第96話「結・ノボリクダリ」
「あーなるほどね、何で現実世界の体重が重要なのかは解らないけど。外で人が移動する現象〈ノボリとクダリ〉と、間食によるカロリー計算のことを考えると、咲はVRより、ARゲームのほうがそもそも向いてるかもしれない」
簡単に言うと、外で体を動かすゲームと相性がいい、あと〈食べる〉というカロリー計算と〈走る〉という世界法則からしても、普通に運動とは今出来上がっている世界との相性も良い。
「え!? お姉ちゃんのゲーム遊べるの!?」
さっきから現実での外圧? にうんざりしていた咲だったが、そもそもその外圧が自分達が作った〈一つの理〉つまり桃花の世界がベースとなっているのなら、〈外で遊ぶ運動ゲーム〉とは非常に相性がいいことになる。
咲は姫のゲームを遊びたいし、姫も咲にゲームを遊んでもらいたい。
VRだとネットだからか。何故か無性に噛み合わなかったが、〈外で運動してポイントを稼ぐゲーム〉としてGM姫が思考するのなら、かなり相性が良いかもしれない。
「それが出来るなら、目的地を設定して、ノボリ時とクダリ時の現象をちゃんと操作出来るかもしれない。あとそうだな、すれ違い通信とカロリー計算をゲーム化すればかなり相性が良いかもしれない。提供はコンビニかな……w」
日本の場合、コンビニがかなり身近にあり、そこがパーキングエリア化するので〈歩く・走る・食べる・喋る〉がかなり身近にある。
リングフットアドベンチャーのスナホ版が出ればかなり売れそうである。
「逆に音楽というかCDが売れなくて難しい状況にあるよね」
今はCD屋が売れなくて潰れたり、サブスクリプションでそもそもCDという物を持たない文化になってしまっていた。しかもAI生成のせいで更に追い打ちを食らっているらしい。
「それは時間の始まりと終わりだよね? てことはスケール感かな?」
座標と違い、環境座標ならRLOなので空間の位置特定には役立つ、だが時間のノボリとクダリは時間のスケール感なので時間の動かし方を覚えていないのなら。
Rルート〈分岐〉、Lレイヤー〈多層〉、Oオブザーバー〈観測者〉。
例えば、今現在歴2009年から今現在歴2026年まで。と時間指定すれば、その空間の目的地からノボリとクダリで時間経過が発生する訳である。
つまりTで〇〇から〇〇まで、と時間のスケール感をコントロールすることが出来る。もちろん時間を〈現実世界で物語の時間を〉止めることも出来る。観測者の人生が止まらないだけで物語自体は止まらせることが出来るようである。
「スケールってことはペンデュラムか」
桃花がカードゲームの話題を持ち込む。
「時間の始まりと終わりの〈間〉の話だからね」
間接的過ぎて実感が湧かなかったが、CD売れない問題はあまり嬉しくはない。良くなるどころかAI生成のせいで更に悪くなっているっぽい。
桃花がカードゲームの情報を漁るが、現代カードゲームのデッキ構築と展開を見たら、ペンデュラムとエクシーズとリンクが混合してて結局何やってるのか解らなかった。
こういうのを〈有向非巡回グラフ・DAG〉と言うらしい。
「あーで、クールマ。止まって欲しい時の威力は。小はクラクションで、中は頭痛、大は地震にしてくれない? ちょっと危機感的な大きさのボリュームが解らないから」
姫は世界種クールマに命令でもなく頼むのでもなく教える。対等な関係なので相談すると言ってもいい。
「なあぁ~~♪」
クールマも「わかったよ~~!」と元気いっぱいである。この場合の止まるとは、仕事のしすぎや、作業のしすぎや、無理のしすぎの事である。
あとは、GM姫的な観点で言えば、このゲームや漫画、物語をIPビジネスとしてどう仕事にするかである。
アナログとデジタルで物理法則が若干違うし、立派な陰陽五行論的なのも含めて、属性による互換性も秩序的にほぼ考えすぎて完璧なのは良いのだが。それが給料とか仕事に直結していないのが今の神道社としての問題だった。
つまるところ、作家なのでいい作品を考えるだけ。営業は編集者に任せる。という立ち位置から、営業面もシステム化してある意味〈命令?〉する権限を持っていたのが……誤算だった。
アナログの得意分野は唯一無二性や紙である、という観点。
デジタルの得意分野は再現性や生産性、という観点。
アナログは鉛筆やGペンで紙やノート、プロ用原稿用紙などレトロ? な領分だが仕事に繋げるのが対人関係で決まり。
デジタルはPC、10人がやって10人とも同じ事ができるという画一的であり、現状ネットワークさえあれば無限にコピーできてしまうのが、価格や価値の低下に繋がっていると読んでいる。
