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公爵家の転生侍女ですが、どうやら私はヤンデレ悪役令嬢に娶られて王妃となるようです……なんて?  作者: 禍成 黒いの


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第21話 どのルートでも大体こうなる末路

 「はぁ?私の娘が王位についた……?娘……?」

 アルトシュリア公爵家当主、フェーラースンは報告を受けて首を傾げた。

 ……娘という存在を記憶の奥から引きずり出すのに時間を要したからだ。

 「娘……、娘……。ああ、あの《《ハズレ》》か」

 しかし、思い出したは良いがその娘とやらと王位が結びつかない。

 そもそも、どうやって王位についた?確かに今のナレーシ王は王として不適格だったが、それでも強力な炎の魔法を使う家系の者だ。

 王自体は何らかの手段で暗殺したにせよ、後継たる王子二人は魔法の腕前だけ見れば現王に勝る強者だったはずだ。

 

 ……まあ我がアルトシュリア公爵家が新星たる、息子のルートヴィヒにはやや劣るが。

 《《9歳》》で魔力に覚醒した天才である息子を誇りに思うと同時に、その息子を差し置いて最強だと称される忌々しい吸血侯爵の娘を思い出しフェーラースンは鼻を鳴らした。

 情報収集に出かけたいが、侯爵令嬢に悪意のある誤射(フレンドリーファイア)を仕掛けた罪で謹慎を言い渡されている身ではそれもままならない。

 

 情報の確度では劣るが、仕方なくネットで情報を確認するかとブラウザを立ち上げ情報を検索し……。

 「……は?」

 表示された情報が理解出来ずに再び首を傾げた。

 閲兵式デビュタント当日に正面から王を暗殺?

 次いで王子2人を片手間に瞬殺?

 というか、光魔法によるレーザー光線で王宮の天井をぶち抜く?

 理解不能な文字列に、フェーラースンは長い唸り声を上げた。


 光魔法によるレーザー。

 光魔法を使う者の基本的な攻撃手段だと思われているが、実際はそう簡単なものではない。

 そもそも、レーザーとは同じ周波数・波長を持つ光を束ねた物である。

 科学技術を取り込み、ルビーなどの鉱石を使って発生させたレーザーを魔法で操るならともかく、無手の状態で光線魔法を発生させるにはかなりの魔力制御技術を必要とする。

 戦場ならともかく、閲兵式デビュタントの会場へ発振器(物騒なもの)を持ち込んでいるはずがないので、この記事が正しければ娘とやらは尋常ではない魔力制御技術を持っているということになる。

 ……天才であるはずの息子が路傍の石にしか見えないほどの。


 「いや、だが、ありえん……」

 しかし、フェーラースンの認識ではそれはありえないのだ。

 「あのハズレは未熟児として生まれたはずだ。当然魔力制御は苦手分野。戦場に出ることすらおこがましい雑魚にしか育たぬはずだ」

 何かの間違いだと、記事が嘘をでっち上げているのだと必死の思いで様々なニュースサイトを巡るフェーラースン。

 しかし、どの記事を見ても記録されている《《娘》》とやらの行動に大きな差は見受けられない。

 

 そして、彼は辿り着いた。

 謹慎中であるが故に連絡が届かなかった、戴冠式のライヴ中継に。

 黒いドレスで宣誓を行う少女は、確かに亡き妻の面影のある顔で……。

 「……なるほど、妻の、グラウゼンの若い頃に少し、似ているな。これがあの、ハズ……いや、娘なのか」

 半ば呆然と呟くが、娘という響きにはやはり実感がわかない。


 抱いている女性は腹心として一緒に暮らしていたアイゼンヴァルド伯爵家のご令嬢だという。

 ……確かに、母方の父が腹心候補を探すと声をかけた家の一つだった……記憶がある。

 腹心に決まったとの連絡を貰った際に礼状を書いた記憶も。

 何があれば、その腹心を妻として娶る様な流れになるのだろうか?

 名前は、先ほど読んだニュースによればジェイドメリアというらしい。

 第2王子の放った大規模火炎魔法を防いで大火傷を負い、意識不明だとか。 

 逐一意味がわからない。

 フェーラースンは幾度目かもわからない疑問に首を傾げる。

 

 画面の中では、娘とやらが宣誓を行い王位についていた。

 これで我が家は王家扱いになるのだろうか?

 だとすれば、私と息子は今後城で暮らすことになるのか?

 いや、そもそも簒奪で王となった場合、生家は王家となるのか?

