第99話「転・電車に揺られて2」
プラネットコアサーバーを再起動してから解ったことがあったので桃花はGM姫に話しかけた。
「姫ちゃん、何か感覚的にVR機を付けてた時と似たような現象になってるんだけど……?」
「……? というと?」
「眠れない、というか……神経がある一定の周波数? 脳波?〈落ち着き〉まで行くと胸が跳ね上がる。つまりエレキフィールドの状況下みたいに眠れなくなる。さっきまでサーバーはオフにしてた。現実の機械も全てオフにして、なのに物語の機械がオンになってるから眠れない。現象が逆転してるのよ」
普通だったら現実の機械の電源を切れば眠れるはず、なのに〈物語が優先されて〉いるせいか、物語で電源をオフにしない限り、ずっと起動し続けている。……ような感覚……としか言いようがない。現実の本人はうたた寝なのでメモも描けないしまどろみなので、1週間サーバーをオフにしたからこそ気がつけたが……。
明らかに〈寝心地が違う〉という違和感。
良いのか悪いのかは判らないが〈現実が下位に、物語が上位になってる〉確かに望んではいたかもしれないが、本当に実現してしまうのなら、それはまた別の話である。
「という訳で、もしかしたら物語でも機械に頼らないほうが上手くいくかもしれない」
「……あー、つまり安全な機械操作がまだ出来ていないから。上手くコントロオールできるまでは自然体のなままが一番ってことか。わかった、物語の機械で異常が起きているのならば、まずは機械の方を止めよう」
とりあえず安全が確保出来ない以上、せっかく作ったがプラネットコアサーバーは〈まだ速い〉ということで再び電源をオフにした。
「ていうか、物語の物理法則が上位に成ってる件は、ほとんど願いを叶える力……世界種クールマ案件じゃな」
というわけで疲れ果てた桃花は自然体のまま、再度寝た……。
「……念の為にワシも寝ておくか……」
そう思い、ちょっと心残り? 思う所もあった天上院姫も念の為にぐっすり8時間睡眠時間を確保して、様子を見ることにするのであった。
翌日、今現在歴2030年4月22日〈月〉
「アイディアノートで反映されなかったから漫画の模写を試したら、えっと……何というか地震が起きたんですけど……?」
左手にアナログ本、右手にアナログペンを持っていたのは天上院咲。
となると模写=二次創作だったのだろうか? なので二次創作の物語の味方が何故か敵判定になっていたとか……もし内容の有無関係なく二次創作、オリジナルじゃないので敵判定だったのなら。確かにあの現象〈吸血鬼対戦は二次創作だらけ〉は解らないでもない。
ついでにオリジナル創作は全く反映されない〈鏡に映らない〉というのも納得できる。
咲は、どうやら沈黙による無演唱魔法どころか左右の腕の道具、持ち物の変化まで魔法として使いこなしてしまったらしい。
戦闘面で言うなら左手にアナログ本とデジタル本の切り替えが可能になり、右手で真昼ノ剣と真夜ノ剣を切り替える、ホンマもんの〈魔法剣士〉スタイルになってしまった。
ちなみに無演唱魔法とは言ったが、口頭による発声は無いが脳内でイメージ〈咲の場合はほぼ言葉〉なので〈無口頭演唱魔法〉かもしれない。一応脳内で喋ってはいるのだ。なので演唱はしている。
桃花は半ば諦めと呆れの半々の感情で。
「下書きでコレかよ……外界どうなってるんだ……まあ熊さんで動いてたなら、あながち納得はしてしまうが……」
解説して良いのかしちゃいけないのか微妙な所だが、どうやら今まで熊さんとフラミンゴさんで動いていたらしい。なので「そりゃ四皇を描いたらそうなる……」とあながち規模感としては納得してしまう自分もいる。
GM姫は指針を示す。
「まぁ、ジャンプだけでコレなら、やはりマガジン、サンデー、チャンピオンの模写もした方がいいだろう。作品名は流石にまだ選んでいないが……1週間分のバランスを考えるとジャンプだけに重責が行ってる〈偏ってる〉のは否めない。今後の天気予報としてはそんな感じじゃろう」
今回の件でオリジナルは何も起きないが、模写だと明確に何か起こると解ったので、繁栄〈?〉の為にはやはり一度原稿に描いたほうが良いだろうと改めて思った。少年漫画だし。
本来ならさっさと本編を描いたほうが良いのだが、それこそ準備段階……というか基礎の土台〈模写の方の基礎土台〉が微妙すぎるのでグラグラだ。なのでどうしても〈アナログの紙で〉なおかつ〈変わらずに所持する〉という名目上どうしても必要な行為だった。
