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銀と氷のジークリンデ【リメイク版】  作者: 四十早
第1章 赤髪の剣士と英雄
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幕間 ネオネス ―― 予感

 レンドルは加護を得た。それは間違いなかった。


 ネオネスは神殿騎士に向かって一礼した。

 加護を授かった青年を、確かに引き渡したという合図だ。


 何の加護を得られたか、エルフは関わらない。

 それがサンガードと約束した内容だ。


 そして、再び銀瞳に魔力を込め、《権能》を使ってレンドルを見た。

 聖域はもうなかったはずだ。サンブラント皇帝が加護を継承したのだから。


 数秒の後、ネオネスは祈祷場から足を遠ざけた。


 銀瞳でみた、レンドルの情報を改めて見直した。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ┃《聖樹の恩恵》により、《英雄の加護》を取得。

 ┃魔力操作により、身体を強化する。

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「《聖樹の恩恵》から、《英雄の加護》を得られるのか……」


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ┃エルザの《炎の加護・因子》を取得。

 ┃願いが叶えば、火属性の魔力を得る。

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「因子か、初めて見るな」


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ┃シュバーツの《竜の加護・因子》を取得。

 ┃願いが叶えば、加護に干渉する。

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「《竜の加護》……これも因子だ。願いが関係しているのか」


 加護に干渉する。自分の加護なのか、相手の加護に対してなのか。


 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ┃モーリアの聖樹の祝福を取得。

 ┃加護の反発を抑える。

 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「なぜか、祝福を得た」


 これまで、《聖樹の恩恵》は加護を与えるだけだったはずだ。


 聖樹を視ても名前は分からなかったが、聖樹の名前はモーリアだった。

 そして、レンドルの血には大商人モーリアがあった。

 聖樹と商人の名前が一緒なのは偶然ではなさそうだ。


「加護の反発を抑える……なるほど、これが複数の加護を得られた理由なのか」


 ネオネスの知る限り、加護は複数持てない。互いが反発しあった結果、死んでしまう。

 以前、聖樹から複数の加護を得ようとした仲間がいた。しかし、その仲間のエルフは死んでしまい禁忌となった。

 モーリアの《聖樹の祝福》が反発を抑えている、そういうことなのだろう。


 ネオネスの手は、かすかに震えていた。

 恐怖ではない、期待だった。

 赤髪の青年は、世界に風穴を開けるかもしれない。

 加護を複数持てる者など、これまでいなかったからだ。


 アスフィが、声をかけてきた。


「ネオネス、大丈夫? これを」


 それは、ネオネスに手渡された。小さく折りたたまれた布切れだった。

 この部屋には太陽の光が入らない。

 ランプの光を頼りに、布に書かれた文字を読んだ。エルフの言葉で書かれている。


 ――丘、ブルードの別邸、地下――


 かすかに読める文字で、そう書かれていた。

 だが、この字をネオネスは知っている。仲間のロッサルの字だった。


「アスフィ。茶番は終わりだ。もうここに用はない」


 静かにそう言って、ネオネスは一瞬で布を燃やした。炎の魔法で。

 捕らわれている、ほかのエルフの居場所が判明したことを示していた。


 アスフィの目がランプの光に揺れながら、ネオネスをじっと見ている。


「いつ……」


 かすれた、涙の混じる声でアスフィがネオネスに答えを求めた。


「ルベリア遠征がある。その日の夜に証紋契約を燃やす。仲間を助けてここを出る。アスフィ、君の弟もだ」


 アスフィの頬に一筋の涙が流れた。

 彼女の弟は、捕らわれたままだった。


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