第20話 あの日見た夢はなんだったのか。
夢、夢を見ている……。とても仲の良い姉妹の夢。
……あ、これ違う夢だわ。ちょっと思い出すのストップ!
夢を、夢を見ていたんです。
とても激しく、荒々しく、雄々しい夢を。
……うん、これも違う人の夢だよね?男の子の教科書のヤツだよね?
私が見たやつこれじゃないからチェンジで!
……夢で、そう、夢で見たんです。
その夢の中で私は……。
白く輝く絶対的な熱量の吐息を、私の腕に抱えられた小柄な女の子が周辺の重力を操ることで無理やり創り出した高重力源に向かって飛ぶ事で回避する。
「まだですの!?」
「もうちょっと!」
次いで吐かれた2発目は、周囲の光を捻じ曲げて私達の姿を別の位置に映し出すことでなんとか回避。
流石は壱の魔王。攻撃が直撃したら全部即死って、クソゲーにも程があるんだけど!?
でも大丈夫。
私と、私の大好きなリシェルテなら魔王だろうがなんだろうが絶対に勝てる!
実際、参の魔王の氷の魔神と陸の魔王、破壊の天使には勝てたんだから!
「こうなったら……もう一枚脱ぎますの!」
「ダメだよリシェルテ!これ以上脱いだら全裸になっちゃうんだよ!?世界全部に放送されちゃうんだよ!?」
「むしろ光栄ですの!わたくしのベルが、何度も愛してくれたこの肢体!どれだけ美しいか世に知らしめるチャンスですの!」
「相変わらず無茶苦茶だね!?」
「そこが好きなのでしょう?」
「それはそうなんだけど!」
ああもう、惚れた弱みで全部許しちゃう!
「さあ、行きますの!これで全力を出せるでしょう?|王の新たなる装い《アウスツィヒ・マハト・ディヒ・シュターカー》!わたくしの全魔力ごと持っていってくださいまし!重力巨星!」
これまでとは段違いの、ものすごい重力が壱の魔王の、竜王の動きすら止めて……。
「そして、これが!私とリシェルテ、二人で考えた最強の攻撃!その状態で避けられるかな!?」
次いで、巨竜の真上にすっごくでっかい《《お菓子の家》》が生成される。
当然、当たったら一番痛い屋根を下に向けてね!
ぐぉぉぉぉぉん!
流石の魔王も、リシェルテが創り出した高重力に縛られて動けないみたい。
それに、息も吸えてないのかな?ブレスで迎撃されたらどうしようってちょっと考えてたけど、そっちは大丈夫みたい。
「「いっっけえええええええ!」」
遥か上空から落下するお菓子の家は断熱圧縮で赤熱。表層のお砂糖コーティングを硬い炭素の塊に変えながら竜王めがけて真っ直ぐに墜ちて……。
着弾!
「どうだこれが!」
「わたくしとベルの、愛の力ですの!」
愛する人と魔王を倒して最高の瞬間を向かえて……。
そこで、目が覚めた……気がする。
☆★☆
……うん、閲兵式の前日に見たすっごく長い夢では、私はリシェルテとらぶらぶになって、女王様になって、魔王を倒してて。
でも、現実では。
「ベル、メリーはまだ目覚めませんの?」
「うーん、火傷痕はともかく身体自体は治ってるはずなんだよね。だから目が覚めないのはメリーさんの心の問題だよ。これは私にはちょっと手が出せないかなー」
夢で見た最高に可愛い女の子は、別の誰かをすごくすごく心配してた。
ぐぬぅ、この子相手なら女の子と恋愛するのも全然悪くないとか思ってた夢で見たそのまんまの顔なのに。
……いや、まあ、初めて出会った瞬間は怒りで見たこともないぐらい表情が怖くてリシェルテって認識できなかったんだけどね?
うーん、でも夢で見たリシェルテが火傷しちゃってクズ王子にセクハラされて精神的にボロボロになっていく展開よりは今のほうがいい気がする。
……文字通り大火傷しちゃったメリーさんには申し訳ないけど、リシェルテが大火傷するよりは良かったと思う。
ただ、どう見てもリシェルテはメリーさんにデレデレっぽいし夢は夢でしかなかったって事だよねぇ……。
随分リアルだったし、はっきりと記憶に残ってるけどまあ、夢だしそんなもんでしょ!
