第22話 ……なんて?
目を開けると、視界に飛び込んできたのは何やら豪華なベッドの天蓋でした。
「……これじゃ、『知らない天井』だって言えないじゃん」
時間は、外の暗さから考えて夜明け前辺りでしょうか?
人の動く気配は無く、夜明け前特有の濃い青色の空からそう推測します。
「というか、死ななかったんですね私」
とりあえず、右手の状態を確認しようと力を込めますが……。
「重い……」
何かが纏わりついているように重く……って、思いっきりルテに抱えられちゃってるじゃないですか。
そりゃ動きませんよ。
ただ、抱きしめられている腕の様子は薄暗がりの中でも見て取れました。
あー、お肌やべー感じになってますね。
死に損なった理由は、聖女ちゃん辺りが駆けつけたとかでしょうか?
なんにせよ、推しの今後を見ることが出来そうで良かったです。
……いや、推しを守って死んで一生消えない心の傷になるルートとかオタクなら一度は妄想するアレではあるんですが。
流石にね、ルテのトラウマを晴らしまくってた私がトラウマそのものになるなんて話はないですよ。
……ところでですね?
視界がおかしいです。
具体的に言うと右目の視界が。
なんかですね?ラフ画というか、清書前のラフ画にここはこういう設定だからこう塗ってね!的な指示を書いた風世界というか?
漫画家の|コマ割り等含めた雑な下書き《ネーム》がそのまま視界に映ってる的な?
……ってこれアレじゃん!私の字じゃん!
え?なにこれどうなってるんです!?
右目で見るリシェルテのラフ(……断じて裸婦ではない、今日に限っては)にはぴゅるんっと矢印で「寓話霊装取得後はピアスの書き忘れにちゅーい!」なーんて書いてあります。
なんじゃこれ?
一番記憶に近いのは、イベントスチルの指示でしょうか?
よく見ればベッドにも「王族用だから豪華に!でも派手にはしないで!」なんて書き文字が見えます。
……え?こわ。
真面目に怖いのでちょっと右目閉じときます。
いや、ガチで怖いって。なにこれ?
右目だけなのが更に謎です。
ちょっと、詳細がわかるまで右目よく見えないって事にしておきましょうか。
とりあえず、めちゃめちゃ心配させたであろうルテを起こして目が覚めた事を伝えないと……。
さしあたって、自由になる指先を動かして起きましたよアピールでもしてみましょう。
ほんとは左腕で頭を撫でてあげたい所なんですが、なんか身体重くって……。
……って待ってください。
ベッドに「《《王族用》》だから豪華に!でも派手にはしないで!」って指示書き?
は?どゆこと?
「んぅ……?めりー、わたくしねこではありません……の?えっ!?」
あ、ちょうど顎の下をわしゃわしゃする感じになってたみたいですね。
刺激に目を覚ましたルテががばっと起き上がって私の顔を覗き込みました。
「メリー!」
「ぐえっ」
そして、目があった瞬間に破顔してからのー、全力ハグ!
「メリー!メリー!やっと目が覚めましたのね!流石にお寝坊さんが過ぎますの!」
あ、ちょっ、胸に顔を埋めながら叫ばれるとくすぐったすぎると言うかなんというか!涙が垂れてくるのがこれも結構くすぐったいと言うか!
あのですね!?ルテの言葉と身体の重さから考えて私だいぶ長いこと寝てたんですよね!?臭くないですか!?
あ、でも髪の感じからして清拭……ってレベルじゃないですねこれ。
髪の毛とぅるっとぅるですよ。
これ確実に寝てる間にお風呂入ってますよね?……寝てる人間をお風呂入れるのだいぶ大変だと思うんですけど、どうやらだいぶ手間を掛けて対応してくれてたみたいですね、じゃあ臭くないでしょ、されるがままになっときましょう。
「なんか色々状況が飲み込めませんけど、ルテのメリーはここにいますよ。……ごめんなさいルテ、一人にしてしまって」
抱きしめ返しながら頭を撫でます。
まったく、もうこの国では大人扱いの年齢ですよ?甘えん坊はいくつになっても治りませんね。
……なお、国際的にはどう見ても15歳は未成年です。あしからず。
しばらく……。
多分、なんだかんだ1時間ぐらいはそうしてたでしょうか。
窓の外がすっかり朝の気配を漂わせ始めた頃、ようやくルテが落ち着いてきました。
……いや、1時間も胸で泣かれるとか随分と心配させたみたいですね。
でもですね?
