第80話「結・いざ大阪へ」
今現在歴2026年5月14日〈木〉
エレメンタルワールドのドアの世界を経由して、日本国、小田原駅までやって来た、ここから小田原~新大阪まで新幹線コースである。
「なにもあんた達まで付いてくる必要性はないと思うんだけどな……」
付いてきているのはギルドBIG4の四重奏のみである。
ブロード、レイシャ、リスク、スズ、ミュウ……。
湘南桃花の個人的な動機で行く、ぶらり旅、大阪な訳だけれど桃花の心中は全然違った。本当は全員で行っても良いのだが、それだと行きたい人が多すぎて百鬼夜行の魑魅魍魎になりそうだから断っといた。
桃花の真の動機は、リスクが関西人のなまり口〈ウチ〉だからである。空想でしか思い描いたことがなく、実際の足、心と体で関西・大阪を体感したことがない、この一点こそが真相である。
紙の上ではそうなのだが、つまり心と体が一致していない、行動と意思が一致していない。……そこが引っかかるから行ってみるだけ、本当にだけ、なのである。そこにどのような両親の両家族の想いや思惑があるかは知る術すらない。……が自分で決めて自分で行かなきゃ行けないと思っただけである。
とどの所〈なんとなく〉である。
で、進行役であるミュウも付いていく理由を言う。
「いや、皆も予定入れちゃったし……」
いつ出来上がるか解らない原稿より、確実だと思ったのだろう行動、つまり皆の予約……。
桃花の気分でキャンセルしたら皆の予定も狂うというドミノ倒し……。なので一度決めた以上引き返せなくなった。
もっとも、今は全てを恐れるな、という歌詞を胸に、自分との戦いにもう一度向き合う余裕は出来た桃花。
「いや……何もするなとは言わないけど。こっちもアクションされたらビビルよ? 普通の人間はビビルの、勇者じゃないんだから……」
「お前が行きたい動機があるのに行きたくないとでも……?」
桃花に言ってきたのは、何故か皆が最終的に期待? しているブロード。
「ところで湘南桜ちゃんは?」
レイシャは、こういう現実世界にこそ桜ちゃんは連れてきた方が良いのでは? と思う。
「……言わないようにしてきたけど、私が勝手に作った危ない橋を渡らせる訳無いでしょ? 特にあんた達が関係あると知ってからは尚更そう。……悠二もそうだけど……桜だって売り物じゃ無い」
自分の妹を庇っての処置、つまり非売品という事なのだろう。普通のノートもそれに当たる。
かと言って、皆がこの行動に何も思わないはずが無く……、だからこそ何かあるんだろうな、とは感じつつもアクシデントはゴメンだと言うのも事実……。台湾、沖縄、京都、群馬、箱根、渋谷……。色々あったが今度は1度もその地へ下りたことが無い人生初の大阪……何も起きないはずが無く……。
「……まぁ、やるなら粛々とやってね……」
あまり大事にはしないでね、と桃花は言う事しか出来なかった。
◇
というわけで桃花達は新幹線に乗って大阪へ向かっている、その電車内……。
「だからね、アナログ用の鏡とデジタル用の鏡があるの」
「それを先に言えよ! マジで困ったんだからな!」
スズから桃花へ解答が示された。それこそ、本来の問題とは全然別方向の問題からの答え。たぶん技術の問題集じゃない、スピードの問題集だ。
スズの言い分は解るのだが、聞いていないので困る反応となる桃花、幽霊は語らないみたいに本気で語ってくれなかったからだ。
「それと眠れない現象だけど、寝る前に電源のコンセントを切ればいいんだよ。そうすればエレキフィールドの永続罠も発動しなくなる」
「それも……先に言って……苦しんでた私がバカの一つ覚えみたいじゃないか……」
つまりPC回りの〈タコ足回線〉の電源を引っこ抜けばよかったらしい。……パソコンの電源はオフなのに……余計な微弱電流が流れてるのがエレキフィールドの発生源。
〈子供は寝る時間だよ、電源を切ってお休み、僕ちゃん〉である。
エレキフィールドは電気技の攻撃力が上がり状態異常の〈ねむる〉が出来なくなる、つまり眠れなくなる。だがこれの元は〈アナログ原稿の影響のせいで胸の挙動がおかしくなって眠れない〉という特性効果だ。永続効果ということで、ねむるを使用としても継続ダメージを食らって眠れなくなった、ということらしい。
つまり、今まで眠れなかったのは、アナログの鏡がエレキフィールドを張っていて、コンセントの電源を切らない限りずっと眠れなかった、というコンボらしかった。
「つまり……世界観を構築するアナログの鏡とデジタルの鏡が存在すると言う事ね……やっと解ったわ……」
レイシャとスズはとりあえずアナログの鏡の存在を知ってもらってホッとした。桃花は自分なりに考え解読する。
「でも、アナログもデジタルの鏡も反射は出来るけど絶対では無い訳ね、デジタルは1日単位ですぐ消えるし、アナログは紙をシュレッダーとかゴミクズにすれば消えると」
そこまでしなくても、たぶん消しゴムでも効果はあるのだろう……でもそんな鉛筆作画でも〈消せなかったし消したくなかった〉というのが無意識の本音。
確かにそれで〈反射〉は消えるが最果ての軍勢による循環、強化・賢術・陰陽・精神・未覚のサイクルは生きている。
特に未覚の〈無いものを操る効果〉に接触するのでこれも現代戦では反射〈デジタル&アナログの削除〉を倒せば終わりという訳では無い。
それに気づき、解読することが出来れば、あとはソレを自分の意思でコントロールすればいい。
「それこそ雪葱師匠の時と同じだけど前もって言って欲しかった……」
それは湘南桃花という存在が大学2年生の時である。彼女は「頼むぜ……」と呟きながら。
「それだと勉学の意味が無いので……」
とスズは返した。何も自分に対しての厳しさまで反射しなくてもいいのに……と心底思った、桃花は基本、自分には厳しいが他人には優しすぎる。
桃花が言っているのはリスクや桃花が雪葱師匠の仕事場で修行して教わった〈ルービックキューブの模写〉の話である。立体を学ぶ、立方体を学ぶという意味でアレは非常に役に立った……、が、魔術的な意味では聞いていない、もしくは聞いても本人が未熟過ぎて理解出来なかったのどっちか。
「そもそも咲ちゃんの冒険が無かったら、ここまで文字での読解力上がっていない状態だったので無理難題過ぎる……」
桃花の〈感覚的絵描き〉としてはそうなのだろう。そこに〈理解力〉を与えてくれたのは天上院咲だ。
「今回の教訓って、デジタルデータもアナログ原稿も〈絶対では無い〉って教えたかったって事か? 先生」
リスクが一応確認の為に桃花先生に聞く。
「やー……別にスズちゃんは100%悪くないし、私も後から考えるとやっぱり未熟だったから盛大に失敗したわけだけど……必要な経験だと思ってるよ? 今は」
つまり、桃花自身は吸血鬼大戦の天体が消滅したところは受け入れている。星が亡くなった後に行く星の墓場〈スターダスト・スペースゼロ〉もあるし、何ももう二度と会えなくなった訳では無い。と思っている。何故なら不可能は無いのだから、身に染みて解っている。
「たぶん、夢は夢に帰った、……んだと思う」
こういうのを失った後の悲しみ、喪失感、とか文字では言うんだろうな、と思って区切った。