天上院咲という黒煌颯護の〈逆張り〉をし過ぎた結果、こちらが得意になってしまった。画一性が高いことから、咲は産業革命に向いているかもしれない。
また、アナログのカードとデジタルのカードの物理法則が。トレーディングカードゲームのIPビジネスかなり似ている、または酷似していることを確認した。
とりあえずGM姫は、アナログカードという名の原稿の〈コピー回数の制限〉をすればビジネスとしてやっていけるのでは? と考えを改めた。
問題なのは〈デジタルの無限コピー〉により価格が無いに等しいほど下がっているのが問題であり。決して〈情報源〉そのものは悪くないことである。
デジタルビジネスはただいま勉強中……。
「まあ今言ったことは、外へ出て散歩することは悪くないけど、〈コンビニでの間食中のカロリーが高すぎた問題〉とは全然関係無いけど……」
と、姫は前置きして桃花もそれに同意する。
「稼ぐ力の話であって、食べる力とはちょっと違うもんね」
どちらにしても生きたいからこその試行錯誤である。
「あと、コレクターによる取引市場をイメージしたみたいだけど。公式の購買方法としてはパックを買うだけになるのでは? カード単品を買う方法は、ほとんど中古を買うような商法だし、公式にお金入らない方法だと思われる」
姫がイメージしたのはブ○クオフのカード単品の買取価格だったが、あれも正規入手方法かと言われれば微妙な所である。あくまで公式の神道社がちゃんと利益を回収できるかが焦点なので〈裏ルート?〉はちょっと違ったかもしれない。
おそらくこれも、本を売って、中古本を買う、のと同じルールが当てはまると思われる。
「てかお姉ちゃん、桃花先生にちゃんと給料あげてるの?」
咲からの発言。そういえば神道社から湘南桃花へ給料を毎月払っているかの言及は現在していない……。
「……給料欲しい? ちょっと宗教染てるけど?」
「欲しいに決まってるじゃん。咲と出会う前のあんたならともかく、今のあんたはかなり改心してると思うよ?」
どうやら桃花の目から見ても、今の姫はちゃんと営業してる、仕事をしていると思われたらしい。
「ふう、よかった。まあ金額の方はそのうち考えるよ」
姫は安堵と共に話題を次へ向ける。
で、カードビジネスの方を調べてみた。デジタルは100円で1パックカード8枚がデフォルト、アナログは200円で1パック5枚がデフォルト。
単価がデジタル1枚12.5円、アナログ1枚40円となっている。
デジタルのほうが一杯カード枚数を買えてお得に見えるが、電源を切れば〈無い〉も同然の価値なのでこのようになっているらしい。
対するアナログは〈有る〉状態で、かと言って紙の原材料があるとはいえ〈情報〉にそれだけの価値を付けている。
お金の授業で習ったが物のレア度さえ無ければ「えー紙じゃーん!」と「えー無いじゃーん!」の差しかない。付加価値として売っているのはどちらも〈情報〉である。
「まあ解析したのはいいけど、それとこのEWの情報をどう扱うの?」
正直、外界でどのように内界の価値を決めているのか? 皆目見当がつかないが……たぶんこれも決めて良いのだろう。
「まーこれは物理法則の方だけど、コピー制限は〈仮〉として作ってみて様子を見てみるしか無いなあ~~」
「例えば?」
姫の導きに、咲は答えを求める。
「例えば、〈情報源〉を元にコピーできる回数を〈制限20回〉にして、〈コピー元〉からコピーできる回数を〈制限200回〉にするとか? それをEWの物理法則にすれば完成」
今までコピー数無制限だっただけに情報の価格がどのように上下するのか皆目見当がつかない。
情報源は唯一無二性がありこの光は1つだ、それは解る。
だが、その情報源をコピーした〈コピー元〉の価格もよく解らないし。コピー元からコピーする〈コピー元々?〉の低レア情報はいくらになるのかも皆目見当がつかなかった。
普通に考えれば、コピー元々の価格は低レアであり下がるはずなのだが、なにせ世界系の話でありクールマがどう料理するのかもよく解らない。
「そもそも情報源の値段も決めてないしね」
桃花はそういう、それを決めなければ何もかも机上の空論に終わってしまう。
別に真似やコピーを悪と言うつもりはない。問題なのはコピーし過ぎの方だ。それに制限をかけたいだけである。
「このコピーする前提の話は、魔法はコピーできても唯一無二の物はコピーできないも入れないとね」
咲がそのように補足する。紙やインクの完コピまでは許可していない。
そもそも小説と絵で情報の質や練度が違うので、1日分の情報量を1パックにするのが良いだろうか?