そこに関しては申し訳なく思うんですが、お願いですから現状を説明してもらえませんか?
なんで私、王族用のベッドに?
というかそもそもどれぐらい寝てました?
……あと右目、これどうなってるんです?
「ごめんなさいメリー。メリーが居ないとわたくしダメみたいで……。でも、これでメリー分をMAXまで補充できましたの!元気いっぱいですの!」
メリー分とは……?
というか、確かに泣いてたと思って抱きしめてましたが、後半なんかくんかくんかされていたような気がしないでもないです。
まあ、臭くないなら気にしませんけど。……私もルテの頭いっぱいくんかくんかしてましたし!
「で、メリーはあのあとの事について沢山わたくしに質問があると思いますの!全部、メリーのためなら何一つ隠さず全部お答えしますので好きに質問してほしいですの!……メリーは、何があったか覚えておりますのよね?」
うん、この辺りの気遣いができるのはえらいですよね、ルテ。
じゃあ早速……。
「ニー◯と◯レキサンダー、どこいった?」
「勘のいいガキは嫌いですの!って、この場面でボケから入るのは予想外でした」
いやまあ、真面目に質問するのが怖かったんでワンクッション挟みたかったんですよ!
「では、気を取り直して、えっと……。私、ジケイド王子の魔法を防ぎ損なったところまでしか記憶がないんですけど、あの、王族の方たちは?」
「メリーのために全員ぶち殺しましたの!ですので、今はわたくしが女王でメリーが王妃ですの!」
……なんて?
斜め上どころか虚数方向にすっ飛んだ回答が帰ってきませんでした今?
聞き間違いかもしれません、もう一度質問してみましょう。
「すみません、もう一度言ってもらっていいですか?」
「王位継承権の有る人間は全員わたくしがメリーのためにぶち殺しましたの!戴冠式も無事に終わって、各所への周知や手続きも全部終わって、わたくしが第十三代ノイ・アトランティス国王で、メリーがその王妃になりましたの!」
……なんて?
ちょっと理解が追いつきませんが、冷静になりましょう。
えっと、まあ、身内が死にかけたのを見たルテがガチギレしてその場に居た王子2人を手に掛けたのは予測がつきます。
戦闘能力で考えればアホ王子とクズ王子2人係でも瞬殺できる戦力差がありますからね。
王は……なんで死んだんでしょうね?暗殺条件が満たされていたのは覚えてますが……。
「ナレーシ王の暗殺は、ベルに即座にメリーの治療を始めてもらうための仕方のない犠牲でしたの」
あー、なるほど?
「その後、わたくしの大事なメリーを傷つけたゴミクズを《《処理》》しましたの。だって、メリーにこんな傷を負わせた人間が生きているの、おかしいでしょう?」
そういって、眼のハイライトさんが退散した顔でニッコリと笑うルテ。
……あれ?私この表情知ってますよ?シナリオ中盤ぐらいで沢山出てくるやつですもん!
これは、聖女が大事すぎて危うく監禁エンドに行きそうだった状態のルテの表情。
……って、ヤンデレモード大爆発してるじゃないですか!
あかんですよこれは!どうして、どうしてこうなったんですか!?
折角丹念に丹念にフラグを潰して、トラウマは最初期の段階で叩き潰して、健全なご令嬢として……まあ、露出狂は矯正しきれませんでしたが、そこ以外は完全に健全な少女として育ってたはずなのに!
……あ、いえ、ちょっと待ってください。
本編では、トラウマと傷を癒し、《《ずっと傍に居てくれた》》聖女に対しての愛が暴走してヤンデレるんですよ。
親からの放置と魔力暴走による失踪、両方、発生はしてましたよね?
えっと、つまり、今現在のルテの認識だと……。
トラウマを癒し、ずっと傍に居てくれた女性は、私って事になってませんか!?
は、は、ははは、ど、どうしてこうなった!?
☆★☆★☆★☆
自覚するのが遅い!と大塚芳忠ボイスで叱責されそうなメリーさんでした。
これには鱗滝さんもげきおこ。
ということで、主人公復帰です。
起きてから伝えられる情報量が過多すぎてこの段階でまだ色々処理できてません。
特に「王妃」のワード辺りとか。
それはそれとして、ハイライトの無い眼、いいですよね?いいんですよ。いいって言いなさい。
で、次回「目が覚めたらヤンデレ令嬢に娶られて王妃になっていた件」
次回更新は7月13日……の予定ですが、ザンッギョさんが暴れたら翌日にずれます。
時間はいずれにしろ20時予定です。
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