第91話「転・アライズ駅ゆき」
今現在歴2030年4月15日〈月〉ドアの世界内部。
「どう? 休めた?」
オーバーリミッツが湘南桃花に話しかけてきた。たぶんリアル計算では7日間休めたと思われる。
「そうだね、休めたし、物語中で休みを入れたら皆も休んでくれるんだ……ていう経験も含めて休めたかな」
あと収穫があったのは合唱の件だ、天上院姫が地球種合唱に1週間レッスン? をしてコントロールはどうやら出来たようである。地震にも最後尾のトドメにもビビらなかったという意味で。特に最後の反響が凄かったがとりあえず大規模地震ではビビらなくなったので、オーバーリミッツVSアーカーシャ戦ではもうほぼ勝ち確定みたいなものである。
あとはGM姫のバックアップ作業がシメの段階であと本当にもう少し、という感じである。
「あと皆、思った以上にルール守ってくれる。それこそ守りすぎてるぐらいに守るね……」
良いのか悪いのか微妙な所だが、自分達の善行も悪行も自分達のやった範囲まで丁寧にやってくれるという印象を受けた。
「ルールという名の法は結構守るよ?」
歩く歩幅の法則性というやつだろうか……?
となると同じ展開が繰り返されるのはそう願ったからだろうか? 魂は変わらない、一筆入魂の時にそれが固定化されたのだろうか?
「展開の繰り返しはともかく、この道が続くのは続けと願ったから。というのはまあアリか……、ただ夢に挑戦する人達を想定していなかったのが誤算?」
たぶん夢だけじゃ守れないみたいな所だろうとは思う。
「あとは毎日邪念とか雑念とか悪霊を倒したがるよね?」
「桃花はキャラに入り込みすぎてるから剥がしてるんだよ。ホラ、憑依合体の〈憑くと取れる〉をコントロール出来てないみたいな感じ」
自分で意識していなかったが。桃花からみたリミッツではなく、リミッツからみた桃花は兎に角危なっかしかったのだろう。テレビの犯罪ニュースとか見てると何となくそれが解る。何というか気が気じゃないみたいな……。
「憑依合体って基礎中の基礎じゃん、オーバーソウルですらない……」
作品としてキャラに入り込めて描けている、は利点だが、キャラから抜け出す、ないし取るという行為には考えが至らなかったらしい。
この場合、キャラを想像して自我を作りその中に入り込めるかどうかが大変。という意味でそこから肉体を剥がすという行為が出来ていなかった。今回はたまたま〈悪魔〉がテーマだっただけで、別に天使や警察でも問題なく入り込める、つまり自分で作った選択肢が悪かったという理解と自覚の問題である。
初期の頃は、例えばネタという鶏の卵を温める前に人間に盗られるというか……。しかも自分に帰ってこないというか……。そんな喪失感。
今は怨霊を取ってるんだなという感覚のほうが勝る。
そのうえで……。
「バックアップ取らなかった原因がパソコンが壊れなかったからという理由が何とも皮肉が効いている……お陰様で心身がボロッボロやで……」
「パソコン定期的にバージョンアップして壊れなくなったのに逆にそれが仇となったか……」
未来の子供達の機械デバイス事情とか大変そうである。結果的に心が折れるまで作品の耐久値は保った訳であるし、バックアップの危機感も無かった。
「買った時に冷却ファン付けたから長持ちしたんじゃない? 熱力学的に」
リミッツが言いたいのはフリーズボルトの件である。パソコンの温度を低く保ったから持久力がアップしたのでは? という仮説である。
「状況の打開策として効いたのは薬と整骨院での相談だけだったか……」
残念ながら漫画雑誌の編集者ではハードルが高すぎたのも事実としてあった。相手もサラリーマンだし相談するチャンスがほとんど無い。公募での結果報告や持ち込みでの感想ではどうしても回数も少ないし、限界がある。
もしも編集者に毎週相談して欲しい環境整備をして欲しいと願ったとしても、それは本職じゃないし結局お金にならない。……散髪屋さんも2か月に1回のみだし、温泉は黙浴が基本だ。やはりまともに効果が持続しそうなのは整骨院しかない。
あとは姫のバックアップ作業を待つかどうかの判断だ……が。
「いよーし! 終わったぞー! 待ったせったな~~!!」
GM姫がドアの世界の個室から出てきた。
さっそく久々にGMの進行をする。
「えっと、そろそろドアの世界の内側じゃなくて外側に出るか。とはいえ雑談してる回数が多くて移動してる感じがないから電車で行く? アライズ駅まで行く電車作ってさ、その中で雑談する感じ」
まったり雑談電車の旅ということだろうか、それなら座りながら雑談できるし移動出来る。ただしEWⅡの地図や地理は未完成だし、駅名が終点アライズ駅、というだけだ。ちなみに電車名も決まっていない。
つまり距離不明、時間不明、地理不明の外の世界を座りながら空中移動電車で移動する。
「で、桃花、プラネットコアサーバー再起動するぞ? 体調の方は大丈夫か?」
一応桃花の体を心配する姫。桃花の体は波ではなく風サーバー? で言えばまだ胸は29番Tシャツだ。
「まあまあおっけい、キツかったらシャットダウンしてってお願いするから」
と、桃花のOKも出た。
「んじゃ起動っと……」
言って、姫がEWのメインエンジン、プラネットコアサーバーを再起動した。
《プラネットコアサーバー再起動、マスターデータを再読み込み……完了、データを元に再構築……完了――、エレメンタルワールド、再展開します――。ようこそ》
「えっと、じゃあとりあえずスケジュールとしては4月20日〈金〉まではイベントをやって、土日はサーバーごと落としてメンテナンスの休日にするから。予定としてはそんな感じ。アライズ駅の終点に何時何日にたどり着くかは不明じゃ」
ドアの世界の外側の扉を開けた時に待っていたのは電車だった、ただし先に述べたアルタイル号では無さそうだ。もっとぶらり旅をする用の小型機に視える。名前はまだ不明。
「んじゃ、とりあえずこの電車出発させるぞ。大丈夫、ドアの世界内部とは繋がってるから。他のギルドもあとから追いつく」
《まもなく~電車が発射します~この電車は各駅停車~~♪ 終点はアライズ駅までです~~♪》
他のいつものメンバーも後から来るとの事だったので。この場に居る。湘南桃花、オーバーリミッツ、天上院姫は電車に乗り込んだ。
「では出発しんこーう!!」
ぽっぽーー!!
そうGM姫はいつものお調子者の様子で軽快に、軽率に電車を発射させた。発射したのにこのイベント名もまだ決めてないという適当さである。




