうが良かった?】
シナリオライターとしての名前の方まで!!!???
ダリナンダアンタイッタイ!?
……おっと、焦りすぎて脳内の言語すら滑舌が。
【敵じゃないから、目を抉り出すとかやめといたほうがいいよ。痛いし】
むぅ……。
しかし、真面目な話信用して良いのかどうか。
そもそも、最初の頃は私の指示書きっぽい書き込みしか表示してなかったのになんでこんな愉快な状態になってるんですか?
【擬態……してたんだけど、めんどくなった】
なるほど……。
この返答の適当さから考えるに、逆に一週回って信用して良い気がしてきました。
ガチで何か悪いことを計画してる奴ならずっと擬態を続けたままでしょうし、私が知らない情報を表示して驚かせてくるような事もしないはずです。
……ただまあ、じゃあ結局こいつは何なの?という疑問は残るんですが。
【ぷるぷる、ボクは悪いト書きじゃないよ】
う、うさんくさい……。
一回しばき倒したら起き上がって仲間になりたそうな目でこっちを見てきたりするんですかねコイツ。
いやまあ、私の右目にしか映らない文字を表示してくるだけの存在をどうやってしばき倒すのかという問題はありますが。
まあいいです。
そもそも、私がこのト書きとコミュニケーションが取れる状態になったこと自体がほぼ間違いなく偶然の産物ですし、何かの悪意ある計画に巻き込まれているとかではないでしょう。
さしあたって、とりあえずは色々情報を表示してくれる謎のト書きさんとして警戒しつつも受け入れる方向で行きます。
結局、何もわかってないですが《《こいつ》》に関してはじっくり調べていく事としましょう。
【その方が良いよ】
……はぁ。
とりあえず、あんまりトイレに長居するとルテが私のお腹の調子を心配し始めるので、諦めて外に出るとしましょうか。
せめて、何か新しい情報の一つぐらいは欲しかったんですけどね。
……私、そんな頭良いほうじゃないからなぁ。
ここでト書きの中の人を追い詰めるような質問はちょっと思いつかないです。
【じゃあ、逆に信用されそうな情報をあげるよ】
ふむ……?
【ちーちゃんの真のハッピーエンドへ行くには、海老蟹老師さんとこの子が必要だよ】
……ん?
海老蟹老師というのは、元私の同僚で、毒クズバーゲンのサブのシナリオライターで……。
彼が担当したキャラは彼自身が意気揚々と設定とキャラデザを企画に持ち込んできた《《王女様》》で……。
いや待ってください!
この世界って、別に私達が作ったシナリオによって生まれた世界ってわけじゃないですよね!?
だって、まだ販売もしてないゲームが、小さなゲームメーカーが作ったお話が、それが世界を創り出したなんて言うなら、全てのゲームや漫画が「《《そう》》」でなければおかしくなりますし、「そう」であるならば「全ての作家が世界を創り出す能力を持っている」事になります。
【そうだね。この世界はもとからあった世界だよ】
ですよね!?
いや、じゃあ、なんで海老蟹さんの理想のツンデレ妹キャラがこの世界に存在するんです?
【いや、電波送った相手は君だけじゃないし】
……は?
え?
【受け取った奴らが同僚なのは予想外だったけど】
つまり、このト書きの中の人があっちの世界にこの世界の情報を送り込んでいた存在だと?
って、それ以前にちーちゃんの真ハッピーエンドって何ですか!?
私の観たエンディングは、魔蝕汚染という問題が全て解決した遠い未来で、ベルさんの意志を受け継いだちーちゃんが人助けの旅を続けているお話で、ハピエンではあるんだけど不老不死は解決しなくてちょっとだけ切ない感じのお話なんですが!?
【まあ、相談してみるといいよ。私は、最高の結末が見たいだけだからさ】
最高の結末……。
……いいでしょう。その話、乗りました。
完全に信用したわけではありませんが、ちーちゃんが一人で思い出を大切に抱えながら生きていくエンディングは美しくはありましたけど納得行くものではありませんでしたし。
もし、あなたの言う事に従ってちーちゃんの《《呪い》》が解決したなら……。
その時は……。
【それはそうと、時間大丈夫?】
あ。
「メリー。大丈夫ですの?ずいぶん長いことトイレに入ってらっしゃいますけれど?お医者さんお呼びしますか?晩ごはんを消化の良いものに変えてもらいますか?あ!もしかして《《出ない》》方ですの!?」
「ちょっと考え事してただけですから!もう出ますから!」
うおお、ルテの声がなんかすごく切羽詰まってました。
これ、ちょっとでも返答が遅れたら扉をぶち破って入ってくる奴ですよ!
ちなみに、前科があります。
「ふぅ。ルテ、私が出てこないからってすぐトイレの扉を破壊しようとするのやめません?」
「……だって、メリーの姿が見えないと不安なんですの」
しゅんとして、しおらしい表情でうつむくルテ。
……そんな顔しても、人が中で踏ん張ってるかもしれないトイレのドアを破壊しようとしてたという事実は消えませんからね!?
「ところでルテ、元王女様って知ってます?」
「……ああ、年齢的に王位継承権が無かったので見逃して上げた子ですの。存在だけなら知ってますの!」
……やっぱ居るんですね。
「ところで、王が別の人に継承されたあとの親族とかってどうなるんでしたっけ?」
「えーと、確か次の王が決める感じでしたの。……あれ?わたくし何の指示もだしていませんの」
……あの、それ結構不味いことになってる予感がしませんか!?
☆★☆★☆★☆
謎が謎を呼ぶト書きさん。
正体は決めてあるのですが、そこにちゃんと着地できるように物語を運べるかちょっと不安があったりなかったり。
ということで、ト書きさんと世界の謎が逆に増えてしまう回でした。
電波とは、シナリオとは、無とは一体、うごごごご
ということで、次回はちーちゃんを真のハピエンに連れて行くためにト書きさんに紹介された元王女様に会いに行きます。
……なぜか、吸血姫を連れ立って。
更新予定は9月14日20時。
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