「ふむ、じゃあそこはセリをしよう、桃花、勝負だ」
「おーけー」
姫は最初の第1戦としてセリの相手を桃花に指名する。先手は桃花。
「まず普通の労働賃金として1日3000円は譲れない、最低限はここ、これ以下は論外」
「それは桃花の生活スタイルじゃからじゃろ? 普通の労働者はそれでは破綻する、倍どころの話じゃない、8000円がいいところだろ」
「それでもアルバイト労働量なのは変わらない。1万円」
「まあそこら辺が良心的な値段ではある」
仮に情報源が1万円だとしたら、20分の1にして普通に分割して1情報500円だろうか? そこから更に1人200回コピー可能の回数制限をしているので、1情報2.5円の安さになる。これが原価という名の叩き台。
「……流石に安すぎたか? 日本でも手元に届くユーザーでも100円は行って欲しいぞ……」
情報公開をして損をしているのは目に見えて明らかなのでやはりそうなる。
仮に、1情報100円で届く情報量なら、200回コピー前は2万円、そこから更に20回コピーで40万円である。
つまりビジネスをしたいなら、情報源の1日分の情報量を1パック40万円にしないと割に合わないことになる。
アナログではなくデジタルデータである場合は、「情報源」も「末端のコピー」もデータとしての品質は完全に同一である。品質が同じなのに世代によって価格差〈40万円と2.5円〉がある場合が発生する。
「あーじゃあ意図的に情報を欠落させるとか? 政治家がよくやってる文字の黒塗りとか?」
「それはコピー所有者に権利があるのでは? 付加価値は嫌だけどあえて劣化コピーする分には何の問題もない」
そこら辺も法則で自分で決めたほうが速そうである。
「あとさー、桃花先生は自分を過小評価してるとか、家賃低い家に済んでたりとか、値段設定は低くするなとか言われてるじゃん? むしろ今は色々わかっている分、慢心王でいいのでは?」
咲はそれでも値段が低いと言う。
「ふむ、そうじゃな、むしろ今はリアルよりロマン設定で値段を決めたほうが良いかもしれん、コレくらいならお前らも乗り切れるだろ!! みたいな熱いパッションが足りない」
時には数字に熱い情熱を注いだって許されるはず。むしろ過小評価してると客観的に見られているのなら、自分の値段をもっと大きく見積もっても許されるはずだ。というかそれで回りも困っている。
「んん~~、じゃあ最初の20回は固定で、その後1000回コピーの原価200円とか? 流石に子供にも買えない値段設定だと本末転倒な気がするので……」
これでも気弱に声のトーンが下がる桃花、軽く話しているが。200円を1000回なので20万円、更にそれを20回分なので情報源は400万円である。
数字のインフレを楽しんで上下させるクセがある姫なので、あの頃の上下幅を知っている身としては味気ないが。まあ今の桃花の心身はここらが限界だろうと思った。
「まあ物理法則のルールに値段設定固定は無理だけどな。〇〇円とか幅を効かせないと……」
ということで、ここからは法則性の言語化である。
ここでEWの法則の草案を作る。
原本には唯一無二性があり、コピーには再現性がある。
コピーした場合、魔法はコピーできるが唯一無二はコピーできない。
コピーにはコピーの回数制限を設ける事ができ、コピー元とコピー元々までは許されている。
原本の値段設定、コピー元の回数制限と値段設定、コピー元々の回数制限と値段設定はその時々によって変更可能である。
アナログでもデジタルでも、コピーすればするほど、情報は劣化してゆく。
そしてEWの法則として採用されたのがこちら。
【1〈本物とコピーについて〉 大元となる「本物〈原本〉」は世界に1つだけ唯一無二として存在する。コピーはその情報を写し取っただけで再現性がある。】
【2〈材料の限界〉 コピーできるのは「魔法の効果」や「情報・データ」だけである。それを作るための「紙」や「インク」といった物理的な材料・筆跡はコピーできない。】
【3〈回数制限〉 無限に増えることを防ぐため、「本物」から直接コピーできる回数〈子〉と、さらにそこからコピーできる回数〈孫〉に上限を設定する。上限を超えたコピーは不可能である。】
【4〈価格の変動〉 本物やコピーの値段・回数制限は固定しない。世界の状況や管理者の判断によって、価格帯や回数制限を自由に上下させることができる。】
【5〈劣化の法則〉 アナログ・デジタルに関わらず、コピーを繰り返す〈世代が下がる〉ごとに、情報の一部が欠ける・秘匿・魔法の威力が弱まるなど、必ず品質が劣化する。ただしそれを見た読者の感想・拡大解釈は許可されている。】
「じゃあ、せっかくルールも作ったし運用してみますか~~」
流石に情報源の値段設定をしないと空論になるので、世界種クールマに紙を食べさせて世界規模でどうなるか? どう回るかを観測する。
とりあえず慢心王として価格は気持ち高めに設定。
情報源400万円、コピー元20回制限20万円、コピー元々1000回制限200円で世界を動かしてみる。
咲が亀のクールマに餌をあげる
「ほーらクールマ餌だよ~~、これは食べてもいいエサだよ~~♪」
「なぁあ~~♪」
世界が美味しそうに法則性のある概念を食べた。




