第76話「結・案内人という初心者」
今現在歴2030年4月4日〈木〉、第1の街ライデン。
一行はひとまず元来た道を戻って始まりの街、第1の街ライデンに戻ってきて。湘南桃花先生は久しぶりにギルド受付嬢の仕事をゲーム的にすることにした。咲も咲で手頃なイベント何か無いかと探している。
桃花は「だいぶこの街も賑やかになってきたな~~」とか和んでいたらあるプレイヤーの行動が目に停まった。
「……、……」
見るからに初心者プレイヤーの立ち回りで間違いないだろう。よくある未熟ゆえのあたふたさがある。ちゃんと努力している感じが見て取れるに、応援したくなる気持ちが勝っていた。
「どうしたんですか桃花先生?」
咲が手頃なイベント掲示板が無かったのを確認し終えて、桃花の受付テーブルの方へ戻ってくると「あれ」と、初心者冒険者の方を指さした。
「あれは……」
咲が見ても解るような初心者の動きだった、でも〈ちゃんと頑張っている初心者の動き〉というのが伝わってくる。
「資料を見る限り……〈地図師〉じゃなくて〈案内人〉なんだよね……」
「え? あの動き地図師じゃないんですか?! へー珍しい! 面白い子ですね!」
ギルドの受付嬢として、ギルド内の資料を観ると、案内人と書いてある。少なくとも戦闘職では無いらしい。案内人ということは迷子になった人を案内する、元の場所へ帰らせることを前提としたプレイングらしい。
珍しく咲も彼の全体を把握してから観察する。咲の目から見ても……。
「うーん……よく動けてるけどアレって……」
「うん、……詰むね……ちょっと教えてあげるか、タダで」
そう言って桃花と咲は、案内人Aさんの方へ足を向ける。
「こんちは」
「こんちー!」
「はい? 誰ですか? あ、受付の人……」
案内人Aさんは細かく情報を書き連ねている、が……。桃花が優しくアドバイスする。
「えーっとね、先に結論から言うと、番号付けたほうがいいよ? その地図とか案内内容」
「え? どうしてですか?」
「忘れるから、もっと長い目で観ると書き記した本人が忘れるから」
桃花や咲は本気で何も無い白紙どころか、透明な前人未到の大陸を行く。だからこそ解る。
まず咲が言う。
「えっと、何でもかんでも番号をつけろって意味じゃなくて。例えば今寝泊まりする拠点地点にこそ番号を振ってロックしたほうが良いってこと」
「どうしてですか? 今の状態でも困っていませんよ?」
次は桃花が言う。
「うん、今はね。でも今度は情報が多すぎて全部を把握・管理できなくなるんだ。10万文字規模ならなんとかなるけど、100万文字規模になるともうどうにもならないんだよそのプレイングだと……」
「つまり、そのプレイングだと戻れなくなるってこと。君が気にしてる案内役だって出来なくなる。試しに君が最初にスポーンした地点の番号とかふった? 普通の座標レベルでもいいけど……XYZ軸とかそういうの」
「えっと、それは街があるから何とかなってます」
まあ、見た目の地図や街が有るからそうなるんだろうけど……。
受付嬢桃花はベテランばりに言うことを言う、もちろん優しさの善意でタダで。
「まあ、普通はそうなんだけど。街の外の知らない未知の場所になるとそうはいかないんだ……」
咲も色んな冒険者を見てきたからよくわかる。
「例えば街に川があるとすると、〈〇〇の川〉って記すと思うけど。上手い人は、川の流れ、どちらからどちらへ向かっているのか? 川の地面は土なのか岩なのか? 飲水なのか植物用、動物用の川の水なのかもちゃんと書き記してるんだよ。案内人としてプレイしてるみたいだけど……私達があなたに案内を頼むと、そこら辺のツッコミのせいでもう一度調べ直す羽目になっちゃんだよね。調べてる情報が細かすぎて、なおかつ欲しい情報量が少ないのが今の案内人としてのレベルかな……」
で、桃花も助け舟を出す。
「まあ私達が無鉄砲で進むのは解るんだけど。そこからでも読み取れる〈考察〉ってのがある、考察班が知らない間に進化したのもそのせいだと思う。例えば私達が〈川が内側から外側に流れてる〉って書き記したしたら。考察班は〈なら内側に山があって外側に海があるはずだ〉って勝手に考察するの。ありがた迷惑だけど、それが帰って私達冒険者を助けてる。それが本当の意味での迷子を導くための〈案内役〉かな……ってゴメンね、余計な口かもしれないけどせめて番号はふって頂戴w?」
「応援してるよ! 期待してるから!」
そう言って、桃花と咲はあまり手出しするまいとテクテクと元の道へ帰って行った。いつもの冒険とイベントについて作戦を練るのだった。




