幕間 ネオネス ―― 予感
レンドルは加護を得た。それは間違いなかった。
ネオネスは神殿騎士に向かって一礼した。
加護を授かった青年を、確かに引き渡したという合図だ。
何の加護を得られたか、エルフは関わらない。
それがサンガードと約束した内容だ。
そして、再び銀瞳に魔力を込め、《権能》を使ってレンドルを見た。
聖域はもうなかったはずだ。サンブラント皇帝が加護を継承したのだから。
数秒の後、ネオネスは祈祷場から足を遠ざけた。
銀瞳でみた、レンドルの情報を改めて見直した。
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┃《聖樹の恩恵》により、《英雄の加護》を取得。
┃魔力操作により、身体を強化する。
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「《聖樹の恩恵》から、《英雄の加護》を得られるのか……」
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┃エルザの《炎の加護・因子》を取得。
┃願いが叶えば、火属性の魔力を得る。
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「因子か、初めて見るな」
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┃シュバーツの《竜の加護・因子》を取得。
┃願いが叶えば、加護に干渉する。
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「《竜の加護》……これも因子だ。願いが関係しているのか」
加護に干渉する。自分の加護なのか、相手の加護に対してなのか。
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┃モーリアの聖樹の祝福を取得。
┃加護の反発を抑える。
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「なぜか、祝福を得た」
これまで、《聖樹の恩恵》は加護を与えるだけだったはずだ。
聖樹を視ても名前は分からなかったが、聖樹の名前はモーリアだった。
そして、レンドルの血には大商人モーリアがあった。
聖樹と商人の名前が一緒なのは偶然ではなさそうだ。
「加護の反発を抑える……なるほど、これが複数の加護を得られた理由なのか」
ネオネスの知る限り、加護は複数持てない。互いが反発しあった結果、死んでしまう。
以前、聖樹から複数の加護を得ようとした仲間がいた。しかし、その仲間のエルフは死んでしまい禁忌となった。
モーリアの《聖樹の祝福》が反発を抑えている、そういうことなのだろう。
ネオネスの手は、かすかに震えていた。
恐怖ではない、期待だった。
赤髪の青年は、世界に風穴を開けるかもしれない。
加護を複数持てる者など、これまでいなかったからだ。
アスフィが、声をかけてきた。
「ネオネス、大丈夫? これを」
それは、ネオネスに手渡された。小さく折りたたまれた布切れだった。
この部屋には太陽の光が入らない。
ランプの光を頼りに、布に書かれた文字を読んだ。エルフの言葉で書かれている。
――丘、ブルードの別邸、地下――
かすかに読める文字で、そう書かれていた。
だが、この字をネオネスは知っている。仲間のロッサルの字だった。
「アスフィ。茶番は終わりだ。もうここに用はない」
静かにそう言って、ネオネスは一瞬で布を燃やした。炎の魔法で。
捕らわれている、ほかのエルフの居場所が判明したことを示していた。
アスフィの目がランプの光に揺れながら、ネオネスをじっと見ている。
「いつ……」
かすれた、涙の混じる声でアスフィがネオネスに答えを求めた。
「ルベリア遠征がある。その日の夜に証紋契約を燃やす。仲間を助けてここを出る。アスフィ、君の弟もだ」
アスフィの頬に一筋の涙が流れた。
彼女の弟は、捕らわれたままだった。




