表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第1章 赤髪の剣士と英雄
32/87

第29話 ルベリア王国遠征 ―― 蒼髪のサナロア 2

 無駄な血を流さずに済んだ。そう息をついた瞬間も束の間だった。

 サナロアを見た傭兵団の指揮官は、彼女をイステアと呼んだ。

 最初、姉がいると話していたサナロアのことだと思わなかった。


 レンドルは思わず剣を抜いて、それをサナロアに向けた。

 何でもありの戦場で、仲間が入れ替わっていたのかと、最悪の想像をしてしまった。


 だが、それはすぐに間違いだと気づくことになった。

 サナロアが自分の姉がいると、低く震える声で怒りを発したからだ。


「レンドルは、なんで剣を抜いたの?」


 それを見ていたタタが、不思議そうな顔で声をかけてきた。

 レンドルが抜いた剣に、指揮官は固まっていた。


 この場で、サナロアがイステアだと思っていたのは、レンドルだけだろう。

 ずっと一緒にいて、鎧も兜も同じなのに、考えすぎだった。レンドルは急に恥ずかしくなった。


「……いや、何でもない」


 すぐに、レンドルは剣を鞘に納めた。サナロアが一瞬こちらに眼を向けたが、指揮官に向かって一歩前に出る。

 その鋭い目の奥に冷たいものを感じる。姉を斬るつもりでいる。そのために戦場に生きてきた。


「イステアがいるんだな、どこだ」


「あんた……姉妹なのか、同じ顔だ」


 指揮官も彼女の雰囲気を感じたのだろう、喉を鳴らして息を飲んだ。

 ゆっくりと振り向きながら、自身の後方を指さす。


「さっきまで、そこで話をしていた」


 何も言わずに、サナロアの足がその方向へ向いた。


「行かせたら?」


 タタが静かに言った。復讐するならすればいい。そういう顔だった。


「邪魔をするな」


 サナロアの足が止まらない。レンドルは前に出た。


「レンドル。行かせてもらう」


 彼女が姉に会ったらどうする。さっき自分がとっさに剣を抜いたように、彼女も抜くかもしれない。

 サナロアが剣を抜く理由は、レンドルのそれとはまったく違う。

 だったら、剣を抜かせなければいい。


「なら、剣は預けてくれ」


「なッ……!」


「降伏した相手を、個人の理由で切れば戦争契約の違反になる。お前は副官の立場だ」


「レンドル! 貴様!」


「それに、俺のように懲罰兵になれば、家の名誉は守られないだろ」


「なら、私は副官を――」


「副官を止めるなら、拘束する」


「――こ、拘束するだと!? 仲間をか! お前がそんな奴だとは思わなかったぞ!」


「そうだ。仲間だからだ。俺の戦友を、俺のように懲罰兵にはさせない」


 サナロアがレイピアを抜いた。レンドルに向ける。


「俺に剣を向けるのは構わない。どんなに早くても、俺は止められる」


「うぬぼれか!」


「そうだ。だから、今ここにいる」


「くッ……クソッ! これでいいな!」


 石畳に剣を打ち付けると、見事にそれが刺さる。

 タタが、サナロアと剣との間に立つ。

 それを彼女が睨まないはずがなかった。


「イステア! 出てこい!」


 サナロアが大声でイステアを呼んだ。


 沈黙が続く。徐々に人が道を作ると、その先から武具を外した蒼髪の女性が歩んできた。


「サナロアが二人だ」


 タタの言葉にレンドルは驚いた。レンドルもそう思わざるを得ないほど、同じ顔だった。イステアだろう女性の髪はサナロアより少し長い。


「久しぶりね、サナ」


「そんな呼び方を許すと思うのか!」


 サナロアが鞘に手を掛けるが、剣は無かったため手が宙を掴む。

 剣を預かってよかった。会った瞬間に抜こうとした。剣を抜く構えのまま、二人は再会した。


「人族って複雑だよね」


 タタが静かに呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