第13話 炎に巻かれて……?
「まあ!まあまあまあまあ!では、夜は毎夜ジェイドメリア様とご一緒に?」
「そうですの!……15になってまで同衾してるのは自分でもどうかと思うのですけれど、そのほうが気持ちよく眠れますの!」
「キャー!キマシッキマシッ(鳴き声」
……なにやら、ルテ可愛い!と集まった方々が黄色い悲鳴を上げてますがどうしたんでしょうね?
とりあえず、なんだかんだ一瞬で打ち解けたようで良かったです。
戦場で背中を預け合う戦友、大切ですからね。
戦友といえば、ルテの実家であるアルトシュリア公爵家は第一夫人を亡くしてから周囲の信用をガタ落ちさせてて、その戦友が居ない孤立状態になってたりします。
当主が悪いよ当主がー。
色々余裕が無くなったのか、息子であるダレインのライバルで、ついでに当人とも仲の悪いシュネーファル侯爵家の長女に暗殺まがいの巻き込み攻撃をしかけるとかやべー事もやってるみたいですし。
なお、侯爵令嬢の方が強くて普通に歯牙にも掛けられなかった模様。
流石噂の吸血令嬢。作中最強キャラ候補は伊達じゃないですね。
で、そんな状態で今のルテの魔法関連の能力を見たら何されるかわかんなかったんですよ。
だから、私の実家からの伝手での交流会とかにも参加出来なかったりしたんです。
え?今日からは大丈夫な理由?
それは、今日の閲兵式を終えれば生家からの出奔が自由になるので経済面での締め付けやらで無理やり言うことを聞かせることが出来なくなるからですね。
ルテの能力なら初期から伯爵相当で戦れるはずですし、能力に何の不安もありませんから。
と、私は微笑ましくルテと群がるお嬢様方(なお、何故か頻繁に私に視線が飛んで黄色い悲鳴が上がる)を眺めていたのですが……。
「おお、ジケイドよ。今年の花は名花だらけだぞ」
「アストン兄上、兄上は聖女を狙っているんだろ?じゃあ、ここから手折る花を選ぶ優先権はオレに譲るべきなんじゃねえか?」
一気に食事が不味くなるこの声!
……声優さんそのまんまなんかーい!と感じるぐらいの声帯の一致ですが、よく考えればルテも同じなのでそういうものなのでしょう。
ええ、はい、クズ男王子ズのご登場です。
美形なはずなのに妙にイラッとする顔立ちが最高に嫌ですね!
というかですね?
魔力の高い者同士で結婚して魔力量を上昇させようという結婚、通称「魔力婚」以外でてめぇらなんて誰が選ぶかよ案件なんですよ!
何選ぶ側の顔してんですか選ばれる側ですよクズ王子達!
……失礼、取り乱しました。
私のシナリオでは、この後ルテと婚約したクズ第二王子が「焼けた顔が気に食わん」とかほざきながら別の女に手を出したり、「火傷痕はどれだけ治ったか確認してやろう」とか言いながら脱がそうとしたり、自分で大火傷させといて何一つ悪びれない様子がスタッフ全員から大不評でしたね。しねばいいのに。
とりあえず、こんな奴らを私の大事なルテに近づけさせるわけには行きません。
……と鼻息を荒くしていたのですが、なんか周囲のお嬢様方もクズ王子ズは嫌いらしく刺々しい視線で睨んでますね。
おかげで奴らはこちらに近づけない模様。
ただ、近づけないなら近づけないなりにこちらのお嬢様方の品評会を開始してまして……。
どの娘の尻がいいだとか、あの娘はぱいおつがかいでーで良いとか、口に出して言いますぅ!?
お姉さんちょっとドン引きで思わず聞こえてくる会話をシャットアウトしちゃいましたよ。
なお、ルテに関しては少し身長が低いのが幸いして、周囲のご令嬢が見事に壁になってくれていて姿を見ることも見られることも無かったみたいです。
……年齢一緒のハズなのに年下の庇護すべき対象として扱われているルテがちょっとおもしろいですね。
あ、撫でられすぎて困っているのか私に助けてくれという視線を向けてきました。
「さて、そろそろリシェルテ様の無料期間は終わりですよー。ここから先は友達料金をいただきます!支払先は私で!」
なんて言いながらルテを後から抱きしめるとまた黄色い悲鳴が。
……いやまあ、確かに書いた世界は百合が受け入れられている世界なお話でしたけど!
そして、ルテとそういう関係に見られるのはちょっと悪い気はしないですけど!
と言った感じで……。
「メリー分が不足してきたので補給しますの!」
とルテに抱きつかれながら女子集団とお話していると……。
「ふざけるなよジケイド!次期国王はオレだ!お前は《《予備》》に決まってるだろうが!」
「じゃあなんでオレが《《予備》》だと決まってるなら父上は王太子《次の王》を指名しない?当然だぜ、兄上よりオレのほうが強いからだ」
なんて、何やらクズ王子ズが勝手に口論を始めてました。
……って、ちょっと待ってください!いや、なんで!?