……なにせ高校時代の模写の絵だけで〈コレ〉である、ほとんど一本足打法で野球をしていたような感じで、バランスがとても悪い。
眼の件もそうだし、とにかく四の五の言わず模写が足らないのはよく解った。選り好みをするのはその後だ。
「じゃあさあ、オリジナルも大事だし、模写の基礎練も大事なんだけど、姫ちゃん的な基準はどうなってるの? 皆の願いと姫ちゃんのやりたいことは違うでしょ? それの言語化」
桃花は姫にもう一度基準点として……というか今のやりたいことを聞く。
「え? そりゃあペンタブで作画出来て、カラー絵もクリスタで出来て、小説もPCでネタ出しもバンバン限界までやって、最新のネタにアンテナ張って、AIも活用しつつ、自重はせず想像の限りバンバン表現する……だけど?」
「そうだよね? それが自分優位の場合だよね? なら何故皆のエゴが上位に入って、自分のエゴが下位に入ってるのさ?」
言われてみればそうだった。確かに他人がOKを出している範囲で創作しているようなものなので、それは枠の外にはみ出たら問答無用で切り捨てるみたいな思考だった。本来自分で決めて良いはずなのに他人に決められている。それは教育という名の洗脳詐欺だ。
「仮に体のピクピクのせいで阻止される~~、てなら、どこかおかしい、て話なんだけど。でもその薬だって元はと言えば自分が決めた事な訳じゃん?」
どこでどうしてそうなったかは表現のし過ぎてありすぎてわからん、状態なのだが。決めたのは自分なはずだ、元ネタが自分ならば。
Gペンだって色々理屈をこねた気がするが、要するに〈仕方なく使ってる〉という感じが否めない。小説は流石に書きすぎな所はあたったが、それは解らなかったからであり。別に不必要というわけではない。となると、どこかおかしかったわけである。
まあ、色々迷うくらいだったら鉛筆とGペンを使ったほうが良い、というのが現在のメリットとなっている。今ならどちらでも描けるし。
「えっとー、リミッツ的にはどう思う?」
一応、80点を出したオーバーリミッツに聞いた。
「私? えっとー別に紙に印刷されてるなら何でも良いよ? デジタルでもペンタブでも使っていいし、ただ変わらない紙が欲しかっただけだし。魔神と同じく、元に戻す時の紙が必要だったから。クオリティ下がるの解っててGペンを使いたくないって意味でしょ桃花のは」
後出しした理屈を付けた唯一無二性の事を度外視すれば、現代っ子はGペンを使うとクオリティは下がる。絵に関してはそうだ。
「小説は? 流石に私もAIの意見丸写しは反対だけどさ」
桃花も見た目情報がほぼ変わらないし判らないAIテキスト意見を聞く。当時無かったものだし判断に困るのだろう。
「まあ上手く言語化できないイメージを〈補強〉するって意味なら問題ないはず何だけど……。私が決めて良いのなら計算ぐらいだったら問題なしかな? 誤字脱字の推敲指摘もOk、ただ文法作法に関しては~~正直グレーゾーンに入っちゃうかな~~って気分になるよね」
リミッツ的には。
OKなのは、100ミリリットル30キロカロリーのペットボトル飲料水で、600ミリリットルだとカロリーはいくら? ぐらいの計算式ならAIはOKで。
誤字脱字の読みやすさを整えるという意味でのAIもOK。
NGなのは、自分で創意工夫をした自分の文法をAIによって整然したのは、ほぼキメラ判定だと思っているらしい。
AIの情報流出については正直知らん。そこは最果ての軍勢に任せよう。
「それが自分の言葉の自分の意見?」
「そうだよ、当たり前にPCで執筆するのが今の主流」
GM姫が桃花にある意味今の基準を示す。
ピンクスズの件はネットとジャンプだけで、新聞もテレビも映画もほぼ視ていなかったので一応弁護は出来るだろう。本当に心を読む相手のことは論外である。
ココまでは科学サイドに極振りした場合の〈効率〉の話であり、魔術サイド側のデメリットも考慮したらどうなるのか? は考えが及んでいない。
「あと、科学サイドと魔術サイドって区切りも、結局他人の定規を使ってる事になるから、こっちは〈王道サイドと覇道サイド〉の定義作りのほうが良いのでは?」
「あと、無限の宇宙だと地図作る時に面倒だからエレメンタルワールド用に〈星図〉を作ったら?」
桃花とリミッツが交互に言う。
GM姫もその方向性には賛同する。
