第2話 私が書いていたのはこの世界の事だった?
GrotesqueFairyTail ~聖女と悪役令嬢のロンド~
開発スタッフから毒親クズ男のバーゲンセール、略して毒クズバーゲン……、もしくはもっと略してバーゲン、なんて呼ばれていたこのゲームは、悪役令嬢モノが好き過ぎる企画担当と、百合が好き過ぎるシナリオライター(私だ!)が同じく百合が好き過ぎるイラストレーターを巻き込んで制作された乙女ゲーの皮を被った悪役令嬢とイチャコラするアドベンチャーゲームである。
……まあ、普通の乙女ゲーに悪役令嬢なんて登場しないことを嘆いた企画担当が主犯ではある。
で、攻略対象ヒロインは6人。
そのうち、メインシナリオライターである私がシナリオを書いたのが3人。
そして、書いてる最中に筆がノリまくって、お話が予定された分量を遥かに超えるテキスト量になって泣く泣く削りまくったヒロインが居るんですよ。
名を、リシェルテ・ティルテ・グリム・リスクラフト・ザーツバルム・アルトシュリア。
「さあ、ジェイドメリア。今日からお前がお仕えするお嬢様だよ。挨拶をしなさい」
と、親に紹介された眼の前の幼女そのひとである。
あ、ジェイドメリアは私の名前ね。
いや、びっくりしたよね!自分の中の最高傑作ヒロインが目の前に出てきた瞬間前世を思い出すとか!
……とはいえ、これがゲームの中の世界なんて思わないけど。
いいとこ、実際に存在する異世界の情報を私の脳が断片的に受け取って書き記したとかそんな感じなんでしょう?
じゃなきゃ、シナリオライターや作家、漫画家はオリジナル作品を作るたびに世界を生み出してることになる。
実際、少なくとも私が書いたシナリオに今の私、アイゼンヴァルド伯爵家の令嬢、ジェイドメリアなんてキャラ出てきてないわけだし。
「ジェイドメリア?どうした?」
おっと、イケオジパパンの面子を潰しちゃいけないのできちんと挨拶しておきましょう。
「初めましてリシェルテお嬢様。私はジェイドメリア・リーリア・スタックス・アイゼンヴァルド。本日より貴方の侍女として仕えるために参りました」
ちなみに、現在私は8歳、リシェルテお嬢様は5歳というスーパー幼女対面状態です。
……うむ、小さいながらも私が癖を詰め込んでイラストレーターさんにデザインしてもらった姿そのままで最高ですね!
いや、むしろ天然でこの姿が存在してたからこそ、それが癖にクリティカルヒットする私が電波を受け取れたんでしょうか?
銀の髪に緋色の瞳。
ただし、本来右目の収まっているはずの場所には眼球は存在せず、代わりに白い花が咲き誇り……。
これは花眼というヤツで、この世界においては《《魔力》》をハチャメチャに増幅してくれるスペシャルな器官となっている……はずです。少なくとも私の設定ではそうでした。
キレイに整った顔はややツリ目の挑戦的で強気な気性がとても良く表されたもので……。
え?頭の上の交差してる白と黒の光輪?そりゃ、天使と堕天使のハーフなんですから当然ですよ、ふつくしい……。
あ、鼻血でそう。
「はじめましてじぇいどめりあ!わたくしは、りしぇるて・てぃるて・ぐり……る?りすふらふら・ざっはとるて・あるとしゅりあ!あなたのしゅじんですの!」
かっっっっっっわ!
ああ神様、いやこの世界に設定上神様なんて居なかった気がしますが、この世界に転生させてくれて本当にありがとうございます!
もう、ぶっちゃけ今この瞬間に再度死んでもかま……いますね。お嬢様の成長を近くで見届けてメインヒロインが完成する様子をこの目で見なければなりませんし!
……それに、毒クズバーゲンなんて渾名されたこのゲームの親は基本的に親失格ですので、親に変わってお嬢様に愛を注ぐお仕事を私が担当する必要もあるでしょう。
あ、そもそもなんでこんな幼女VS幼女VSダー◯ライな状態になっているのか説明するとですね?
この国のお貴族様、特に公爵侯爵には幼少のウチから仲良く生活を共にし、腹心となる存在を育てる風習があるのです。
で、公爵令嬢たるリシェルテお嬢様の腹心候補として最初に選ばれたのが私、というわけですね。
……悪役令嬢として登場するお嬢様には腹心キャラは存在せず、誰も信じない人間不信状態に陥っていたので私ではない本来のジェイドメリアは色々失敗してしまったのでしょう。
まあ、知らなければ失敗する要素しかないんですけどねこの悪役令嬢!
ちなみに、この世界の場合侍女というのは秘書みたいな立場のご令嬢のお傍に侍っている女性のことでメイドさんではないのであしからず。
「じぇりどめさ!しゅじんであるわたくしは、あなたのことをよくしらなければなりませんの!だから、いっしょにあそびましょう!」
……なんか、とても不名誉なガン◯ムキャラの名前で呼ばれた気がしますが、リシェルテ様まだ5歳児ですもんね。自分の名前も間違えまくってましたし。
「はい、リシェルテ様。……呼びにくそうなので、私のことはメリー、とお呼びください」
「はい!めりー!……めりーは、えほんがよめますの?」
「はい、御本を読んで欲しいのですか?折角ですので、一緒に文字を覚えながら読んで見ましょうか」
「よめますのね!ルテは、好きなえほんがありますの!読んでくださいまし!」
うっひあ、お嬢様のお手々ふにふに!
おっと、ここはデレてるターンではありません。キリッとした表情を保ちましょう!
っはー、記憶が蘇る前のジェイドメリアとして過ごしてきた記憶も引き継ぐ形式でよかったー!
前世の私の記憶しか無かったらここでめちゃめちゃあわあわ……いや、デレデレか?して混乱しちゃってるところですよ。
「では、お父様行ってまいります。……しばしのお別れとなりますが、ジェイドメリアは立派に務めを果たしますわ」
「うむ……。正直、お前のことに関しては全く心配しておらん。年齢に似合わぬ落ち着きっぷりだからな。……リシェルテお嬢様のこと、頼んだぞ」
「はい!」
「めりー!はやく、はやくですの!」
ああもう、お嬢様かわいいなぁ!
まあしかし、5歳のお嬢様という事は悪役令嬢となる原因の出来事はまだ発生してないわけですね?よかったよかった。
幸い、今から超必死に急げばお嬢様がグレる原因を防ぐための《《魔法》》を使えるよになれるはずですし。
……おそらく、私の受け取ったシナリオに存在していたジェイドメリアはこの年齢ではまだ魔法が使えなかったのでしょう。
「めりー!これですの!この絵本を読んでくださいまし!」
「はいはい、えーと?『むかしむかし、とある国のある城に王さまが住んでいました。王さまはぴっかぴかの新しい服が大好きで、服を買うことばかりにお金を使っていました……』」
「はだかのおーさま!わたくし、このおはなしがおもしろくてだいすきですの!」
……あ、言い忘れてましたが。
ここ、地球です。
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詳しくは次のお話ですが。
世界観の設定的に異世界ファンタジーに分類するか現代ファンタジーに分類するか結構な勢いで悩んだお話だったりします。




