第89話「起・門下生」
「こう言っちゃ何だが〈解って無い〉桃花やスズを相手にするの大変だったんだろうなあ~」
秩序の守護者、真城和季がそのように姫に言う。
ピクファン門下生みたいな感じだろか? なまじ〈偽物〉や〈偽書作家〉と呼ぶには惜しい存在を何人も育成している。1つの修練場みたいなものだった。
「まあどの道〈プロ作家とは呼べない〉のは確かなんじゃが、なまじ本物よりクオリティとスピードを兼ね揃えた作家達の修練場だったからな」
GM姫はそう言う。
レジェンドマンが「このポーションは偽物だ」とばっさり言っていたが、なまじ本物より品質が良いのだ。
普通のトレースなら〈劣化コピー〉で終わるのだが、変質も変換も見事で連携も巧み、リレー漫画形式で修練を重ね。最後に二次創作ではなく〈オリジナルファンタジー〉で切磋琢磨して磨いてきた技も術も量も本物だ。劣悪・成熟・リアルタイムが混沌と並ぶあのお祭り騒ぎは、見ていて心踊るものがあったのは間違いない。
「実際、その後プロ作家を多数出してる名門企画なのは間違いないよね」
それはそうなのだが問題も多かったと思われる。マジックのネタが解れば、内界の汚染想子が目に見えて形になって形成されている。とういうことなのだろうが。さっきもいった通りアマもプロにとっても訓練場としてかなりの経験値が得られるのは間違いなかった。制限時間という名の締切もあったし。夜鈴も桃花もまず〈世界というフィールド〉でぶち当たった壁はそこだった。その後VSジャンプ作家だったわけだが……。
「今度そういう企画が出たら初の〈知っている〉の前提の参戦になるんだね?」
桃花は〈あの興奮を忘れられない症候群〉になっていたが、結局あれはアマはアマだ。長くは続かない。せいぜいやっても2ヶ月間だ。
それやるんだったら本当に自分で企画立てたほうが良いとは思う。文字通り訓練場としての企画目録とか……。だってどの道アマチュアなのは変わりないのだから。
これは過去の憶測なのだが、〈知らない〉前提の桃花はかなり嫌われたと思う……知らんけど。
「いやそうなんじゃが、相当フォローされてたと思うぞ? 手書きで描くのなら尚更この世界を守りたかったのじゃろう事は、容易に想像はつく」
〈元ネタは自分達だ、と知らない自分達〉を相手取るのはさぞ大変だったろうな。とは再度思う。だが必要だったルート・または経験値だったのも確かなわけで何とも言えない。
さっきも言ったが普通、元ネタをコピーしたら〈劣化コピー〉で終わるのだがこの訓練場では〈成熟コピー〉が発生する、上手ければ上手いほど真相看破は難しい。普通に騙される。あと自分でソレに気が付かなければ介入したことになり、エレメンタルワールドの生態系を破壊しかねないか、時間の流れが変わってしまう以上〈教えられない〉という厄介な外界からのルールがあった。
〈熟成コピー〉が発生する、それが最初に外の世界を観測した、湘南桃花、オーバーリミッツ、桜愛夜鈴の感想だった。
つまりこの場合〈完成〉というスキルは変わらないし揺らがない、劣化もしないし成熟もしない特徴がある。そうでなければ原点に戻らない。
「ふーむ……道場か~~……」
GM姫はそのように呟く、この場合何の道場やねん、とか思うが、やはり冒険者道場だろうか? 偽門下生と正門下生になるのか? そう線引するのは簡単だが何か違う気がする。
仮に正門下生だったとしても戦空・桃花・和季・咲の派閥に分かれるのか……? とか色々想像が膨らんでしまうう……。
「まー仮にそれが事実だとして。アマを育てたい門下生的企画書を立てるとしても。そこにはスケジュールというカレンダーが必要になってくるから。今の1日1写真も出来なきゃ企画倒れになるな」
姫はそれこそ冷静に判断した。地球種合唱によるスケジュール調整のコントロールをできなきゃ、結局相乗効果や育成なんて期待できない。どこかで転ぶ。
「よくプロからは経験不足、まだ若いって言われるもんね」
桃花先生も、これもまた比較的冷静に受け止めた。
あの時は眩しかった、Windowsという窓から煌めく景色が何故こんなに輝いているんだろう? という元の光も知らずに――。
「でさ、大阪で聞いた双子の魔法使いの捜索はいつやるの?」
咲が聞いてきた、やろうと思えばすぐに出来るのだが。
その時起こったディスティニー問題でテイルズ編に入ってしまい、そして桃花の世界の完成動画が飛んでしまい、久しぶりの〈バックアップ編〉で時間を取られていた。ネットの海から自分の物語のサルベージである。それをDVDーRなどで固定化し、今後5年間は大丈夫にしようという作業中……。
双子の件はやろうと思えばすぐ取りかかれるのだが〈今更過ぎるとも言う〉、バックアップが入ってしまい、その量がかなり多く、それらをまとめるのにも時間がかかっている。今までの事件と総合するとやはり〈あとちょっと時間が欲しい〉と言った感想になる。
「まあ予定では、優先度が高いバックアップを終わらせてから、テイルズのゲーム進行を行い、その道中で双子の魔法使いのストーリー進行になると思うんじゃが……予想以上にバックアップが多い」
特に、ピクファン系はリレー形式になっており、個人で完結した作品群だけだとどうしても時系列に穴が空く。空白の歴史が発生する。
せめて自分達が目撃? 観測された歴史の固定化ぐらいはさせて先に進みたい所だが、元の光の量が多いだけに、これだって多くなりそうだ。
「あんまこれ聞くのどうかと思いますが。いつまでかかりますか?」
桜愛夜鈴は外れることが既に解っている予報を、GM姫に聞く。
「えっと、事実として。かなり頑張って、318枚プラス469枚サルベージしたのに2日間かかってるな。60シーンが1ページとして10ページある。その中で今8ページに居るから……えっと。100%中……20%?」
「2日で20%なので、5倍賭ければ100%だが、かなり時間とやる気があった場合だ。つまり最短10日で長く見積もって2倍。10日~20日間ぐらい、バックアップにには時間がかかるだろう」
真城和季はそのように計算をし。
「でも予測不能の気分屋な所があるから1ヶ月見た方が安全かもよ?」
これまた桃花は冷静に自分達の性格を分析した。
念のため保身をするが。一応科学サイドの話なのは解っているし、魔術サイド的にノートに文字も描きたい所でもあるのだが。サボっていた? というかUSBメモリで保存していた、気になっていたのが問題であり。DVDダビングの重要性を気がついていなかったと言う事である。
「え、じゃあテイルズ編本格始動って1ヶ月後ってこと……?」
「たぶん……」
かなり曖昧だが自分のデジタルの歴史のサルベージする作業を疎かにする訳にもいかず。ここは丁寧に保存したいところではある。
「政治的にはどこまで言って良いんだ?」
一応和季は外界のことを気にする。
「だから事実として〈バックアップは今20%です〉としか言えないんじゃないか?」
GM姫は公にバックアップ編の事実として「今20%です」としか言えない、不確実なことではなく確実な事実のみを公式見解をのべた。