「だな、えっと確か王道サイドは四重奏と放課後クラブ、覇道サイドは非理法権天と最果ての軍勢だったな」
姫も今更ながら自分で線引したのを思い出す、とどのところ簡単に言うと派閥だが、確かに思想や戦術がまるで違ったりグループ分けは出来るかもしれない。
「まー簡単に言うと〈神のゲームに純粋に挑んだかどうか?〉というのが判断基準になるような気がしないでもないが……」
あとは純粋に〈犠牲を問わないかどうか?〉というのも判断基準としてはある。
王道サイドの四重奏は混じりっけなしで神のゲームに挑んだし、放課後クラブも自覚なしの仮想空間だったが純粋にゲームとして姫のゲームに挑んだ、だからこそ高得点だった訳だが。ファンタジーで挑んだのとSFとして挑んだのとでこの部分は細分化される。
一方、覇道サイドである非理法権天はそもそも二次創作の寄り道から派生した分岐でありそもそも神のゲームに挑んでいる自覚すら無い。対して最果ての軍勢は外側からやってくる不協和音という名の未観測な外敵から守るためであり最初から世界系として組まれている軍隊の世界観、初めっから大規模戦闘が主軸である理由上「多少の犠牲は問わない」というのが彼らのスタンスである。
そこに昔から脈々と伝わってきた〈王国の心〉という概念から、王と民、市民とどれだけ親密であるか? の信仰力〈人気度〉も重要なフィルターであるのは間違いない。
元ネタは徳か力によるこれまた中国の政治統治思想……だったような気がする。
「そう言えば、〈王力〉なるアイディアも浮かんだな! この場合〈道力〉か?」
王力はこの世界を導ける技量がどれくらいあるか? の数値化・戦闘力みたいな奴だが、今回は保留しておく。
定義確認、この場合の〈道〉とは。進む力、帰る力、未開拓の地を切り開く力、道路、鉄道、水路、電気回線、流れる力などの〈道〉の概念が入っている。
……そうこうしている内に、GM姫が電車に乗るのを飽きてしまった。
「ここらへんで降りるか、ちょっと長居し過ぎた、桃花はそのままスイッチ2持って別のゲームの進行してて。私たちは徒歩でイベントやるわ」
姫も借り物の道に飽きてしまったのだろう、ここから先は自分で道を切り開きたい、ということらしい。
「ほいさっさ、ゲーム機に釘付けになってればいいのね? なんか質問あったら答えるから」
というわけで桃花はゲーム機持って歩くらしい。
というわけで電車を途中下車して降りることにする御一行様。電車はそのまま走り去ってしまった。
「……ここどこ?」
咲は当然のように場所と時間を聞く。
今現在歴2030年4月22日〈月〉おそらく13時00分あたり、場所不明。
「地図も無ければ場所は森だらけ……あるのは駅と鉄道の線路が真っ直ぐ1本伸びているということだけか……」
普通電車にずっと乗っていたというのもあるが、それでも長時間乗っていたので距離的にはかなり進んでいたはずである。
「まあ解ることがあるとすれば、アルフェン号に乗ってた都合上、あの路線はまだ半分以上あったって事だ」
姫がそのように事実を確認するが、真相は不明。東西南北のどの方向に向かっていたのかも結局他人頼みだったので判らなかった。
なんだかんだありつつ目算で14日間普通列車で揺られて行ける距離感、ということになるらしい。
「せめて東西南北は自分で決めてよ」
「んん~~……じゃあ北」
咲が聞き、姫が答える。
「サバイバルで重要なのは現在地に戻れるかどうかだから目印を設置しておいたほうがいいよ、これマイクラの知識ね」
ゲーム機に目を向けながら、桃花はそのように言う。
「じゃな、まず地形を把握して。街があればちょうどいいからテンプレ使って情報を精査しよう」
ここは現実世界じゃないが、例えば北海道の大雪山国立公園から単純に、北へ真っ直ぐ海とか北極大陸とか無視して直進した場合。普通列車で14日間揺られたら、ブラジルのバイーア州に出るらしい。一般的な感覚の距離感としてはそいう雰囲気という話である。
海が見えてきた。
「あー結構綺麗な海だねー」
「水が澄んでるのかな? 治安は不明じゃが」
ここが現実なら治安を守るための刑務所が逆に犯罪組織に利用され根城にされている世界観らしい。……さて、ここはどういう雰囲気なのだろうか?
「前評判は悪いってことか」
真城和季がとりあえず危険察知装置として先頭に出る。とりあえず警戒展開・円陣をしながら一行は進むことにした。




