第12話 閲兵式(デビュタント)の会場へ
さて……、勝負の日当日と相成りました。
今日を上手く乗り切ればルテは聖女と結ばれてハッピーエンド。
しくじれば大火傷を負っての女傑ルートでふぁっきんです。
あとまあ、聖女とも出会わず、王子の喧嘩にも巻き込まれない何事もなかったルートが存在する気がしますがそれはそれでアリだと思うのでそうなった場合もセーフ判定としましょう。
あ、聖女が別ルートに入る条件はルテと出会わずに帰宅して、帰宅途中にケモミミ巫女さんに声をかけられる事なのでお城に居る間は考えなくて大丈夫です。
「そういえばルテ、聞きました?今年の閲兵式、治癒の魔法を使える聖女様が参加するそうですよ?」
なお、流石に事前調査を済ませているので、何かのバタフライエフェクトで聖女が存在しないなんて世界線ではないのは確認済みです。
「ベルクローラ・フィオナ・アリストクラッツ・グレイヴン伯爵令嬢でしょう?存じてますの!メリーが怪我をしたときのために是非とも縁を結んでおきたいと思っておりますの!」
はい、ベルクローラ嬢……。開発チーム内では《《黒ラベル》》なんてふざけた愛称で呼ばれてた主人公ですね。
ちゃんとこの世界でも同じ名前で安心しました。
「ただ、とても珍しい魔法特性なので最初に王が単独で挨拶するみたいです」
「あら、『逃げのナレーシ』なら傷を負わないでしょうし、彼女のお世話になるとは思えませんのに」
「私が仕入れた情報ですと、そこそこ病気とかも治せるらしくって。自分含めた王族が治療の優先権を得るみたいな契約を交わすためだとかなんとか。あと、美人だそうなので息子のために唾を付けとく的な意味なんじゃないですか?」
まあ、いくら先に唾を付けようが出会って一瞬でルテとお互い一目惚れする関係なんですけどね。
……うーん、ルテもついに親もしくは姉代わりだった私から離れていくんですねぇ。今後が幸せである事は確定ですがちょっと寂しくもあります。
「美人といっても、どうせメリーには敵いませんの!わたくしの理想のお顔をしておりますもの!」
「ありがとうございます、ルテ。ルテも私の理想のお嬢様ですよ」
……だから、今日は、何があっても守りますからね。
☆★☆
自家用車にて執事さんに運転してもらって王城へ。
……ネタで城の名前をレッドノア城にしてたんですが、これちゃんと正史《受信した電波》だったんですね。
まあ、流石にバリアーを張ったり紆余曲折あっておっさんが塩の塊になったりはしませんので安心してください。
「ふふっ、保護者同伴で来城した皆さんよりわたくしとメリーのペアルックの方が目立っておりますの!注目が心地良いですの!」
「……気持ちいいからって脱がないでくださいね、ルテ?」
「……が、頑張って我慢しますの」
うん、保護者も腹心も連れず一人であることに不安を覚え、不躾な視線の集中攻撃を受けて疲弊するトラウマだらけの悪役令嬢はここには居ないようです。
正直、それだけで私が転生した甲斐があったと胸を張れますね。
なんなら、ここに急に隕石が降ってきて私に直撃して死んでもまあ、しょうがないかと思えるぐらいにはこの、お城で堂々と胸を張って歩くルテの姿に満足しちゃってたりします。
さて、現在ちょうどお昼なのですが、これから数時間は同期の貴族達と交流を深めるためのコミュニケーション用タイムです。
ここで、本当の貴族ならば上位者への声掛けは禁止、相手から声をかけてもらうのを待つみたいなルールがあるんですがアトランティス貴族はなんちゃって貴族ですからね、そんなめんどくさいルールはありません。
なので……。
「失礼、私はポフラン子爵家の長女、リーズリットと申します。私、それなりにあちこちの交流会に出席させてもらっていますのですけれど、お二人を見かけたのは初めてなものですから……。お名前を伺ってもよろしいですか?」
とまあ、見るからにおしゃべり大好き!みたいな子に声をかけられたりするわけですね。
ちなみに、交流会ってのは文字通りの貴族令嬢令息を集めての交流会ですね。
純粋に、友達を多く作っておいたほうが戦場で助け合えますよって理由で皆で集まって、共通の趣味や嗜好を持つ仲間を捕まえるための会です。
アトランティス貴族はぎっちり詰め込み教育が必要なため、家庭教師とマンツーマンで勉強する関係上、学校みたいに同世代の友人を見つけられる場所が非常に少ないですから。
まあ、科学技術が前の地球と同じ感じで発展してるのでネットで捕まえた友人はいるんですが、「アトランティスにおいでよ!」とはそうそう言えませんからねぇ。
外の世界的には、紛争地域並の危険地帯扱いですし、ここ。
で、交流会ってのは親の繋がりで声をかけられて参加する感じの催し物なんですが……。
あの放置系毒親がそんな事に手間を割くと思います?
