第43話 お母さんみたいだったから……
私は、戦闘の度に大怪我をする。
今まではそれが当然だったし、これからもなんだかんだ怪我をすると思う。
んだけど……。
私が大怪我すると、みんなが心配する。
どうせ治るのに、手足が無くなったってメリーさんみたいに抱っこされなくても歩けるのに、脳みそが半分無くなっても普通に考えごとが出来るのに。
なのに、みんなが凄く悲しい顔をする。
私は、みんなを守れたから嬉しいのに。
ずっとそうだった。
ずっとずっと、私が戦いに出るようになってからずっとそうだった。
ずっとそうだったから、私は戦いに出してもらえなくなった。
……私が囮にならなかったせいで、怪我をする子が増えたのに。
何年前だったかな?40年ぐらい前?
私が怪我をしても気にしない、そういうものだって割り切れる仲の良い子が居て……。
千景ちゃんって名前だった。
その子が、私が戦闘に出してもらえなくなってからの戦闘で死んじゃって。
流石に我慢ができなくて色んな人に怒りに行った。
それからは、たまにだけど戦闘に出してもらえるようになった。
私が戦うと、その戦闘ではほとんど誰も怪我しないから、嬉しかった。
だけどね、みんなやっぱり凄く心配するの。
いつからかな。
私はそれが、《《煩わしく》》なっちゃった。
自分が気にしてないことを他の人にすごく気にされるのは、実はすごくイラつく事なんだよ?
みんな、なんでそれがわからないのかな……?
でもね、死ぬ危険が高いから一番死なない人を派遣しようって抜擢されたノイ・アトランティスへの派遣部隊で、私の怪我をあんまり気にしない人に久々に逢えたの。
ジェイドメリア・ナンカスゴクナガイナマエさん。
あの人は、私が怪我してても、治るから大丈夫って言ったら気にしないで相手してくれた。
私を、戦いから遠ざけて怪我しないようにしようとするんじゃなくて、どうして私こんなに怪我をするのかを考えて、改善しようと色々考えてくれた。
それがね、私にはすごく特別なことだったんだよ?
……あ、あとベルちゃん!
怪我したの見てられないからソッコー全部治すから!って私の怪我全部一瞬で治しちゃう子もね、会えて良かったと思う。
心配だからって、自分でできることすら許可を取らないとやらせてくれない人達よりよっぽど気楽!
「怪我はしてほしくないけど、しちゃったら全部私が治す!」ってさ。
お医者さん苦手だから、色々言い訳して逃げてた私をめちゃめちゃ叱って来たのは、その、ものすごく怖かったけど。
でも、ベルちゃんが居れば私は怪我しても大丈夫って思ったらすごく楽なの。
この2人が、ここ2~30年で出会った人達の中で今のとこ一番好きかも?
ベルちゃんはかわいいし、メリーさんはね?
……温かいんだよねぇ。
私のどこが悪いか見つけて、ここを直しましょう!って凄く厳しい訓練を押し付けてくるんだけど……。
私が汗だくになって一生懸命どたばたしてる横で、メリーさんも一生懸命身体を動かすリハビリしてるの。
汗で髪の毛をお顔に貼り付けながら、ルテ様に心配されながら、それでも笑って。
……キレイだなって、思った。
メリーさんが凄く頑張ってるから、私も頑張らなきゃって思った。
だってさ?
メリーさんは、やってても楽しくもなんとも無いトレーニングをずーっとやってるのに、私がやってるのは音楽に合わせてダンスをするぴこぴこだよ?
