第63話「転・お前が決めるんだよ!」
「じゃあさ、手始めに小説投稿サイトのボックス拡張の課金について話そうか」
「いや別に私はそう思っただけで具体的に決めたい訳じゃ……」
「お前が決めるんだよ! お前が決めないで誰が決めるんだよ!? 別に責任は取らなくて良いけど言い出したからには指針は示せ!」
GM姫と桃花の会話は続く。
「まあ目的が〈選択肢の拡張〉には制限・課金制にした方が良い。だからまず読者の閲覧数に制限をかけるって問題だろうけど、ちょっと閲覧履歴の数は毎日チェックしてた訳じゃ無いから専門外だな……。私が言えるのは投稿者の方。あ、でも月額制の課金制にした方が良いと思う。レンタル部屋というか不動産の考え方に近いかもしれない」
「なるほど、ボックスという空間のサブスク化な」
簡単に言うと、家賃という考え方だ。空間の中に好きに家具を置いても良いし魔改造もしていいけど、拡張出来る、選択出来る空間に制限をかける。
「まあ私の考え方はあくまで投稿者の考え方だから。ほら、今のライバルってAIも居るじゃん? そいつと文字数の速度で勝つのは無理なんだよ、だから質で勝つしかない……まあそれでも負けそうだけど」
別にAIに負けるヤツは負けるし、勝つヤツは勝つという考え方だが。
「で、値段設定の方だけど。もし月額制のサブスク方式だとしても。最初の10万文字は無料、その次からのボックス拡張、追加10万文字で月100円とかで良いと思う」
「その心は?」
「まずはラノベの単行本基準、本当は月50円の方が良いけど、安すぎて皆が不幸になったという苦い経験があるから」
それで言うと、天上院咲の162万文字で完結だったので、合計約月々1600円の家賃収入みたいな話になる。書けば書くほど家賃が増える。
「まあ私だってそれは嫌だけど、それが抑止力になる」
「ん~これは咲と話した方が良いな」
ということで咲も呼ぶ。
「ええ!? 課金制!? 家賃!? 今まで無料だったのに!? 嫌に決まってるじゃんそんなの!? 月々1600円も払うの!?」
当然の反応。
「いや、でもお前。体の不調が出るまで止まらなかったじゃん。薬飲んでやっと止まったんだぞ? 50年間の特撮のシリーズを1つ止める仁義レベルじゃないと止まらなかったし、やっぱいるってそこの規制は。代償がデカすぎんだよ……」
好きな憧れのヒーローシリーズを止めるレベルじゃ無いと小説執筆が止まらなかったのを考えても、無限文字数&無限投稿はデメリットが大きい。本人は寝て起きれば自然回復するにしてもちょっとそれは無視出来ない。
「イヤイヤ! 憧れの2097万文字作家さんとかどうすんのさ!? 家賃月々2万900円とかになってない!?」
「いや……それがやり過ぎなんだって……。身体も人生も犠牲にするレベルで、嫌ならそのサイトから撤退して、もっと書きたいならネット公開しないで細々と書き続ければ良い」
「イヤッ! イヤッ!」
咲がちいかわになった。桃花が姫にたいして「ね?」って言う。
「ね? やっぱ中毒症状になってるじゃん。抑止力効くんだよコレ……」
「よくしりょくねぇ……」
そしてこの症状は、基本自分じゃ切れない。断ち切れない、繋がりや絆が強すぎて人と人との関係性を切れない、繋がってからでは遅いのだ。
これは咲の自由な冒険を制限する行為なので、ちょっと良心が痛む。とはいえ、リミッターが無いのも確かなのは感じていた。
普通10万文字ほど書ければ十分冒険した分類に入る、それが長年積み重なったとは言え10倍……。プロは100倍……。
「あとはドアの世界だけど、作品は10個までは無料、それ以上からは10作品ずつ拡張課金でいいんじゃないかな? これも1拡張100円のサブスク制」
量産投稿&量産短編にもテコ入れを始めた。
「……反発デカそうじゃなあ~……」
「抑止力なんだから普通拒否反応は出るって、運営の維持費と読者&作者の健康面を考えても、歯止めが効かない。交通ルールの白線が無いような状態なんだよ。白線超えたら少額の課金、その積み重ね」
咲自身も〈良いものにはお金を払った方が良い〉という考え方なので、〈10万文字超えたら月々100円貰う〉とかならまだ嬉しいが、払う方だと話が変わる。その好循環サイクルが回れば良いが、世界が広すぎるのも確かだ。
そして値段設定が安すぎれば皆が不幸になる、という結果論も理解出来る。
で、咲個人としては月々1600円の支払いは今の財力なら了承できるとしても、タダで1600円払うのには納得できない。
「……わかった、そのリスクは飲めるけど。……ただ払うからにはその財源をどこに利用するのか教えて」
元々作家を守るための規制なのでその財源の使い道は考えていなかった。
咲の1600円を使って何をするのか? それを説明できなければ納得してお金は払えない。
「まあ普通に考えて、運営の維持費とか作画カロリーに消費した方がいいが。作家への還元じゃよな。今のリワード数は広告課金によって成立しているから、そこの数式変更。咲の財布が傷まないようにするのが運営陣の仕事じゃから。今はリワード数が増える、としか解答は出来ないな。まあ、〈正しい作品に還元させる〉というのは努力しよう」
GM姫はそのように言って桃花と咲の指針と助言を受け入れた。




