第45話 対魔王戦、普通はこうする
参の魔王、氷の魔神型の魔王で、操る概念は「凍結」。
……良く創作に出てくる氷属性の敵って、実際には氷の刃でーとか、氷に閉じ込めるーとか、「やってることって氷使ってるだけの物理攻撃じゃん!」って感じの敵が多いと思うんですが、コイツは違います。
というか、氷を操って物理攻撃してきてくれたほうが何十倍も与し易い相手でしょう。
まあ、どれだけ厄介な相手なのが、移動しながらルテ相手に解説しましょうか。
『お嬢様方、耐寒装備は3番のケースに入れてございます。移動中に着用してくださいませ。《《酸素ボンベ》》の使い方はご存知ですか?大丈夫ですね?』
「大丈夫ですの!」
「というか、今回は多分そこまで接近しないのでボンベは不要ですよ。……流石にアレは私とルテの2人で倒すには荷が重い相手ですから」
参の魔王、強いんですよねぇ……。
せめて、時間が夕方以降なら4人パーティーになるので色々打てる手があったんですが、昼下がりではちょっと……。
「ところでメリー、どうして酸素ボンベが必要になりますの?」
「……参の魔王がふっつーに周囲の気温をマイナス200度ぐらいにしてくるからですね」
「マイナス200度……」
「あ、わかった!空気が液体になっちゃうんだ!?」
お、ベルさん正解ですね。
「はい、窒素の沸点が-195度ぐらい、酸素の沸点が-183度ぐらい。窒素と酸素が液体になっちゃったら当然、人間は呼吸なんて出来ないんですよ。そうでなくても普通に呼吸する度に体内から凍っちゃいますからね。《《普通は》》、酸素ボンベが必須なんですよ」
参の魔王、周囲に液体窒素と液体酸素の海なんてものを発生させますからね。
近接殺し魔王その2です。
というか……。
「しかも、それとは別にあらゆる事象を『凍結』させてきますからね。参の魔王がその気になれば、魔王が指定した空間が《《凍結》》します。……指定した空間に居る存在すべてを巻き込んで」
「……空間が凍ると、どうなりますの?」
「んー、私が識ってるのはあくまでそういうお話があったという事だけなので、実際にはどうなのか正確な所はわかりませんが……。何も感じないらしいです。そもそも、凍った空間の中の時間はものすごくゆっくりとしか経過しないみたいで、凍結から魔王撤退による解凍まで自分が凍結した空間に巻き込まれたこと自体を認識できないらしいです」
「んー、それ、意味あるの?」
「よく考えてください。魔王が時間制限で退場するまで、凍結した人は戦闘に参加できないんですよ?」
「……なるほど、強制的に王が倒された状態になりますのね?《《時間切れ》》も、ほぼ自動で達成されてしまいますの」
はい、ルテの言う通り負けてないのに負けた状態になってしまいます。
一応、外部から魔法による熱を加えれば解凍出来るらしいんですが……。
まあ、単純に魔王との戦闘中にそんな悠長なことやってる暇があるかという話でして。
「……最強すぎない?大丈夫なの?」
「まあ、一応、参の魔王は攻撃の射程が短いので支配領域に入らないように気をつけながら存在楔を破壊していけば良いはずです」
「本来の対魔王戦闘のやりかたですの!」
そう、魔王って普通は倒すものじゃなくて、この世界を侵略するための橋頭堡を破壊して撤退させるのが戦闘の目的なんですよ。
……いや、倒せるなら倒したかったんでしょうけど、基本魔王はめちゃめちゃ強いので。
で、魔王が自分の持つ《《概念》》を世界に定着させるためにこの世界に撃ち込んだものが存在楔。
放置するとこの存在楔により、魔王の定着段階が上がって支配領域が広がり魔王が強化されていくので何としても壊さなきゃなりません。
対魔王戦闘で、「撃退」と「時間切れ」が分かれてる理由ですね。
存在楔を破壊して、目標達成を阻止した場合が「撃退」。
存在楔を破壊できずに、定着段階が上がり魔王の目標が達成されてしまった場合が「時間切れ」。
当然、「時間切れ」してしまった場合は次に同じ魔王が登場した時強化された状態になります。
ついでに言うなら、その時は存在楔を2個破壊しなければ次回登場時も強化されたままです。
なので、強化された魔王に対して王の戦闘能力が足りない、もしくは相性が悪いと判断された場合、アトランティス貴族は総出で魔王に突撃を仕掛けるハメになります。
一応これ、過去に何回かあったらしいんですよねぇ……。
この状態になると、貴族の方々がバッタバタと死ぬらしいので絶対避けたいところです。
そんな感じで、何がなんでも存在楔を2本以上存在させない戦いを続けてきた結果、なんとか魔王による地球侵略を防げている……というのが現状だったりします。
そんでもって、そんな超重要な存在楔なんですが……。
当然、魔王によって形状が違いますし、なんだったら魔王側も破壊されたくないので必死に隠したり偽装したり、なんだったら毎回自分の手で持って現れる奴なんてのもいますね。
ちなみに、この前倒した陸の魔王の存在楔は取り巻きの誰かの体内にありました。
まあ、その辺り関係なく倒し終わった取り巻きは放置して本体をケーキ入刀したので意味はありませんでしが。
「じゃあ、きっとアレだね。参の魔王の存在楔は氷に偽装してあるんでしょ!……いや、それだと見つけて壊すのすっごく大変じゃない?」
「ええ、前王は探すのを諦めて広範囲の火炎魔法で必死に薙ぎ払ってましたの」
「まあ、私は《《ずる》》が出来るので問題ないです」
はい、ここに取り出したるは魔法の鏡。
結局、どんなに上手く隠したって情報系寓話霊装の前には丸見えも同然なのです。
というかですね?
どうせ隠してる存在楔、ト書きで何か書いてあるんでしょ?
オチは読めてるんですよ!
『さてお嬢様方、雑談はそこまででございます。戦場へ到着いたしました。……屋外の気温は既に氷点下。防寒具を纏ってのご出陣を提案致します』
ということで、セイラさんの運転する装甲車が停車し……。
「うっわ、外猛吹雪じゃん!……これ、魔王がどっちに居るかすら見失うんじゃ……」
「まあ、その辺りは私の流体制御の魔法でなんとかしますよ」
「さすがメリーですの!頼りにしてますわ!」
……まあ、なんとかする以前に。
【←こっち】
なんてト書きが虚空に浮かんでるんですけどね!?
さて、では初の「普通の対魔王戦」。
行ってみましょうか!
☆★☆★☆★☆
液体窒素の温度、-196といえば……、そうですね、ストゼロのパッケージですね。
ということで猛吹雪でこれシチョウシャ=サンが戦闘の様子を確認するの困難なんじゃ疑惑がある参の魔王戦開始です。
あ、「勇者の挑戦」は撃破するときの戦闘で流したいので今回のBGMにするのはおすすめしませぬ。
……さて、これだけの極低温の戦場でルテは服を脱ぐことが出来るのか!?
次回「寒すぎて、人肌が恋しいですの!」
更新予定は9月7日20時。
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