第88話「結・裏側の世界」
今現在歴2030年4月8日〈月〉ドアの世界内部。
「もしかして他社サーバーの完成作品が裏側、つまり虚構の世界になってて、世界に反映されないみたいな?」
湘南桃花が何となくそう思った。
「こちら側の光でも闇での無く、裏側の世界だった場合。見つけ出すのは容易ではなくなる……だっけ?」
真城和季そのように記憶を追憶する。
「つまり〈所有権〉が自分達、創世源種にあるかどうかが問題なんじゃない?」
「というと?」
和季が疑問に思い、桃花がまとめる。
「例えば〈情報源〉が小説家になろうやニコニコ動画やピクシブを元ネタにして創作? 光の種は育てられないみたいな。それこそ法律上プロは出来ない。みたいな、例えば情報源がピクシブの場合、画像は真似出来たとしてもキャプションテキストデータは長期保存の時、切り取られてしまった。とかあるじゃん」
映画、ペンタゴンペーパーズの話だ。過去の機密情報を切り取ったときにページ番号が無くなってしまったとかの話が。画像とキャプションテキストの切り離しと状況が完全に一致する。
そうでなくとも他社サーバーのデータを元に、他社が創作物を作りました。は完全に犯罪である。本体PCを媒介にしているのならまだ解るが……。それが出来ないから〈切り離された〉外れた世界が、爪や髭と同等の存在になったのかもしれない。
「吸血鬼大戦はニコニコ動画で完成作品を〈投稿〉して完成、読者に読んでもらってハッピーだったけど。アマでもプロでも、大企業は所有権が作者に無い元ネタから創作したらマズイことになる。だからバックアップデータに細工?〈ハードディスクの所有権は自分〉して同じ式を作ったが、ハードディスクの中身が壊れてしまって元ネタが無くなってしまった。あるのは自分じゃない別サーバーの完成作品があるし、喉から手が出るほど使いたいけど。他社のサーバーデータの情報源から創作物を作るのは犯罪になる。だから反映されなかった、ノートやコピー用紙で書いた原稿しか作れなかった。これが表側であり光と闇」
個人完結としては完成作品を作ってネットの他社サーバーにアップして、読者に観測して貰ってハッピーエンド、だったのだが……ここに〈二次利用〉という個人が想定していなかった広がり、事象が入って来たことにより。
簡単に言うと個人で完結していた最高作品が他者により、間接的に、潰されてしまった。
全て湘南桃花の責任だが、一番辛いのも湘南桃花だ。何のために家族が犠牲になったのか解らなくなる。関係無いはずがない。このままだと未来まで潰されてしまう。
「ん? じゃあ元ネタが自分達で所持出来ていて、完成品だったらOKってこと?」
「その可能性がかなり高い。ダビング、後から改変出来ないPDF形式とか、戻れない、というのも肝心なのかもしれない」
これは可変式と不可変式の問題。
「なるほど、……所有権か……〈切った紙も使える〉効果がハードディスクだった訳か。今だったらSSDだけど」
本体から外れた世界、爪や髭みたいな使い方としてはそうなのだが、HDやSSDの寿命は5年間ほどだったので、実際に使えるには使えるが5年後にその光は消えてしまった。もっと言うと共に歩む性質上ミラーも隣も一緒に消えてしまった。
だから再び作る事が出来なかった。のだと思う。
本体から離れた、爪や髭と同等の作法、どういう理屈かは解らないが、どうやら本体から取れる事に意味があるらしい。真相は知らない。
故にそこから導き出される表側と裏側の判別は〈所有権が有る〉かどうかにかかっている。創世源種というか内界は、ぜひとも使って欲しかった作品やネタばかり大量にあったのだが。どうも他社サーバーに依存していたのがマズかったらしい。
〈所有権あり〉表側
本体PC、ノート、原稿用紙、コピー用紙、HD、SSD、DVDーR、Mディスク。または所有権を持っている普通に買ったアナログの本、コミックスなど。
〈所有権なし〉裏側
クラウドドライブ、他社サーバーに投稿した作品群、サブスクリプションで得ている情報・音楽・電子書籍。〈サブスクでお金を払っても所有権は手に入らない〉
たぶんこんな感じだと思われる。重要なのは〈情報源〉が〈自分〉に有る、部屋の中に所持されているか? という点だと思われる。
「あと戻れる、戻れない、の差異とかあったよね? 可変式・不変式とか」
「アレは……頑張った痕が残る・残らないの理由の判断材料だったから光なのか闇なのか、っていう判断材料だったんじゃないかな? つまり表側の世界」
あれの元ネタは風の精霊ヒルドなので極論、ヒルドとフェイとケンチャしかいない。主人公もヒロインもヴィランも居るが、紙にも残っているし結局光と闇が同時に存在している表側の舞台、という認識なのだろう。
桃花は考えを回して、つまり過去起こった事象と今起こっている事象を照らし合わせる。
「つまり、今は、〈物理型バックアップ〉と〈特殊型バックアップ〉が存在しているということ? 今やっているのはDVDへのダビングで物理型のバックアップ作業中。それとは別に、他人の中の自分の記憶。セルフイメージのバックアップとかまさにそれじゃない」
天上院咲の物語を通ってきたからこそ有る、ネット経由の記憶・他者から感じた自分のイメージのバックアップ。
この物理と特殊の両方のバックアップが繋がっていて初めて今の自己イメージが形成されている。
「ふむ、……わかった。小説のサルベージは容量が軽かったからすぐに出来たが、画像はそうはいかない、もうちょっと時間をくれ。今までの物理画像データのサルベージには時間がかかる」
真城和季はその言葉を桃花では無くGM姫に言った。
「了解、時間稼ぎじゃな」
あとちょっと時間があれば、物理型バックアップが出来上がる。それまでの辛抱だ……と皆に言い聞かせた。
「ちなみにこの〈罠〉って表現はさ、設置した後に再び本体が戻ってくる事を想定しての設置と発動って意味よね?」
一番最初に描き始めたノートの豚が、まるで宝箱を開けた時のように〈空飛ぶ豚神〉が発動したのも。一重に、紙一重に? 再び帰って来る事を想定して設置されていた。いわゆる宝物であり贈り物みたいな物である。
設置した罠と言う名のノートは喋らない、故に幽霊と同じだ。という表現になっていたらしい。
つまりいくら改変しようがルートが他者に影響されようが、結局自分に帰ってくる。原点という中心はここだ。という認識に戻ってくる。
だから燕が表現されているのかもしれない、季節になったら巣に帰って来る燕のように。
昔からの知恵というやつだ。