「はい、ということでメリーさんの治療も大事だけどリシェルテの治療も大事!手を出して?メリーさんが目を覚ました時に火傷痕が盛大に残ってたら心配されちゃうでしょ?」
「……むぅ、それでもわたくしはメリーの治療を優先して貰いたいんですの」
「だーめ!リシェルテは私の普段使ってる方の魔法でちゃんと治るんだから。治るんなら治さないとだめでしょ?それに、ずっと火傷痕が残ってると魂が痕が残ってるほうが正常って魂が覚えちゃって回復できなくなっちゃうんだからね?」
これはほんと。
だから、ほんとに早いとこ治しちゃいたいんだよね。
そっとリシェルテの柔らかい手に触れて魔力を流し込む。
あの夢みたいな関係にはなってないけど、それでも、すごく好みな女の子に触れられる貴重な時間。
……あれ?なんか私変態っぽくない?
でも、それだけ可愛いリシェルテが悪いんだよ?
魔力を浸透させながら、ちょっと多めにぺたぺた。
正直、メリーさんもだけどリシェルテの手をこんなふうにした前王族共が大嫌い。
まあ、ただ、怒りをぶつける相手はもう死んじゃってるから何にも出来ないけどね。
「はい、今日の分はおしまい!あとはまた明日!」
「むぅ、一気には治りませんの?」
「前も言ったけど、私の治癒魔法は私の魔力を呼び水に本人の魔力で治してる感じのヤツだからね?リシェルテはまだ寓話霊装を持ってないんだから、魔力は温存しておかないとダメだよ」
「魔王が出なければあまり問題はありませんの!」
「……それがおかしいんだけどなぁ」
うーん、私の夢の中のリシェルテでもこんなに強くなかったんだよなぁ。
私の夢にはメリーさんは出てこなかったから、現実とは違うって事なのかなぁ?
治療が終わって、私は今日のお仕事終わりだけどリシェルテはメリーさんの傍を離れない。
女王様になって、就任直後の色んなイベントでいろんなお仕事があるみたいだけど空いてる時間はずーっとこの部屋に居る。
今日はベッドの隣に座って読書の時間みたい。
時折、メリーさんの顔を見ながら起きてない事を確認してため息。
どれだけメリーさんが大事なんだろ。
……ちょっと、妬けちゃうね?
いや、妬けるか?
えっとね?流石にね?
──メリーが目覚めた瞬間、いの一番に抱きしめてあげたいんですの!──
って、気持ちは、その、わかるよ?
でも、暇な時間ずっと病室に詰めてるのはいいんだけど。
女王様権限で面会時間過ぎてもずっと部屋に居座って、なんなら寝るときも余程疲れてる時以外はメリーさんのベッドに寄りかかって寝るとかちょっと重すぎるんじゃないかなぁ?
うん、私にはアレだけの愛情を受け止められる器は多分ないよね。
……メリーさんが目覚めたら普段リシェルテにどんなふうに接してるのかちょっと聴いてみたいかも。
あー……、ちゃんと目覚める……よね?
皮膚の内側は魂と今の姿が違っても同じ人間だから大丈夫でしょって普段の治癒魔法で治しちゃったけど、それでなんか変なバグとか起きてないよね?
一番心配なのはめちゃめちゃ時間がかかりそうだったから、やむを得ず魂からコピーした右目。
多分だけど、虹彩の色変わっちゃうんだよね。
ちゃんと普通に見えるようになればいいんだけど。
それにメリーさんが起きないとさ、リシェルテは寓話霊装取りに行かないって言ってるんだよ?
それまでに魔王が出てきちゃったらリシェルテが大怪我するかもしれないんだよ?
……そりゃ、王の配偶者が寓話霊装を取得する条件が『王の伴侶として、初めて王が扉を開く時に一緒に居ること』だからリシェルテが一人で寓話霊装への扉を開いたらメリーさんがそれを得られないってのもわかるんだけどさ。
……私も、夢の中で使ってたお菓子の家の寓話霊装、ちょっと欲しかったな。
☆★☆★☆★☆
裸の王様のドイツ語版タイトルは「王様の新しい服」的な意味になります。
|王の新たなる装い《アウスツィヒ・マハト・ディヒ・シュターカー》……、まあ、そういう事ですね。
ということで、実は矢印が結構飛んでる聖女黒ラベルさん回でした。
夢の中でバチクソ好みの女の子と仲良くなって、リアルでも同じ顔の子が居たら気にならないほうが嘘でしょうと。
まあ、気になっていてもどうしようもないぐらいアレでしたが。
でも、多分最終的にはなんだかんだ幸せになると思うのでそのへんはご安心を。
で次回サブタイは「それぞれの実家の反応」
更新予定は7月8日20時。
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