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銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第1章 赤髪の剣士と英雄
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幕間 ネオネス ―― 決意

 ネオネスの目の前には、サンガード皇国の侯爵である、ブルード・ウィンダスが座っていた。

 精悍なその顔立ちと、その眼光は年を重ねるごとに鋭さを増しているように見える。


 サンガード皇国の建国から、サンブラントに仕えたこの国にとっての偉人。

 侯爵の立場にありながら、戦闘技術を腐らせることなく、兵学院で戦う術を教えている。

 周りからは尊敬の念を抱かれている。


 ブルードの周りには、神殿騎士が並び、ネオネス一人を囲んでいる。

 彼らの中にも教え子がいる。この男に信頼を置いているのが、これまでの付き合いから分かっていた。


 ネオネスたちエルフが、こうして処刑されていないのは、この男のおかげでもある。

 サンルードの血脈にこだわりがあり、その血脈を視るネオネスの《権能》を利用しているからだ。


 だがネオネスは、この男のことを、あまり好ましく思っていなかった。

 この男からは、なぜか血の匂いが消えない。


「半年振りか、賢者ネオネス。今日来たのは加護についてだ」


「丁度よかった。今日サンルードの血を持つ若者が来たのですよ。加護を与えたところです」


「ほう! そうであったか。それならばよい」


「いつも通り、レオニード様にご案内しています」


 そういって、ブルードのそばにいるレオニードに目を向ける。


「確かに引き受けました。凄まじい魔力が渦巻いていたので、強い加護を得たようです」


「うむ。よいな。その若者は、どこのものだった?」


「ファレン・ブレイズの息子、赤髪の――」


 机を叩く音が部屋に広がった。


「ばかな!」


 ネオネスがレンドルの名を口にしようとしたところ、ブルードはそれを遮った。

 立ち上がり、身を乗り出してネオネスを睨んでいた。


 神殿騎士たちも、驚きのあまり、がちゃがちゃと鎧を鳴らしている。柄に手を掛けたものがネオネスの視界に入った。


「レンドルだと……レンドルがサンルードの血脈だと。そんなはずはない。おい、ネオネス、間違いないのか」


「……外れたことは、ありませんが。何か問題が?」


「いや……レンドルは俺の教え子なのだ。俺はファレンとも付き合いが長い。それに気が付かなかったので、驚いたのだ」


 厳しい顔だ。眉間に強く皺が寄っている。

 ブルードは、静かに椅子に座りなおした。顔の前で両手を組んでいる。明らかに焦りが見える。


 ブルードが、以前話していた内容を思い出し、確かめるように言葉を紡いだ。


「以前、聖人サンルード様に連なるものを、保護していると聞いていました。近くにいたのなら、それは確かに驚きますね」


「……ああ、その通りだ」


 ネオネスは、この男のサンルードの血へのこだわりが、異常なものだと感じた。


 ブルードが視線を祈祷場に向けたのを見て、フードで隠すようにネオネスは魔力を銀瞳に込めた。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ┃+ ブルード・ウィンダス(サンガード侯爵) 44歳

 ┃

 ┃+ 身体強化の加護(小)

 ┃

 ┃+ サンルードの従者となり、ダイナレスト大陸に渡ってきた。

 ┃+ サンブラントに仕え建国の偉人とされる。

 ┃+ 加護を持ったものを、ラクア(ラクロアン)に引き渡している。

 ┃+ サンルードの血脈を消している。

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ――なんてことだ。


 この男と初めて会ったときには、こんな(おぞ)ましい情報はなかった。

 ラクロアンのラクアに、加護持ちを引き渡している。なんのためにだ。

 この男はサンルードの従者だったはずが、その血を――殺している。

 ネオネスは思わず、顔をしかめそうになったが、すぐに表情を整えた。


 あの青年に、加護を与えるべきではなかったのかもしれない――しかし、もう遅い。

 彼を、危険な目に合わせてしまうことになった。

 この男、ブルードの狙いは一体なんだ。


 ――いや、もうこの神殿には用はない。


 サンガード皇国を脱出し、ユグの森に帰る。


「今日の用はそれだけだ」


 そう言うと、静かに立ち上がりブルードは部屋を出た。

 神殿騎士たちもブルードが去るまで、ネオネスから視線も体の向きも外さなかった。

 やがて、神殿騎士たちも引き払い、部屋にはネオネスが残った。


 ネオネスは、しばらく考えていた。


 加護が、狙われているのか。


 ――まさか、奪っている。


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