表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第1章 赤髪の剣士と英雄
8/26

第8話 継がれし加護

「あの人が、神官ですか」


 レンドルは祈祷場の前に立った人物を見ながら、ネオネスに問いかけた。


「そうです、神官です。祝詞(のりと)を読みます」


 そして、ネオネスに案内され、レンドルはネオネスのすぐ横に立った。


「どちらでも良いです。片膝をつき、片手を胸に当てながら、眼を閉じてください。そして、祈りを捧げてください」


 レンドルは言われるがまま、右手を胸に当て、膝を突き、鞘のある左足を前に立てた。


「そして――加護を得たいと、強く願ってください」


 神官が両手を太陽に向けて掲げ、祝詞を呟く。

 レンドルは、その祝詞にエルフの言葉が聞こえた。全部は分からない。だが、母さんから教えてもらった言葉だった。

 やがて、呟きは消え、静寂が訪れた。


 ――強く願え。


 ネオネスの言葉が、胸の奥で響く。


 レンドルは目を閉じ、炎の魔法を使えるようにと願った。

 そして、ブルード教官のような身体強化がほしいと。


 その瞬間――レンドルの体に何かが流れ込んできた。


 ――なんだこれは。


 熱なのか何なのか分からない、確かに体を流れるものが、奥まで染み込んでくる。

 不思議な感覚に、思わず目を開けてしまった。


 足元から伸びる無数の光の糸がぼんやりと見える。

 それが、レンドルの体へと繋がっているのが見えた。

 そして、その糸は神官にも伸びていた。


 金色と銀色の光が周囲で渦を巻いている。青い粒が現れて、それも巻き上げられ混ざり合う。

 初めて見るその光景は、美しかった。思わず、目を奪われた。


 光はやがてレンドルを中心に円を描きながら収縮してきた。

 そして、一気にレンドルの中に集まった。


 そのとき、体が燃え上がるような、焼けつくような感覚に襲われた。

 魂と肉体が離れていくようで、恐ろしかった。


 光は完全に消えた。


 静かにネオネスが声をかける。


「おめでとうございます。加護を授かったようですね。もう立ち上がってよろしいですよ」


 おそらく、一分ほどの出来事だった。


 レンドルは、信じられなかった。

 思わず、ネオネスの顔を見つめる。


 ゆっくりと立ち上がると、体中に満ちる力がはっきりと感じられた。

 むしろ溢れ出ている、そう言っても過言ではなかった。


 ――加護。これが、加護か。


 その瞬間、レンドルの足元から、さらに光が溢れだした。

 今度は金色の光が、銀と青い光を複雑に編み込まれてレンドルを包む。

 先ほどと違って、神官には光の糸がつながっていない。


「ネオネスさん、いったい何がッ!」


 思わずレンドルは声をあげ、助けを求めるようにネオネスに呼びかけた。


「まさか――」


 ネオネスが驚愕し、眼を見開いている。


 そしてさらには、紅い光が編み込まれた光を這うように走った。


 大きく光が爆ぜ、レンドルに集約された。


「くッ熱い、体が燃えるようだ。何だったんだ……ネオネスさん、今のは」


 レンドルの呼吸が乱れ、思わずうずくまってしまった。体が悲鳴を上げている。さっきよりも焼けつくような感覚。本当に自分が燃えてしまうかのようだった。

 レンドルはネオネスを見た後、周りを見渡した。

 静かな神殿のままだが、神官も護衛の人たちも、緊張しているようだった。


「私も、見るのは初めてです。……もしかしたら、強力な加護を得られたのかもしれません」


 ネオネスが、神官のほうに視線を向けた。視界の端で、神官は一礼し、そのまま静かに祈祷場を後にした。

 剣を携えた付き添いも、それに続く。


「大丈夫ですか。立てますか」


 レンドルは、少しずつ熱が落ち着いていくのを感じた。


「なんとか……」


 レンドルはゆっくりと立ち上がった。まだ体の中が熱い。肌も脈打つ感覚が止まらない。


「何の加護を授かったかは、私や神官に話してはいけません」


 ネオネスは静かに手を伸ばし、視線を誘導する。


「あちらに神殿騎士レオニード様がいらっしゃいます。今後は、あのお方がご案内されます」


 何だったのかは分からない。ただ熱い。しかし、加護を得た感触は確かなものだ。

 レンドルは自然と笑顔になっていたのに気が付いた。

 その足取りは軽く、神殿騎士のもとへ向かった。


 そういえば礼を言ってなかった。

 ネオネスに向かって振り返り、礼を伝えた。


「ありがとうございます!」


 広場で、ガダンに突き飛ばされても動じなかった男が、レンドルを見て驚いているように見えた。

 すぐにネオネスは頭を下げ、小さく礼をした。


 ――銀瞳が、揺らいだように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