《《コレ》》は、この会話は、本来中庭で行われるはずのやり取り!
この喧嘩で激昂した第二クズ王子が得意の広範囲高威力火炎魔法をブッパし、光学迷彩により姿を隠していたルテが巻き込まれて大火傷を負う、というのが私の書いた《》シナリオなはず!
あくまで電波は電波、実際に起きる物事と差異が存在するのは当然……。
まさかあのクソ王子、この場で魔法をブッパするつもりですか!?
不味い不味い不味い!
こんなところであのクズの得意な広範囲火炎魔法なんて使われたら何人キズモノになると思ってんですか!
「ルテ!防御を……」
振り返って声を掛けますが、何が?とでも言わんばかりのきょとん顔!
そりゃそうですよ!こんなパーティー会場で王族が考えなしに広範囲魔法をぶっ放すなんて想像の遥か斜め下ですよ!
ほんと、なんでこんな事になってるんですか!
「最早我慢ならん!これは喧嘩ではない、決闘だ!受けて立てジケイド!」
「おうとも!前々からその余裕ぶった顔面を焼き焦がしてやりたかったんだ!」
っ!時間がない!
……落ち着け私。冷静に、冷静になりましょう。
クソ第二王子が広範囲魔法をブッパするのは識ってるんです。そして幸い、私の魔力制御能力なら今から防御の魔法を練り上げてもまだ間に合う!
流体制御で水を……、いえ、会場に用意されてる水では足りなすぎる!
くっ、なら気流を制御してなんとか炎を間接的に制御すれば!
「喰らえよクソ兄貴!禍炎の群狼!」
「なっ!城内でそんな魔法を使うなど!正気か!?」
狼の群れのように荒れ狂う無数の炎塊。
自分の真横で魔力を炸裂させ、吹っ飛んで逃げる第一王子。
その後で驚愕に顔を歪める少女たち&私とルテ!
「灼かせるかよぉぉぉ!」
そんな中、荒れ狂う炎の渦に向けて一人歩みを進める私。
大丈夫、ルテとの訓練で私の魔力制御技術はアホみたいに磨かれています。
この技量があれば《《この程度》》の炎、巻き取って無害化する事なんてお茶の子さいさいです!
どうしてこんな場所であのアホで不毛な喧嘩を始めたのかは知りませんが、ルテの火傷だけはなんとしてでも防ぎます!
私の制御する気流に巻き込まれた炎は、圧縮されつつ天井付近へと誘導され……。
「……は?」
私の《《魔力》》へと燃え移りました。
燃え移った炎が魔力制御された気流を遡って私の身体に燃え移るまではまさに一瞬で……。
なんで!?第二王子の魔法である禍炎は自分の魔力で燃え続ける炎って性質で……。
あっ!
脳裏に浮かぶのは、前世での他のライターとの打ち合わせ。
──この、魔力自体を燃やすって設定やめません?ヘイト担当なんですから強くしたって意味ないじゃないですか──
──やめましょうか。どうせこの設定が生きる場面なんてほぼありませんし──
シナリオ会議の時に、《《消えた》》設定……!
私の書いたシナリオには存在した能力!
それを思い出すと同時に突き出した右手を中心に私の体が、私の《《魔力》》が燃え始めました。
でも、魔力が燃えるならそれこそ魔力制御でその部分の魔力を切り離してっ……。
ただ、私が冷静で居られたのはその瞬間までで。
──熱、炎、火災、火傷、……そして、死。
背筋を駆け上がる濃密な死の予感。
フラッシュバックするのは、前世での私の最期。
「嫌っ!いやぁぁぁぁぁ!火、火が!ひぃぃぃぃぃ!」
無様に、バタバタと燃えた腕とそこから広がる炎を振り回しながら転がり、恐怖に顔を歪めながら情けない悲鳴を上げ……。
「……メリー?」
私のあまりの情けなさに呆然と私を見つめるルテの顔を見て……。
最早、右半身全体へと広がった炎の恐怖と熱さ、そして火傷の痛みに耐えかね……。
「《《また》》、焼け死ぬのは……、いやだぁ……」
意識を、手放しました。
☆★☆★☆★☆
曇らせ「今作には出番がないとでも思ったか?」
ということで、上手に焼けました。
そりゃ火災で死んだ人が炎に巻かれて正気ではいられませんよね?
で、改めてタイトルをご覧ください。
「ヤンデレ悪役令嬢」
そう、病まないとタイトル詐欺になっちゃうんです。
病む原因のトラウマを全て取り除いた末に、取り除いた本人が病む原因になる。
うーん、因果。
ということで、次回「全員殺しました」
更新予定は6月22日20時の予定です。
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