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銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第2章 銀髪の少女と閃光
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第70話 夕日の沈む死者の国 4 ―― 宙に舞った光の剣

 要塞の城門へと向かう途中、ダロムとザッサがいた。

 彼らの周りには、動かなくなった屍人が数体切り刻まれているのが見える。

 こちらが気づくよりも早く、ダロムが手を上げて呼びかけてきた。


「レンドルか!? 生きてたか!」


 おびただしい屍人の返り血を浴びているのがわかる。倒れた兵士が、すぐに屍人になり、新鮮な体を容赦なく切り捨てたのだろう。


 ジークの息が荒い。呼吸を整えたほうがいいだろうと判断し、いったん足を止めた。


「ダロム、ザッサ。そっちも無事だったんだな」


「ああ。だが、何が起きているのかわからん。それに、壊れた城門を塞がないと、死人が増えるばかりだ」


「今から城門を塞ぎに行く」


「どうやって!? 巨人族が暴れていて近づけないぞ」


「ラクロアンの騎士たちが戦っていたはずだ」


「ああ、いた。だが、いつまでもつか」


 ラクアたちは、まだ巨人族と交戦中のようだ。


「なら、二人とも俺についてきてくれ。彼女――ジークが氷の魔法で塞ぐ」


「そんなことできるのか?」


 レンドルはジークに目配せをした。ジークは何かを言いたげだったからだ。


「城門を塞ぐほどの氷を作るには時間がかかるわ。それに近づく必要があるの。……それで魔力も、多分尽きる」


 状況は絶望的なままだ。彼女が城門を塞ぐにしても、巨人族がこちらに気づく前に終わらせないといけない。しかし、現状はラクアの活躍で何とか防いでいるが、いつまでもつかは分からない。


 ダロムとザッサは言葉を失っている。巨人族がいるなかで、そんなことは出来ないと分かっているからだ。


「やっぱり、巨人をどうにかしないと、ダメみたいだな」


 死闘の喧騒はいたるところで聞こえる。だが徐々に小さくなっている。屍人たちは確実に減っているのが分かる。しかし城門に迫る屍人たちが侵入したら、どれほど屈強な騎士たちが奮起しようとも、防ぎきれないだろう。そして、あの巨人族の傭兵が、さらに死人を増やし続けるだろう。


「ダロム。その巨人族と戦っている中に、閃光のラクアがいるんだが――」


「あの巨人族とやり合ってるのは、あのラクアなのか!」


 ダロムが驚愕の声をあげた。ヘルムで顔が隠れているが、驚いた表情なのは間違いない。


「あいつは俺を殺そうとした」


 ザッサとダロムがお互いを向いて、レンドルに向き直った。


「俺たちと別れた後、そんなことになってたのか……」


「それと、彼女――ジークの護衛を頼みたい。彼女は、閃光のラクアに脅されている」


 レンドルは一度言葉を区切って、ダロムとザッサを見た。


「だから、あいつは敵だ」


「それは構わないが、お前はどうするんだ」


「俺も巨人族と戦う。城門から離れるように動くしかない。ジークはその間に塞いでほしい」


「わかった……。でも、死んじゃ駄目よ」


 ジークの不安な表情は、さらにひどいものになった。彼女の呼吸は少し落ち着いてきている。大丈夫か、と声をかけると、小さく頷いた。レンドルは、それ以上声をかけなかった。


 本当なら城門まで行きたくないだろう。だけど、今は彼女の力が必要だった。彼女自身も、それを分かっているからこそ、ついて来てくれていた。塞がなければ、どうせ、みんな死ぬのだから。


 レンドルは城門に向かう途中で護衛騎士の二人に、ラクアとのやり取りを伝えた。突然仕掛けられた一騎打ちのこと。光の斬撃のこと。人の意識を操る魔法を使っていることも。魔法に掛けられた相手を、外から魔力で包むことで防げることも話したが、ダロムから難しいと返答された。


「それは、お前の魔力量だからできたことだ。だが、やってみるしかないな」


 ダロムは光の剣について、深掘りしてきた。すると、「まさか」という呟きが聞こえたが、そこで話すのをやめた。目の前で、暴虐の巨人の拳をまともに受けた騎士が、紙屑のように吹き飛ぶ。


 光を帯びた剣が宙に舞う。あの剣は、ラクアが携えていた魔法の剣だ。騎士は土嚢へと叩きつけられ、物言わぬ屍のように動かなくなった。


「――ラクアでもだめなのか!」


 レンドルは思わず叫んだ。


 残って戦っていた騎士たちから戦意が失われていくのが、レンドルにははっきりと分かった。

 絶望を感じさせる光景に、レンドルは、共に戦っていたらと後悔するが、何が正しい選択だったなんて、わかりようがなかった。


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