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銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第3章 碧眼の狼と精霊
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第105話 ルベリアの罠 3 ―― 先鋒隊の行方

 レンドルたちは地下坑道を抜けて、森の中の開けた場所に出た。

 先鋒隊は見つからなかった。

 タタもいなかった。


 そして、連絡兵が戻ってこられなかった理由は、明白だった。

 地下坑道は確かに一本道だったが、中ほどのところで重い鋼鉄(こうてつ)の扉があり、通路を遮断していた。

 天井から扉が落ちてきたようで、先鋒隊はそれを破壊できず、先へと進んだようだった。


 先鋒隊が通ったあとに、仕掛けが作動して扉が閉まったようだった。

 マクネスの罠だったのか、それとも知らなかったのか、本人に聞かなければわからない。


 そして、その扉から二十メートルほど先で檻が開いたままの部屋があった。

 獣が閉じ込められていたのか、酷く悪臭のする部屋だった。


 床には血痕(けっこん)がこびりつき、這いずり回ったような痕跡があった。

 重い扉が落ちると、檻もすべて開く仕掛けらしい。

 檻は全部で六つあった。


 暗闇の中、僅かな明かりでは襲ってくる獣の姿さえ、まともに捉えられなかったはずだ。

 閉まった金属製の扉の前で、後発の部隊を待つこともできなかったのだろう。


 そして今、黒い塊に気がつき、レンドルはその前で足を止めていた。

 その答えは、目の前にあった。


 黒い体毛の狼の死体――魔獣だ。

 レンドルが加護を得た後に、街中で戦った狼の魔獣より、一回り小さかった。

 魔獣を捕らえて、わざわざ坑道に閉じ込めていたのか。侵入者への罠なのか。

 少し離れたところに、もう一体、狼の死体があった。


 目の前の死体には、見覚えのある短剣が何本か突き立っている。

 タタの短剣の一つが、狼の目に深く突き立っていた。


 狼の牙の間には、鮮やかな赤い血が残っていた。

 魔獣の血はこんな色ではない。もっと黒ずんだ赤だ。


 激しい戦闘があったことは間違いない。

 狼の身体には、無数の切り傷が刻まれている。


 この狼の魔獣は黒い毛に覆われている。

 狭く暗い坑道の中では、まともに戦えるはずがない。


 闇と同化した魔獣を見つけることは難しい。

 逃げた先、つまり、この開けた場所で狼を殺した。

 だが、残りの四体の魔獣と先鋒隊の行方はわからない。

 ばらばらになって逃げたのかもしれない。


 雨が、血の匂いも流し、全ての音を掻き消していた。


 普通に考えれば、魔獣を追いかけるなんてことはしないだろう。

 魔獣に連れ去られた仲間を、助けに向かったのかもしれない。

 タタなら何か痕跡を残しているはずだ。それがないということは――。


 レンドルは歯を食いしばった。


 先鋒隊は十名ほどいた。

 それに対して魔獣が六匹もいたなんて、通常の冒険者たちからしたら絶望的だ。


 ただ、加護持ちや上級騎士たちであれば、何とか切り抜けることができたかもしれない。

 二体の魔獣を殺したことさえ驚愕すべきだが、戦える証拠だ。


「タタは無事なはずだ。あいつが、簡単にやられるわけがない」


 レンドルは、自分の声が震えているのがわかった。


「もちろんだ。タタは強いからな。生きる目的もある。何があっても、生きて帰ろうとするはずだ」


 サナロアが、レンドルの肩に手を置く。

 目が合う。

 その眼には、悲しみはない。生きている、そう信じている。


 だから大丈夫だと信じることにした。

 それなのに、レンドルの心臓は激しく高鳴っていた。


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