……ということで、私もルテも地味に同世代のリアル友人が居ないボッチ枠だったりするんですよねー。
「ええ、親がクズすぎて放置されていたので交流会にも競技会にも参加冴えてもらえませんでしたの!わたくしはリシェルテ・ティルテ・グリム・リスクラフト・ザーツバルム・アルトシュリア。アルトシュリア公爵家の長女ですの!」
「あれ?リシェルテ・ティルテ・グリル・リスフラフラ・ザッハトルテ・アルトシュリアでは?私と最初に出会ったときはそう名乗ってましたよ?」
「メリー!流石に5歳の時のお話を持ち出してくるのはずるいですの!」
うーん、ルテはやっぱり少しぷんすこしてる顔が一番可愛い気がします。
「っと、私も名乗らせていただきますね。リシェルテ様の腹心、アイゼンヴァルド公爵家が次女、ジェイドメリア・リーリア・スタックス・アイゼンヴァルドと申します。以後お見知りおきを」
リーズリットと名乗ったキリッとした如何にも友達が多そうな金髪の少女は、私とルテの気安いやり取りにほんの少しほけっとしてましたが……。
「ふふっ、お二人とも大変仲がよろしいのですね。お揃いの出で立ちも似合っておりますし。あの美しい二人は誰だろう、と皆で首を傾げておりましたのよ。……えっと、その、大変な思いをされている様子ですね?」
……この子、気遣い上手ですね?
というか、普通にコミュ強キャラなんでしょうか?
相手を褒めていい気持にさせつつ、気遣いをするふりをしながら一番の疑問点に切り込み、そのやり取りで不快感を抱かせない。
これは友達多い人種の特徴です。
「わたくしにはいつもメリーが寄り添ってくれていたので全然平気ですの!リーズリットさん、以後お見知りおきくださいね」
「はい、リシェルテ様にさみしい思いをさせない一心で可愛がってきましたので。リーズリット様はお気になさらずに」
「まあ、素敵な主従ですのね!どうです?あちらで私達と親睦を深めませんか?」
極めて一般的な申し出に、眼をぱちくりさせるルテ。
……まあ、今までこういった普通の人との普通の会話とかしてきてませんもんね。
「ええ、お受け致しますね。……この通り、リシェルテ様は少しばかり世間知らずなものですから、色々教えて頂けると助かります」
「……え?……あ、メリー?あ、その、話を勝手に進め……」
「ふふふ、黙っていると怖いぐらいの美人さんですけど、口を開くととても可愛らしいのですね、リシェルテ様!私とても興味が湧いてきました。ジェイドメリアさんとご一緒に沢山お話しましょうね?」
「え?あの、え?……よ、よろしくおねがいします?」
戸惑うルテも可愛いですね?
まあ、どうせ式典の開始までは暇ですし、友人を作っておいて損は無いので同年代のお嬢様方に目一杯ルテの可愛さをアピールしてくるとしましょう。
トラブルの気配もありませんし、フラグも大体潰してますし……。
いやあ、平和っていいですね。
☆★☆★☆★☆
またそうやってフラグをたてるー。
ということで、閲兵式と書いてデビュタントと読ませる世にも物騒なパーティー会場でした。
さて、お膳立ては済みましたし役者も全員会場入りしましたので……。
次回から、物語が動き出します。具体的にはタイトルの方向に向かって。
ということで、更新予定は6月20日20時。
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