上手く行った時、楽しくないかって言われたらすごく楽しいし……。
ちょっとずつ上手くなって、クリア出来る曲の数が増えていくのは前に進んでるって達成感があるし……。
私が楽しくトレーニングしてる横で、メリーさんはただ辛いだけのリハビリを笑いながらやってるの。
……ただ、辛いだけの、行動を、笑いながら。
胸がね、きゅってなった。
私が戦場で傷だらけになっていくのと、ちょっと重ねちゃったから。
だって同じ事なんだもん。
誰かが、自分が早く元気にならないと心配するから一生懸命辛いリハビリをする。
誰かに、攻撃が飛んでいくのが心配だから一生懸命敵の真ん中で囮になる。
両方ね、自分のためなんだけど他人のためなの。
メリーさんがリハビリしなきゃいけなくなったのはね、みんなを庇って魔法を食らったからなんだって。
……似てるって、思った。
私と。
でも、違うとも思った。
メリーさんは、訓練が終わったあと……。
いや、訓練の最中でも私が結果を出すとすぐ褒めに来てくれる。
私が囮になる事に関しても、「囮になるのは神器の性能的に最適解だと思うので良いんですけど、攻撃は回避出来たほうがメリットが多いですよ」って、否定しないでいてくれる。
サボろうと逃げ出したら、魔法で捕まえて叱ってくれる。
なんかちょっと、お母さんを思い出した。
140年ぐらい前に、私を《《呪って》》、助けて死んだお母さん。
心配はするけど、それ以上に理解してくれたお母さん。
メリーさんはまだ18歳の女の子なのに、おかしいよね?
……サボろうとして叱られたの、久しぶりでちょっと嬉しかったな。
祓魔庁の人はさ?ずっと若い時から私が知ってる人しか居なくなっちゃったから、私に強く出られないみたい。
そりゃ、昔の失敗を全部知ってる人に対してあれこれ言えないよね。
そんな、上の人を見てるから新しく入った若い人も気を使って私に何も言ってこないし。
でも、メリーさんはしがらみとか無いし、偉い人だから私をちゃんと叱ってくれる。
そんな人だから、メリーさんのためなら色々頑張れるって思っちゃうのはしょうがないと思う。
だから、一生懸命頑張ったら……。
次の魔王軍迎撃戦は戦闘に出ていいって事になった。
……魔王が居たら魔王を撃退した後に、だったけど。
ちょっとだけいい感じに動けるようになった私が、前と比べてどれだけ避けられるのか実感してほしいからだって。
自分でも、降ってくるのーつ?が結構ちゃんと見られるようになったし、ちょっとは出来るようになってるきがする。
魔法は……。
なんか、変なふうになっちゃってメリーさんも頭抱えちゃってた。
前は、全身で全部ぼわーって出すしか出来なかったんだけど、練習した結果……。
出力は下がんないのに、場所だけ限定出来るようになっちゃった。
腕なら腕からだけ、足なら足からだけ狐火が最大出力で出るの。
そうなっちゃってるのがわかった時は、みんなして「どうしてこうなった」って顔してて面白かった。
正直に言うと、私もどうしてこうなったんだろう?って思う。
……あの時、水をロープみたいに操ってぎゅるって腕に巻き付けてきたメリーさんかっこよかったな。
あんなふうに魔法が使えたら、確かに便利だし強いしかっこいいと思う。
でも、流石にね?
「使ったら使っただけ上手くなるんですから、使い続けましょう。何があっても」
なんて言って寝てる状態でも魔法を訓練してるのは、ちょっと引く。
あの辺り、メリーさんとずっと一緒に暮らしてたルテ様もだいぶ感覚がおかしいと思う。
ベルちゃんに「おかしくない?」って聞いたら、「すっごくおかしい」って言ってたし。
でも、おかしい訓練をしないと魔王と戦えないなら、私は訓練したいなとも思う。
今の私は火力が足りないからね!
蜥蜴丸は良い子だけど、刀1本じゃどうしょうもない敵には無力だし。
だから、いっぱい魔法使って練習して、魔王と戦ってもメリーさん達が怪我しないように沢山攻撃を引きつけられるようになりたい。
それで、沢山思い出を作って、メリーさん達が《《いなくなった後》》も思い出してほっこりするんだ!
大丈夫、メリーさん達は絶対歴史に残るでしょ?
だから、思い出すための道具には事欠かないと思うから!
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長命存在あるある系の問題もそのうち解決しなきゃですねぇ。
ということで、また矢印の方向を乗っ取り始めたメリーさんです。
イベントが無いと仲が進展しない主人公より、自分で好き勝手イベント起こして存在しないシナリオを爆速で進行する誰かさんのほうが距離が接近するのは致し方ない事なんじゃ……。
ということで、次回は訓練とリハビリの進行具合な回ですかね。
その後出撃しますが。
更新予定は9月2日20時。
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