 疑問ばかりが頭に浮かび、一向に思考がまとまらない。


 そんな最中、画面内と我が家に同時に出撃要請のアラームが響き渡る。

 フェーラースンは反射的に腰を浮かせかけ……、謹慎中だという事を思い出して情けなく椅子に崩れ落ちた。

 ……戴冠式当日となれば、我が娘とやらは寓話霊装メルヒェンの取得もまだだろう。これで早々に1敗。いや、《《ハズレ》》である事を考慮すればすぐさま連敗し王位を失うこともあり得る。

 いや、そうなれば息子に、ルートヴィヒに王位を取らせれば良いか。

 都合の良い思考を巡らせるフェーラースンだが、画面の中で事態は淡々と進行していた。


 「馬鹿め、寓話霊装メルヒェンも、ましてや寓話兵装クライナー・メルヒェンも持たずに単身で魔蝕性侵略体・首魁級(ファッティ)を含む魔蝕性侵略体クリーチャーの群れと戦うだと?死んだな、これは」

 ドレス姿のまま、さしたる気負いもなく無肢竜へと挑む娘とやらを鼻を鳴らして侮蔑する。

 武装がないのだから、せめて援軍を待てば良いものを。

 戴冠式当日で寓話霊装メルヒェンの取得が間に合わなかったからだとして情状酌量で1敗分ぐらいは見逃される可能性が無くは無かったろうに。

 おそらく、王族に対して魔法戦で勝利できたことで頭に乗っているのだろう。

 存在自体がアルトシュリア公爵家をバカにしている……とフェーラースンが一方的に感じている娘の晒すであろう醜態に彼は醜く口元を歪め……。

 歪めたまま、固まった。


 巨大な無肢竜ワームへ超遠距離からかっ飛ばすレーザー。

 フェーラースンの常識ではありえない魔法。

 しかも、それで仕留めきれなかったことに何の感慨も抱いていない態度。

 「なんだ……これは……?」

 己の常識からかけ離れた魔法に理解が追いつかず、呆然と開いた口内が乾いていくことすら気にならない。


 続く重力魔法で空を飛び、光の魔法で虚像を創り、最後は意味のわからない出力のレーザーで無肢竜ワームを両断。

 映画やコミックのヒーローの様な活躍に、頭をよぎるのは悔しさだった。

 「何故だ!?お前は《《ハズレ》》のはずだろう!?だから忘れた!だから見捨てた!なのに、何だこれは!こんな……、こんな才能!ま、まるで私が道化ではないか!」


 天才だ、最強だと褒め囃していた息子では太刀打ちどころか認識すらしてもらえるか怪しいほどの圧倒的な魔法の才。

 ……いや、きっとこれは娘とやらに凄まじい才能があったわけではない。この出来損ないである娘を指導してそこまで引き上げた真の天才が居るに違いない!

 リシェルテを認めたくないフェーラースンは脳内で無茶苦茶な理論を組み上げる。

 それでも……。

 「いや、まて、そもそも魔法の教員には誰をあてがった?」

 自らの愚行が理論に穴を空ける。

 

 放置していた娘だ、家庭教師は離宮の担当者に適当な者を手配するように言ってあった気がするが、探すのに貴族の伝手が必要な魔法の教師は探せないだろう。

 なら、誰が……?

 腹心のアイゼンヴァルド家令嬢が窮状を訴え、かの伯爵家が手配した?

 いや、それにしてはその時期にこちらの、娘を放置しているという悪い噂……いや、事実だが、が流れなかった理由がわからない。

 

 「……まあ、いい。誰が教えたにせよ、その人間をこちらに派遣してもらえばいいだけの話。私は血縁者ではあるのだ。話ぐらいは聞いてもらえるだろう」

 そして、その教師に息子を見てもらえば確実にあの《《ハズレ》》より強力な魔道士となるはずだ。

 皮算用を巡らせ、スマートフォンを取り出し……。

 そこで動きが止まる。

 当たり前だ、そもそも娘とやらの連絡先を知るはずもないのだから。


 「まあいい、離宮の方に連絡して取り次いでもらえばいいだろう」

 スマートフォンには登録していなかったが、資産に関する資料から電話番号を見つけ出し即座にコール。

 ──おかけになった電話番号への通話は、お客さまのご希望によりおつなぎできません── 

 着信……拒否!?

 娘とやらがこちらをどういう感情で見ているかを察し、フェーラースンは頭を抱えた。


 なお、後日。

 「絶縁状と……、次世代戦力育成放棄等の貴族法違反に関する出頭命令?」

 取り付く島もないどころか犯罪者として裁判所へ引きずり出され、本人や息子のこれまでの素行や違反等が掘り出された結果。

 アルトシュリア公爵家は公爵位にふさわしくないとされ、シュリア家へ変名の後子爵位へと降爵された。

 さもありなん。


☆★☆★☆★☆


難産だった上にメリーさんの実家の話が出来てない!

……まあ、メリーさんの方のお家は普通に心配してるだけなので本編に出せばええか。


ということで、毒親の末路というかなんというかです。

戦力が下がったわけじゃないんだから、頑張って戦果を上げて再度公爵位まで返り咲けるといいですね?

この先やべーやつがたくさん出てくるので無理ですが。


ということで、次回!「……なんて?」

はい、お目覚め回です。

更新予定は7月11日20時。

どうかよろしくお願いします。


次の更新が楽しみだと思われた方は、良いねコメント★拡散等で応援していただけるとありがたいです。

よろしくお願いします。




最新話までお読みいただき、感謝致します。


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