第74話「承・揺らぎ」
「この時間の迷子って表現はさ、簡単に言いすぎると〈揺らぎ〉って表現になるのかな? ペンデュラム」
「時計の振り子にも視えたけど、これって世界線で見ると元の線・座標に対してどれだけ揺らいでいるのか? という意味にもみえるな」
桃花と姫が話しているペンデュラムは、本来数字と数字の間にあるモンスターを召喚できるというルールだ。それだけだと〈単一時間軸〉だから何も問題は無いのだが、今最も問題となっているのは時間軸が2つあることだ。
それによって出来上がるのは本来時間は直線、茹でる前のスパゲッティ状態の真っ直ぐだったのが2本交差する状態。
簡単に言うとペンデュラムスケールが2つ存在しているのだ。それがパラドックスの原因となる。
左に2つ、右に2つのペンデュラムスケール。本来元である時間軸の横に、別の時間軸が存在し、そっちが本物だと思って誤認して揺らいでしまう現象である。
そこでは別の特殊効果が発動してしまう。
「というか、別の言い回しで同じ効果が書いてある感じじゃよなあ~~」
パラドックスとしてはそうなのだ、炎属性と毒属性ぐらい全然違う。別の未来、別の過去、逆因果律のペンデュラム。
「例えば1から12までの揺らぎの幅があったとしよう。本来の元の時間軸では4が正しいモンスターの召喚レベル。そこに混じりっけの疑い用の余地はない。これが〈揺らがない〉または〈意思は揺らがない〉状態、つまり時間が止まっている。特異点・支点がそこにある」
「対する揺らぐ事が前提のペンデュラムは、2から8まで4レベルのモンスターを複数体置けるとか、そういう事象が発生する。これが揺らぐ効果による魔法」
遊○王のゲーム体験だから、大体モンスターレベルは12以上はほぼ存在しない、8レベルで高レベルモンスターだ。
だが、吸血鬼大戦をベースとすると。24個分の揺らぎが無いと対応出来ない。24時間という意味でも。
「24時間かける7日間だから、最大168時間でもいいんだけどな」
いずれにしても過去と未来の設置が置ければ良い。
「現在最大30でしょ? えっと年数で言うと30年間?」
「だな、EWⅡ公式のゲーム体験としては30以上は無い。……が、これ職業なにになるんだ? 占星術師?」
「確かに星だよな……星なら天体で時間だし」
というわけで、この確定しない時間の揺らぎの専門家としての職業を〈占星術師〉として新たに新ジョブを決定した。
《ワールドアナウンス、新ジョブ占星術師が公式アップデートされました!》
「このジョブ、ムズそうだね……」
桃花は単純にその新ジョブの使い方を思った、主に戦士系の直感的な戦術というより、前振りがただ演唱を唱えるだけの魔術師より〈アイテムの歴史的時間〉が関係しているので難しい、と感じたが。頭がいい人・プレイヤーには使えそうな印象……。
「まあムズいっちゃムズいじゃが。ワシらが1を確定させる前の時間の揺らぎ、迷走や迷い手の処理としは役に立つ。締め切りが無い内界用というより、制限時間が結構ある外界に適したジョブじゃな」
GM姫としてはある意味究極の時間稼ぎ専用のジョブにも視えていた。だって過去の術も発動できるし、まだ観てない未来の術も発動できるという代物だから。……ただしセッティングする手間がムズい。
名前◇占星術師
希少◇D
分類◇アイテムペンデュラム_揺らぎ_過去と未来
解説◇ペンデュラムポイント〈PP〉は現在上限は0~30Pまででありそれを〈左の過去〉〈右の未来〉にアイテムをセッティングし2つの条件を満たしたときに現在で魔法効果を無条件に発動可能になる。
前提条件として自身の持ち物としてアイテムに2個、発動条件となる過去と未来をセットしなければならず、まず媒介が2つ必要。
次にそのアイテム2つを〈過去にセットした場合〉と〈未来にセットした場合〉でのコストが表示されその条件を満たさねばならない。
この場合のアイテムとは何でもいい。トランプカードセットや武器・スキル・称号・服装・果てや大型建造物でも可能。
占星術師はそのアイテムのPPとセット条件を視認することができる。
過去と未来にセットしたアイテムの条件が整った上で、その時空間内で発生した〈揺らぎ〉を無条件に魔法として発動できる。
この時、普通の魔法としての固定化された前提条件、例えば極大魔法の長い演唱呪文をしなければいけない条件をスキップできる。
つまり、正史世界での1の固定された絵画があるとする。これは完成されていてその未来に付加価値や、完成前の過去に発生した思念・情報・作業工程の過程・画材の辿ってきた歴史など。その絵画が構成された1の完成物。これが〈揺らがない状態〉であり、占星術師はこの逆で〈揺らぐ状態〉を操る。過去0と未来2という本来定まっていない迷い子の方を操る。故に確定せず振り子のように何度でも右左右左と反復でき、その揺らぎの運動量で無条件に魔法を発動できる。
習得難易度は簡単だが、術自体の難易度は極めて高い。例えば過去と現在のアイテムの情報内で振り子を揺らす分には簡単だが。この術には未来が含まれる。建物の過去の蓄積した膨大なデータや、〈未来でそのアイテムが条件を満たした〉という結果が先立って〈先行して〉確定するため、そのツケを支払う代償の処理は普通に考えれば難しい分類に入る。
しかし、占星術師が揺らぎからエネルギーを抽出し続けるためには、その魔法のプロセス自体を完全に確定〈視認・理解〉してはならず、意図的に「曖昧なままにしておく」必要がある。
つまり曖昧な状態ならいくらでも魔法を放出することが理論上可能となる。
原理は。マクロスケールの時間結晶。シラードのエンジン〈情報熱力学〉、マクスウェルの悪魔を物理的にモデル化した思考実験。この場合アイテムとして、過去と未来の条件をセッティングに成功した場合。その後は熱力学第二法則を無視して系から無反動でエネルギーを取り出すことができる。しかしそのツケは「系の外側」に支払われる。1から5ならその外側、0と6の方にツケが回ってくる。
つまり、1から5の時間内で色々発生したら、0と6に質量のツケが回ってくる、というのが自然な流れであり、それを防ごうとすると逆に不自然になり取り返しの付かない矛盾・破綻が発生する。
この0と6のツケの効果は、占星術師の術解除後、文字通り「時間が物理的に重くなり、人々の動作や思考が極端に遅くなる」という現象が起きる。




